東電の黒塗り資料と国の影2011/09/14 07:42

黒塗り提出された東電「事故時運操作手順書」
 野田首相は昨日(9/13)の所信表明演説の中で福島原発事故に関して「国際的な視点に立って事故原因を究明し、情報公開と予防策を徹底します」と述べています。すでに半年も経過して「事故原因の究明」の方はどうなっているのでしょう。
 国会の委員会から東電に対して資料の提出を求めたところ、東電が出してきたのがこれです (詳細はこちら)。こんな真っ黒に塗りつぶされた資料をみてどう思いますか。国民をバカにしているという怒り、と同時に何かゾッとするものを感じます。戦前戦中の暗黒時代のような不気味な黒塗り。
 この資料、衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員会(川内博史委員長)が事故原因究明に必要として、政府を通して東電に提出を求めた資料です。一度目は9/2に提出された「事故時運転操作手順書」、これがほぼ真っ黒。二度目は9/12の「シビアアクシデント(過酷事故)発生時の手順書」、これもほとんど真っ黒に塗りつぶされ何が書いてあるかまったくわからない文書でした。
 「事故時運転操作手順書」は、特に1号機で事故時に使われる非常用復水器の操作が適切だったかどうかを検証するために必要です。「シビアアクシデント(過酷事故)発生時の手順書」の方は、そもそもシビアアクシデントに対するマニュアルがきちんと整備されていたかどうか、事故後の対応は適切だったかどうかという検証に関して必要です。どちらも、極めて基本的かつ重要な資料であることがお分かりだと思います。
 これを隠すということは、初めから原因究明には協力しない、都合の悪いデータは出さないということの意思表示だと受け取らざるを得ません。東電は一貫してそういう姿勢ですから、いまさら驚きませんが、悪質なのは国(政府)側だと私は思います。
 今回の資料提出は国会の要請に基づき、経産省が東電に文書で要請したものです。その文書は、単に国会から○○の提出要請があったので提出を要請する」という、伝言に過ぎません。ただの伝言ならまだ良いのですが、文書末尾に一言付け加えられています。それはこんな一文でした。「なお、当該資料の提出に当たっては、核物質防護上の観点について十分に考慮されたい。」なるほど、都合の悪いことは言わなくても良いと示唆するメッセージ。これがあうんの呼吸。おそらく経産官僚と事前打ち合わせ済みのことでしょう。
 そもそも、原発の運転マニュアルを監督官庁の経産省がもっていないのだろうか。安全委員会と保安院にもないのか。これも大きな疑問です。それでどうやって安全審査をするのか不思議です。はっきりいって一緒になって隠しているのに違いありません。そして、お互い微妙に責任をなすり合い、最後は結局責任の所在が分からなくするように動いているように見えます。
 今回の黒塗り資料では、さすがに国会側も憤慨し、今度は、経産相あてに、原子炉等規制法と電気事業法に基づく書類提出を求めることを決定しました。はたして、三度目の正直で塗りつぶしのない資料が出てくるかどうか?これが枝野経産相の初仕事となるでしょうか。見物です。
 政府の事故原因究明の取り組みはほとんどポーズだけのように見えます。 「原発事故調査検証委員会」を立ち上げたものの、責任追及はしないと早々宣言している始末。まだ二回しか開かれていません。調査は主にヒアリング方式で、前回は東電から40分間一方的に説明を聞いただけという何とも頼りない委員会です。第三者委員会といっても政府任命委員ですから、あまり期待できません。実質的には事務局である官僚が仕切る委員会になりそうです。
 本来、行政府だけの調査ではなく、国会は国政調査権を駆使して原因究明にあたり、司法も法的に責任追求をきっちり行うべきです。このまま政府任せではおざなりな原因究明になってしまいます。適当に誤摩化されて終わりとなってしまう可能性があります。

東電黒塗り資料や経産省の文書はこちらから閲覧ダウンロードできます。
東京電力が衆院特別委員会に提出した「切り貼り」と「黒塗り」の「事故時運転操作手順書」等について(原子力資料情報室)
http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=1192

<追記>原因究明の前に原発事故の収束が先!という議論があります。その通りかもしれません。ただし、その正論を言うなら、当然、「原発事故の収束→事故原因の解明→すべての原発の安全審査のやり直し→運転の可否→」という順序になります。このまま再稼働などまったく「あり得ない」ことです。福島事故を反映しないストレステストなど何の足しにもなりません。
 もうひとつ、言いたいこと。いまだに現場を管理しているのが東電でいいのですか。事故を起こした張本人が、事故現場を支配し、データも情報も何から何まで握っている状況では、データ隠しや改ざん、証拠隠滅などなんでもありではないですか。実際、東電には前科もあります。国のプロ組織である安全委員会や保安院が乗り込んで管理下に置くのが当然のことです。国の責任逃れなのか、実はその能力がないのか。いずれにしろ、原因究明や責任追及をやる気はまったく見えてきません。(9/14)