故郷の山、赤城山も汚染されていた!2011/08/30 20:15

赤城山
 足利から赤城山(あかぎやま)がよく見えます。渡良瀬川の土手に上がると、上流の方向には赤城山がそびえて、広々とした裾野を引いた姿は、子どもの頃から親しんできた景色です。冬場にこの辺を吹く風は赤城おろしと言われています。まさに赤城山は故郷の山です。
 赤城山の山頂直下に大沼という小さな湖があります。秋から冬にかけてワカサギ釣りの人気スポットです。例年9月1日が解禁日となっていました。
 ところが、ここのワカサギから基準値を超える放射性セシウムが検出されたのです。 (群馬県発表)体重1kg当たり640ベクレルでした。9月1日の解禁は延期となり、あわせてウグイやコイ、ヘラブナなども採捕自粛、群馬県では他のワカサギスポットも検査が済むまで解禁延期となりました。福島県以外で淡水魚の放射能汚染による採取制限が行われるのは、ここが最初です。
 大沼は赤城火山のカルデラ湖で、湖面標高1345m、広さ0.88平方キロメートル、水深最大16.5mの小さな湖。外輪山に囲まれていて、流出する河川は沼尾川のみです。大きな自然から見れば、小さな水たまりのようなものです。周囲の山から流れ込んだ水が水たまりを作って、その上、水の入れ替わりがゆっくりなのでどうしても汚染物質が集積してたまりやすいのではないかと思われます。
 ワカサギはミジンコやエビなどの小動物や動物プランクトンを餌にしています。肉食性なので食物連鎖を通じてセシウムの濃縮が起こりやすい生物です。淡水魚におけるセシウムの濃縮係数は400倍から2000倍というデータがあり、海水魚(約100倍)に比べ格段に濃縮しやすい特徴があります。
 大沼のワカサギは、毎年4〜5月に北海道などから取り寄せた受精卵を放流しています。春から夏に成長して、解禁日頃には10cm以上になっています。寿命は1年くらいです。ですから今年のワカサギはまさに原発事故の後で成長したものです。
 群馬大学の 早川由起夫教授によると、3/15〜16に福島第一原発から流れ出た放射能雲の末端がこの付近まで到達していました。その日は分厚い雲に覆われた空でしたから、山の上では霧の中だったと考えられます。このように悪条件が重なって、福島原発から遥かに離れた群馬県赤城山にホットスポットを作ったのでしょう。ただ、空間や土壌の放射線量を調査して、汚染の実態を明らかにする必要があります。
 自然生態系の放射能汚染に関する調査研究は、まだまったく手つかずの状態です。山や森、湖沼などは人間の手で除染することなどまったく不可能です。まったく自然にまかせるしかありません。少なくとも私たちが生きている間にきれいになることはないでしょう。赤城山を見上げて暗い気持ちになります。それにしても、福島の故郷を追われた人たちの気持ちは私の想像を絶します。