「地球温暖化」と「低線量被ばく」〜「科学的に証明」とは何か2012/01/09 08:21

 最近は理科の授業の中で「地球温暖化」についてかなり詳しく教えています。今では、小学校から高校まで「地球温暖化問題」が出てきます。日本での教育は諸外国に比べ徹底しています。そして、温暖化の原因は二酸化炭素であると教えられています。学校だけでなくマスコミも総動員であまりにも教育が徹底しているため、「二酸化炭素が増えて地球は温暖化している」ということは、もはや「科学的事実」となっています。
 しかし、「二酸化炭素が地球温暖化の原因である」ことは、科学的には「証明」されてはいません。それどころか「地球が温暖化している」ことさえも、科学的には「証明」されていません。気候変動のような地球史的変化をたかだか数十年のデータで証明することなど不可能だからです。しかし、証明不能だからと言って「起こらないこと」「存在しないこと」として無視することはできません。なぜなら、将来、やはりそうだったと分かった時には遅いからです。そういう場合、科学では「予測」を行います。現在までに得られたデータと自然界の法則をもとにした将来予測を行います。今ではコンピュータを使ったシミュレーションによって示された二酸化炭素濃度上昇による地球温暖化仮説を多くの人々が受け入れているということに過ぎません。
 このような「仮説」と「予測」にもとづいて、二酸化炭素削減を高々と宣言している我が日本政府ですが、「被ばく問題」に関してはまったく正反対の態度を取っています。「低レベルの放射線は人体に影響がある」ことは「科学的に証明されていない」・・・低線量被ばくの影響について政府機関がコメントする時には必ずこう前置きされています。不当な前置きをつけられて、事実とか真理から一段も二段も下げた扱いになっています。実は、日本政府は、いまだに低線量の被ばくにリスクがあるとはハッキリ認めてません。
 低線量の放射線被ばくの影響を「科学的に証明」するにはまだデータが足りません。一般的に「統計的に有為」であると言うためには0.05の有為水準が必要と言われています。つまり十中八九ではダメで十中9.5以上で同じ結果が出ることが求められます。このような実証的エビデンスを求めることは、人類が新たに遭遇している出来事や将来の影響を考えるときには適さないことは明らかです。
 では、証明不能だからと言って「起こらないこと」「存在しないこと」として無視することができるでしょうか。将来、その影響が証明されてからでは遅いのです。そこで、まともに考えれば「地球温暖化問題」と同様、「被ばく問題」においても「予測」を行わなければなりません。これまで得られたデータと自然法則にもとづいた影響予測を行う必要があります。現在、日本政府も一応受け入れている「直線しきい値なし(LNT)モデル」もこの考え方によって作られています。
 「放射線はその高いエネルギーによってDNA分子を破壊する」「DNAの破壊によってガンが発生する」「被ばく量とリスク上昇率が比例関係にある」というのはもはや自然界の法則です。ただそれが100ミリシーベルト以上でしか「科学的に証明されていない」だけなのです。まずやるべきことは、現在得られているあらゆるデータを総動員して、できる限り正しい比例定数つまりリスク定数を求め、物理学や生物学の自然法則に従って、低レベル被ばくの将来の影響予測を行うことです。
 「科学的に・・・」という言葉が使われる時ほど科学的でない時です。それは人を黙らせるための脅し文句になっています。本当の科学はそうではないはずです。科学は真理のためにあるのであって人の都合のためにあるのではない・・・はずです。「地球温暖化問題」と「放射線被ばく問題」どちらも、あまりにも政治的に科学が歪められています。
 今政府が打ち出している対策は、リスクがあるからやるのではなく、不安があるからやってあげるというスタンスになっています。補償問題でも被ばくに関してはひとことも言っていません。まずは、日本政府は低レベル放射線被ばくのリスクをきちんと認め、放射線が人を傷つけていることを認めることです。そこから、すべてが始まります。日本は不思議な国です。広島・長崎に原子爆弾を落とされ何十万人も犠牲になっているにもかかわらず、放射線被ばくをあまりにも軽く見ています。かつての原発安全神話が今「放射能安全神話」に姿を変えて私たちを騙そうとしています。

(参考)12/7のブログ:新たな神話づくり「放射能安全神話」〜読売社説批判
http://tomtittot.asablo.jp/blog/2011/12/07/6236556