目先の再稼動云々の前に政府がやるべきこと〜「脱原発」のロードマップを示せ2012/04/11 22:06

 この1年、政府はいったい何をやっていたのでしょう。昨年7月に菅首相が「脱原発」を表明、9月に政権を引継いだ野田首相も「脱原発依存」を施政方針としています。半年前は「脱原発」が紛れもなく最大の政治課題でした。ところが野田首相は突如「消費税」を言い出し、いつの間にか「消費税」を最大の政治課題にしてしまいました。どうも、話を逸らされた感があります。
 今、大飯原発の再稼働問題が正念場を迎えています。政治判断とか政治が決断するとか言っていますが、本来政治が決断すべきは将来への道筋を示すことです。結局、今だに「脱原発」への道筋をなんら示すことなく、すべてが目先の問題だけで議論されています。堤防をかさ上げしたとか非常用バッテリーを増やしたとか、そんなレベルの話は今後の原発政策をどうするのかはっきりさせた上での話です。相変わらず話の順序が逆です。
 原発事故の収束も検証もできていない、新たな原子力の規制組織もできていない、保安院も原子力安全委員会も電力会社もすべてそのままで、将来にわたる原発の安全を判断できるということ自体がまったく理解できません。結局は電力会社の作ったストレステスト報告書や安全対策工程表を追認するだけの安全評価になっています。これでは、まさに、初めから再稼動ありきの出来レースと言わざるを得ません。
 原発というものは夏の一時期にスイッチを入れるというわけには行きません。動かし始めればずーっと動かしっぱなしの発電です。現在、原発なしで電力はまったく足りていますが、これで原発を動かせば、また火力を止めて余剰電力を生み出す発電スタイルに戻ります。電力需要論議が夏場の最大需要のみ問題にしているところが、そもそも目先の問題へのすり替えです。
 もし、このまま再稼働されれば、なし崩し的に既成事実だけが残ります。大飯原発に関しては「将来的にも」稼働を認めたという事実です。ひとたび前例というレールが敷かれれば、続いて、伊方は、玄海は・・・という流れは必然です。そういう意味では、今回の政治判断は、今後「政治は判断しない」ということを判断しているようなものです。
 原発事故は起こるということ、そして事故の影響はあまりにも大きいということ、不幸にもこれが証明されたのが今回の福島原発事故です。この厳然たる事実を受け止めて「脱原発」という方向性を政府自らが打ち出さざるを得なかったのです。野田首相は施政方針演説で「原子力への依存度を最大限下げる」と言いました。ならば、その目指す到達点とそこに至る道筋を具体的に国民に示さなくてはなりません。

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