原発都民投票は実現するか〜東京都議会開会 ― 2012/06/05 21:31

今日(6/5)東京都議会が開会しました。注目の「原発都民投票条例」案が付議されています。32万人以上の署名を集めて実現した画期的な直接請求です。言うまでもなく条例制定を求める直接請求は住民の基本的権利です。地方自治法で有権者総数の50分の1以上の署名をもって請求できると定められています。東京都のような一国に匹敵するような巨大な自治体で草の根の直接請求が実現することは並大抵のことではありません。それだけ、都民の関心が高いことを物語っています。はたして、都民を代表する都議会はこれにどう答えるのでしょうか?
今日は石原慎太郎都知事の所信表明演説がありました。いきなり尖閣諸島買い上げ問題で国家防衛論を展開したのには、正直驚きました。しかもその中で中国のことをシナと呼ぶことにもビックリです。このような話が長々続いた後、次は東電改革。電力自由化に向けて株主総会で頑張るぞと威勢のいいことを言うのですが、原発のゲの字も出てきません。やっと「原発」問題が出たと思ったら、それが都民投票の話でした。
石原都知事はすでに表明していた通り条例案に反対する意見を展開しました。都知事は「原発問題は国家の安危を左右する重大問題だから国が責任を持って冷静に判断すべき」「センチメントではなく」と反対理由を述べています。それでは、尖閣諸島問題はどうなんだと言いたくなります。国家に代わって東京都が動くんだという態度と大きな矛盾!さらに、市民の運動を「センチメント(情緒的)」と決めつけて批判しているのは大きな問題です。自民党の石原伸晃幹事長が脱原発運動を「集団ヒステリー」と言ったのと共通する感覚です。
最終的に条例を決めるのは、都議会です。127名の議員がどんな態度を取るのか注目されます。今のところ、知事与党の自民(37)公明(23)は態度未定、最大会派の民主党(50)は修正案でまとまりそう、共産(8)生活者ネット(3)が賛成という状況です。民主党の修正案は投票資格を20才以上(原案16才)とするものです。大阪市では否決されてしまいましたが、自民と民主系は今回同様の修正案に同調した経緯があります。お互い小異を捨てられれば、賛成可決は十分あり得ます。
今、市民にできることは、近くの都議に働きかけたり、都議会を傍聴したり、そして何よりみんなで注目することだと思います。大阪市の場合、全市議の賛否・態度・対応状況をまとめた評価シートが市民によって作られています。市民が議員活動を注視し、選挙投票の判断材料にするためです。それにしても、現在、マスコミの関心は完全に他に行っていますから、報道が少ないことが心配です。
審議日程
6月5日(火) 13:00~本会議(石原都知事が発言します)
6月12日(火) 13:00~本会議(代表質問)
6月13日(水) 13:00~本会議(一般質問)
6月14日(木) 13:00~総務委員会(14日・15日のどちらかで意見陳述)
6月15日(金) 13:00~総務委員会
6月18日(月) 13:00~総務委員会(採決)
6月20日(水) 13:00~本会議(議案議決)
東京都議会6/5本会議中継録画映像
http://203.179.83.179:8081/togikai/c1206050.wmv
石原都知事による意見書
http://kokumintohyo.com/branch/wp-content/uploads/2012/05/tokyoikensho.pdf
東京「原発」都民投票について/みんなで決めよう「原発」国民投票の会
http://kokumintohyo.com/branch/
原発を問う 32万人の請求 都民投票条例案 あすから審議(東京新聞6/4)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012060402000110.html
今日は石原慎太郎都知事の所信表明演説がありました。いきなり尖閣諸島買い上げ問題で国家防衛論を展開したのには、正直驚きました。しかもその中で中国のことをシナと呼ぶことにもビックリです。このような話が長々続いた後、次は東電改革。電力自由化に向けて株主総会で頑張るぞと威勢のいいことを言うのですが、原発のゲの字も出てきません。やっと「原発」問題が出たと思ったら、それが都民投票の話でした。
石原都知事はすでに表明していた通り条例案に反対する意見を展開しました。都知事は「原発問題は国家の安危を左右する重大問題だから国が責任を持って冷静に判断すべき」「センチメントではなく」と反対理由を述べています。それでは、尖閣諸島問題はどうなんだと言いたくなります。国家に代わって東京都が動くんだという態度と大きな矛盾!さらに、市民の運動を「センチメント(情緒的)」と決めつけて批判しているのは大きな問題です。自民党の石原伸晃幹事長が脱原発運動を「集団ヒステリー」と言ったのと共通する感覚です。
