玄海原発4号機再稼働!〜これを全国原発再稼働の突破口にするな2011/11/01 20:32

 何かと問題になっている玄海原発、その4号機が再稼働するというニュースが飛び込んできました。今日発表してすぐ再開作業開始、あすは運転再開という、まさに抜き打ちの再稼働!3.11以後、停止原発が動くのは初めてのことです。
(注:玄海1号は現在運転中12月〜定期点検、2号3号は定期点検停止中、4号機トラブル停止中12月〜定期点検)
 実はこの4号機、先月10/4にトラブルで自動停止していましたが、12月には定期点検の予定でしたので、当然このまま点検に入るものと思われていました。それをなぜ無理矢理動かして、たった一月足らずでまた停止するのか理解に苦しみます。これも、他の原発再稼働に向けた地ならしとしか思えません。なし崩しに既成事実を重ねていく、そんな下心が見え見えです。
 そもそも、4号機のトラブルとは何だったのでしょう。9/14に復水器の真空度保持系統の弁異常アラームが出ました。九電は点検が必要と判断し、10/4に通常運転のまま補修作業を開始しました。復水器はタービンを回した蒸気が冷やされて水に戻る所です。この中の真空度が高ければ高いほど発電効率が上がります。今回「タービングランド蒸気元弁」というタービン軸受け部に蒸気を送って真空度を保持する系統の弁を点検補修していました。作業員は作業手順書通りに弁の制御ケーブルを引き抜きました。すると、弁は閉じて蒸気が止まり、そのため復水器の真空度が低下し異常信号が出て原子炉が自動停止したのです。手順書は定期点検等で停止中の原子炉における作業手順を示したもので、運転中の作業を想定したものではなかったのです。なんというお粗末!
 九電は10/21には早々報告書を出しました。しかし、そもそもの9月に出た異常信号の原因に付いてはどこにも触れられていません。手順書の不備や、なぜ運転中に補修作業を強行したのかなど、数々の疑問が残ります。とても安全に運転されているとは思えません。住民や県民の理解は到底得られないのではないでしょうか。しかし、国は10/31に概ね妥当とする評価結果を出してお墨付きを与え、玄海町長はすぐに受け入れ、古川知事も受け入れ表明、間髪を入れず運転再開という急展開となっています。
 佐賀県民、九州、そして日本国民を完全にナメています。泥まみれの九州電力が開き直っているとしか思えません。玄海原発の2号機と3号機の再稼働問題で大荒れ、県民説明会でのやらせメール事件が発覚、さらに遡って2005年の3号機プルサーマル導入公開討論会でのヤラセ&サクラも暴露され、知事への献金疑惑、これでもかこれでもかと九電の悪業が露になり、当分謹慎かと思いきや、第三者委員会無視、社長辞任拒否、枝野経産相無視と開き直っています。あげくに果てに、ごり押し再稼働第1号に突っ走るのは一体どうして?!今回の再稼働を突破口にしてはなりません!
 同じ日に、国から冬の節電要請が出されました。これも玄海再開と合わせた動きです。国と電力の反転攻勢開始・・・とは考え過ぎでしょうか。

【緊急署名】玄海原発4号の運転再開停止を!

玄海原発:4号機の再稼働を発表 福島事故後では全国初(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111102k0000m040099000c.html

今冬の節電要請を決定 九州5%、近畿圏10%以上(テレビ朝日)
http://news.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/211101024.html

玄海原子力発電所4号機 原子炉自動停止の原因と対策について(九州電力)
http://www.kyuden.co.jp/press_111021b-1.html

この冬の電力需給見通し〜節電の必要なし!2011/11/06 16:29

冬の電力需給見通し
 11/1、国は今後の電力需給の見通しを発表しました。マスコミは、関西電力や九州電力で電力不足などと報道していますが、政府発表をよく見ると、全国では電力は十分足りていることが分かります。足りない部分ばかりを大きく報道して危機感を煽っています。同じ日に、玄海原発4号機の再稼働が強行されています。これは偶然ではないでしょう。電力不足が原発再稼働の口実ですから。
 さて、この冬の電力需給見通しですが上の表を拡大してご覧ください。これは、国が発表した資料です。もちろん停止中の原発は再稼働しないことを前提としています。一番右の9電力合計を見ると、1月の最大需要予測1億5781万kWに対して、供給力1億6163万kWで、その差は383万kWプラスとなっています。つまり、日本全体で見れば電力は足りているわけです。そこのところは国も認めています。
 それなのに、国は節電要請を出しました。関西電力管内で10%以上、九州電力管内で5%以上の節電目標を設定しました。強制力のある電力制限令とは違いますが、国が節電目標を設定したからには、いたるところで節電が実施されるでしょう。これまで何度も言いましたが、節電自体は良いことです、しかし電力が足りるのに節電を強いるのは、電力危機世論作りのための脅しです。
 実際は、電力の余っている中国電力や中部電力、そして一番余裕のある東京電力などが、足りない関西や九州に融通すれば済むことです。国の資料には電力会社間の融通をすると明記されていますが、その内訳については書かれていません。そういう大事な所をわざと曖昧にしています。
 1月末には全国で稼働中の原発は4基だけ、2月末には3基だけになります。原発の発電量は1月末で427万kW、2月末で340万kWだけです。数字の上でも原発は必要ありません。
 来夏の電力需給に関しては、また改めて書きたいと思いますが、とりあえず、今夏(節電)同様なら余裕、前年夏(猛暑)同様なら不足、というデータが示されています。もちろん原発なしで。・・・どうやら、原発がないと電力危機に陥るというのは錯覚のようです。ただ、電気をこれまでのように野放図に使うことはできないというだけです。
 国やマスコミにだまされてはいけないと思います。

