ストロンチウム902011/04/16 20:38

ストロンチウムの炎色反応
 ストロンチウム90と89が検出された、というニュースが流れたのは数日前のことです。福島第1原発から30キロ以上離れた福島県飯館村、浪江町の土壌と、本宮市、小野町、大玉村、西郷村の4か所の野菜からです。このうち、土壌のサンプルからはストロンチウム90が最大で1キログラム当たり32ベクレルが検出されています。 文科省データ
 この事実、大きな問題が二つあります。一つは、サンプルが採取されたのが、3月16日から19日ということです。なんで今頃?またしても、情報の後出し、小出し!。もう一つの問題は、ストロンチウム90という物質の特徴です。これについてお話しします。

 ストロンチウム、聞き慣れない物質かもしれません。学校の化学実験では、必ず登場します。炎の色がきれいな炎色反応の実験、これは生徒に人気があります。ストロンチウムはきれいな赤色の炎を作ります。というわけで、花火に使われています。化学的にはカルシウムと良く似た性質があり、体内では骨に含まれています。
 ストロンチウム90は、ストロンチウムの放射性同位体で、ウランの核分裂によって作られます。半減期は29年で、ベータ線という放射線を出します。体内に入ると、骨に取込まれ、長い年月にわたって放射線を出し続けます。ベータ線というのは透過力は弱いのですが、ガンマー線よりずっと大きなエネルギーを持っています。骨の中で近くの細胞をずっと被曝させ続けます。体内被曝が特に問題になる放射性物質なのです。骨の中には血球を作る造血組織もあります。また、成長期の子どもでは特に取込みが盛んですから大きな影響が考えられます。
 降下物として地表に落ちてきたストロンチウム90は、植物の葉に表面に付着したり、土壌に入ってから吸収されたりして植物体に入り、それを人間が直接食べたり、または、汚染された牧草を食べた牛の牛乳に多く含まれて、それを人間が飲んだり、など食物連鎖を通じて人間の体内に入ってきます。カルシウムに似ているというところがくせ者なのです。
 過去では、大気圏内核実験で放出されています。原発事故では炉心損傷事故のとき出てきます。チェルノブイリ事故の際も放出されました。100万キロワット級の原発が1年運転すると10万テラ・ベクレルのストロンチウム90が作られるといいます。今回の事故でも、すでにかなりの量が放出されている可能性があります。今後、注意が必要です。