最終的に条例を決めるのは、都議会です。127名の議員がどんな態度を取るのか注目されます。今のところ、知事与党の自民(37)公明(23)は態度未定、最大会派の民主党(50)は修正案でまとまりそう、共産(8)生活者ネット(3)が賛成という状況です。民主党の修正案は投票資格を20才以上(原案16才)とするものです。大阪市では否決されてしまいましたが、自民と民主系は今回同様の修正案に同調した経緯があります。お互い小異を捨てられれば、賛成可決は十分あり得ます。
今、市民にできることは、近くの都議に働きかけたり、都議会を傍聴したり、そして何よりみんなで注目することだと思います。大阪市の場合、全市議の賛否・態度・対応状況をまとめた評価シートが市民によって作られています。市民が議員活動を注視し、選挙投票の判断材料にするためです。それにしても、現在、マスコミの関心は完全に他に行っていますから、報道が少ないことが心配です。
審議日程
6月5日(火) 13:00~本会議(石原都知事が発言します)
6月12日(火) 13:00~本会議(代表質問)
6月13日(水) 13:00~本会議(一般質問)
6月14日(木) 13:00~総務委員会(14日・15日のどちらかで意見陳述)
6月15日(金) 13:00~総務委員会
6月18日(月) 13:00~総務委員会(採決)
6月20日(水) 13:00~本会議(議案議決)
東京都議会6/5本会議中継録画映像
http://203.179.83.179:8081/togikai/c1206050.wmv
石原都知事による意見書
http://kokumintohyo.com/branch/wp-content/uploads/2012/05/tokyoikensho.pdf
東京「原発」都民投票について/みんなで決めよう「原発」国民投票の会
http://kokumintohyo.com/branch/
原発を問う 32万人の請求 都民投票条例案 あすから審議(東京新聞6/4)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012060402000110.html
現在722万人が署名!さよなら原発(日記) ― 2012/06/06 23:04
ネオンきらめく夜の銀座の街をデモ行進するのはちょっと不思議な気分です。今夜(6/6)は、さよなら原発1000万人署名の中間集約報告&原発再稼動反対の集会が都内で開かれました。会場の日比谷野外音楽堂は平日の夜にもかかわらずたくさんの人たちが集まっていました。集会の後、デモ行進に繰り出したのは夜の7時半過ぎです。関西電力東京支社前では再稼動するなと訴え、東電本店前では福島返せと叫び、銀座の繁華街では道行く人たちに原発いらない命が大事と呼びかけました。こんな夜のデモは初めての体験です。
それにしても現在までに集まった署名の数に驚きます。ステージ上に積み上げられたダンボール箱の山!全国(世界)から寄せられた署名が現在722万2297人!になっています。ものすごい数です。と言っても目標は1000万人ですから、まだまだです。あと280万人!でも、何かやれそうな気がしてきます。集まった署名は国会と政府野田首相に届けられます。署名活動はこれからも続けられます。
7/16は、いよいよ「さよなら原発10万人」集会。この日はゼッタイ行かなければと思います。首都のど真ん中を10万人が埋め尽くすなんて、この日本ではこれまた前代未聞のことになります。私は10万人の中の1人になりたいと思います。
さよなら原発1000万人アクション
http://sayonara-nukes.org/
脱原発集会:東京で2300人参加 大江さんらもあいさつ(毎日新聞)
http://sp.mainichi.jp/m/news.html?cid=20120607k0000m040041000c
それにしても現在までに集まった署名の数に驚きます。ステージ上に積み上げられたダンボール箱の山!全国(世界)から寄せられた署名が現在722万2297人!になっています。ものすごい数です。と言っても目標は1000万人ですから、まだまだです。あと280万人!でも、何かやれそうな気がしてきます。集まった署名は国会と政府野田首相に届けられます。署名活動はこれからも続けられます。
7/16は、いよいよ「さよなら原発10万人」集会。この日はゼッタイ行かなければと思います。首都のど真ん中を10万人が埋め尽くすなんて、この日本ではこれまた前代未聞のことになります。私は10万人の中の1人になりたいと思います。
さよなら原発1000万人アクション
http://sayonara-nukes.org/
脱原発集会:東京で2300人参加 大江さんらもあいさつ(毎日新聞)