今後の電力需給対策について(エネルギー・環境会議)
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20111101/siryo2.pdf

夏より厳しい冬の節電…綱渡りの電力需給(読売新聞)煽っているマスコミの代表
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20111102-OYT1T00006.htm

30年で廃炉できる?・・・原子力委員会の甘い見通し2011/11/10 06:13

 国の原子力委員会が福島原発1〜4号機の廃炉に向けた工程案をまとめました。それによると、3年以内に使用済み核燃料の回収開始、10年以内に核燃料の取り出し開始、最終的な廃炉は30年以上かかるとしています。「30年」という具体的な数字を示していますが、いったい何の根拠があるのでしょう。
 今から30年前、「夢の高速増殖炉で核燃料リサイクル」と言われていたことを思い出します。はっきり言って、日本の原発政策は核燃料サイクル実現を前提に進められていたはずです。それが、今だに実現の目処も立たずに金だけを浪費し続けています。「30年」と言われて、こんなことを思い出してしまいました。
 チェルノブイリ原発は、事故から25年たった今でも手つかずの状態であることをどう考えているのでしょう。全体を巨大な「石棺」で覆い、周辺を無人地帯にしています。コンクリートの劣化のため、第2石棺を建設する計画と聞きます。国はスリーマイル原発事故を参考にしていますが、事故の規模から言ってまったく比較になりません。福島原発で処理すると言っている核燃料はチェルノブイリよりはるかに多いのです。
 細かく批判すればキリが無いのですが、一番の問題は中の様子が今どうなっているのかすら分からないで、何を夢のようなことを言っているのか!ということです。世界が初めて経験する出来事ですから、ある意味どうとでも言えます。ただ、どうなっても原子力委員会も東電も政治家も、言った人たちはだれも責任取らないだろうということはハッキリしています。これは、悲しいかな経験則です。30年以上先にはみんな引退しています。
 ですから、どうも素直に聞けません。先の無い原子力産業が廃炉ビジネスで生き残り、莫大な金を遠い先まで約束されるようなやり方にも見えてきます。
 おそらく、福島原発は通常の廃炉には持っていけないでしょう。チェルノブイリのような現場封じ込め管理を続けるしかないと思います。そのような選択肢がまったく検討されずに、ただただ廃炉廃炉と言い続けるのは、またぞろ夢をふりまいて人々に幻想をいだかせることでしかありません。

再び出前講座(日記)2011/11/13 08:25

 「原発をなくす決め手は何ですか?」と質問されて、思わず「うーん!」と言葉に詰まってしまいました。
 昨日(11/12)、越谷の生活クラブ生協で原発問題の講座があり、出前講師をやらせていただきました。今回は2回連続講座の後半で、放射能汚染と電力問題に関する内容でした。私は最後にドイツの脱原発を紹介して話を締めくくりました。「原発なしの暮らしには『夢の新技術』も『ストイックな耐乏生活』も必要ありません。ただ『仕組み』を変えるだけ!脱原発に悲壮感は必要ありません。」と訴えたのです。
 ところが、文頭の参加者の質問に思わず絶句してしまい、それまで調子良く話していたのが、一気に落ち込んでしまいました。「原発止めの決め手」!私も分かりません。私は、正直この福島原発事故が決め手になって、これで日本の原発は止まるなと思いました。ところが、これだけの事故が起きていても、それだけで止まる気配がありません。こうして再び、反原発、脱原発の運動をやっていかなければならない。そんな状況になっています。質問された方の気持ちはよく分かります。私も同じことが聞きたい。いったいこの日本はどうなっているのか!と・・・
 もう心に一つ引っかかっていることがあります。生活クラブの学習会ですから、消費者の立場の方が中心と思って話をしておりました。早川由紀夫先生のお出かけマップなども紹介して、汚染地帯の食品を避けるしかないなどと。ところが質問された方の中に生産者の方がいらっしゃいました。「果物を作っています。良く洗ったり皮をむくと放射能を減らせると聞きますが、中に入った放射能を減らすにはどうすればいいのですか?」という質問でした。「果物の中に入ってしまった放射能を取り除くことはできません。入らないようにするしかありません。」と答えたのですが、何とも後味の悪い思いです。こんな答えしかできない自分が情けないです。
 さて、今回の出前、特に三つのことを話しました。一つは放射能汚染との闘いは時間がかかること、子どもが育つ速度を考えれば闘うより逃げるが勝ちということです。二つ目は電気のこと。国が原発なしの供給能力を初めて明らかにした数字、1億6297万kwをもとに電気がいかに足りているかをお話しました。そして三つ目は、脱原発は考え方と仕組みさえ変えれば直ぐに実現できるということです。
 それらの内容は、ぜひ回を改めて詳しくご紹介していきたいと思います。このところ忙しくて、ブログがなかなか書けません。書きたいことは毎日のようにたくさんあるのですが・・・

放射能と闘うより逃げるが勝ち!2011/11/14 06:09

セシウムの減衰曲線
 細野原発相が福島で民家の除染ボランティアに参加、土壌剥ぎ取りを手伝った細野氏は贖罪のつもりと神妙な態度です。原発公開に引き連れた取材陣を前に精一杯のパフォーマンスです。世の中は、いつのまにか「除染、除染!」の大合唱。でも、ちょっと待って下さい。汚染地帯からの避難という選択肢はどこにいってしまったのでしょう。それどころか除染して早く避難民を戻そうということまで言われています。国は年間1ミリシーベルト(空間線量率0.23μシーベルト/時)まで除染を目指すという方針を発表しています。まずは2013年8月をメドにとのことです。
 上のグラフは放射性セシウムの地表汚染濃度の変化を表しています。今後、地表面からの移動がないと仮定しています。つまり物理的半減期に従った減衰曲線ということになります。セシウム134の半減期は2年なのでセシウム合計の放射能量は最初の数年で急激に減ります。10年も経つと後は半減期30年のセシウム137の減り方に支配されます。ちょっと見るとどんどん減っていくように見えます。しかし、グラフの減りかたに安心してはいけません、現在の汚染がとてつもなく高いのですから。福島市の汚染が半分に減るのが6年後、それでも1平方メートル当たり10万ベクレルもあります。福島市のレベルが東京と同じくらいになるまでには100年以上かかります。右上の線は飯舘村のものです。このグラフをエクセルで作った時、間違っているのでは思い何度も計算し直したほどです。あまりにもひどい汚染です。現状で200万ベクレル/平方メートルという数値は100年やそこいらでは到底元通りになりません。
 このような汚染が大地全体を覆っているわけですから、生活空間全体の除染には相当な時間と労力とコストがかかります。先日のNHKテレビで児玉教授が標準的な家一軒の除染コストを試算して500万円以上と言っています。今そこに暮らす人々にとって速やかな除染は必要だと思います。しかし、放射能は今が一番強いのです。今すぐにできるならまだしも、国の言うように2年をメドになどと言っていたら、一番放射能の強い時にみすみす被曝を受けることになります。現状ではまず避難というのが基本ではないでしょうか。ぐずぐず検討などしているうちに被曝量はどんどん増えていきます。
 1ミリシーベルトを目指すというなら、現状で超えている汚染地帯については避難という選択肢をはっきり示すべきです。特に妊婦や子どものいる世帯では本当にまったなしです。なぜなら、子どもの育つ速度の方が放射能対策より早いからです。対策なんてぐずぐず言っているうちに子どもはぐんぐん育っていきます。その時が一番被曝感受性が高く危険な時なのですから。
 除染ばかりが優先されて避難選択が無視されているような現状は間違っています。国は一刻も早い事故収束を印象づけたいがために無理矢理、除染、帰還を急いでいるふうにも見えます。また、1兆円以上の除染費用が利権絡みの公共事業になりかねません。もしそうならとんでもないことです。さらに、最近はボランティアという声も良く聞きます。放射能との闘いを前面に出し、心情に訴えることで、ボランティア戦士を募ろうとしています。福祉分野でもそうですが、裏にコスト削減という下心もあるでしょう。大学生などの若い人たちが参加することは、被曝の危険性から絶対に薦められないことです。
 放射能レベルの高い今こそ避難を優先すべき時です。特に子どもたちは放射能レベルがある程度下がるまで故郷を離れることもやむを得ないと思います。それまでに除染をやって下さい。順序が違います。放射能と闘うより逃げるが勝ち!

「まず除染」大合唱の陰でホンネを言えなくなった飯舘村の“移住希望”村民(週プレニュース)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20111111-00000301-playboyz-soci

細野環境相が除染作業…「しょく罪の意識込め」(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111113-OYT1T00448.htm