http://sp.mainichi.jp/m/news.html?cid=20120607k0000m040041000c
放射能汚染追求の市議が除名処分!〜群馬県桐生市 ― 2012/06/20 20:40
「放射能汚染地域に住む人の血って、ほしいですか?」とツイッターでつぶやいた議員が懲罰除名処分!という信じられない出来事が起きています。群馬県桐生市議会は、放射能汚染に関して根拠のない暴言をくり返したとして、庭山由紀議員(43)の除名を可決、庭山氏は本日(6/20)をもって議員を失職することになりました。この問題、先月末頃より地元ではだいぶ騒がれていましたが、全国的にはほとんど話題になっていませんでした。私も隣町に住んでいながら詳しいことを知らないでいました。あわてて桐生の友人知人にも話を聞いたりしました。私の疑問は、庭山氏の言動が議員除名にあたるのかということ、それに、そもそも選挙で選ばれた議員を議会の多数決でクビにできるのかということです。しかし、世間の関心は庭山氏の「人格問題」にすり替わっているのが残念です。
群馬県桐生市の庭山由紀市議(無所属)は昨年の選挙で2279票(5位)を獲得して当選、現在2期目の途中です。1期目から、議員たちの既得権にメスを入れ、市議会内部の馴れ合い体質を鋭く追及、歯に衣着せぬ発言と思い切った行動で注目される存在でした。これまでも時には他の議員のスキャンダルを暴くなどで物議をかもしてきました。特定の地区や団体の代表というスタイルではなく、まったくの草の根市民支持で、特に女性層の支持が強いと言われています。ちなみに桐生市議会には女性議員は2人しかいません(定数22)。当然、多くの同僚市議らからは、非常に目障りな存在であったことは事実です。
市議2期目は、くしくも3.11以後の状況下で、必然的に「放射能汚染」問題に取り組むことになりました。議会では毎回この問題を取り上げ、学校給食用の食材の放射能検査、高濃度セシウム汚染汚泥の野積み問題、最近では岩手県宮古市の瓦礫受入れ焼却の中止を訴えていました。桐生市内で行われた脱原発デモでは先頭に立ってほとんど絶叫、瓦礫の試験焼却の時には搬入トラックの前に横たわり、まさに体を張った抗議行動を行っていましました。
はっきり言って、今回の除名騒動は桐生市議会にとっては「厄介払い」の意味合いが強いもので、その口実に今回の「放射能暴言」が利用されたと私は思います。地域限定の問題発言ではクビを取れなかった議会が、全国的に注目される放射能発言を逆手に取って待ってましたとばかりクビに動いたものでしょう。
桐生市は国が定める除染の必要な地域として、放射性物質汚染対処特措法に基づく「汚染状況重点調査地域」の指定を受けています(平均毎時0.23マイクロシーベルト以上の地域を含む)。文科省の地表のセシウム濃度地図や群馬大学の早川由紀夫教授の放射能汚染マップを見てもわかるように、桐生市北部一帯は、関東地方ではもっとも高いレベルの放射能汚染を受けた地域です。例えば、文科省の航空機モニタリング調査では、市北部の黒保根地区、梅田地区などの山間部では、セシウム134と137の合計で1平方メートル当たり10万から30万ベクレル(昨年11月時点)の放射能汚染があります。桐生市が実測したデータでも、最大で1時間当たりの空間線量が0.61マイクロシーベルトありました(庭山氏は測定算出法に疑問を呈している)。
さて、前置きが長くなりましたが、その庭山議員の言動が問題視され、ついに議員をクビにするという大騒動に発展したのです。まず、何が問題とされたのか、確認してみましょう。 除名を求める懲罰動議に書かれている「暴言」とは
1.「献血の車が止まっているけど、放射能汚染地域に住む人の血って、ほしいですか?」(ツイッター5/25)
2.「今、上毛新聞の記者から電話あり。去年500ベクレルを越えたほうれん草とかきなをタダで流通させた新田みどり農協の橋場氏が私の毒物発言に議会に抗議するが、どう思うかと言う取材電話があった。毒物流通させた犯罪者橋場が何を言う?謝罪を求めるだあ?あんたが謝罪しろ!」(ツイッター5/28)
3.「毒物を作る農家の皆さんの苦労なんて理解できません」(ツイッター昨年12/12・この記事は直接確認できませんでした)
懲罰動議では、これらの発言に対して「市民」や「国民」から数多くの抗議が寄せられていることを紹介しながら、庭山議員が「根拠のない暴言を繰り返し何ら反省もせず多くの人を傷つけ議会の品位を汚し公職に相応しくない」と最大級の罪状で除名を求めています。庭山議員が桐生市は放射能汚染地域であると言ったことや、桐生(黒保根)の農産物を毒物呼ばわりしたこと、生産者を犯罪者扱いしたことなどを「根拠のない暴言」と決めつけています。そして、庭山議員が善意の献血協力者や農家の人たち、復興に頑張る人たちなどを「傷つけた」と非難しています。
私から見れば、単に言葉尻を捉えて「ムカついた」というレベルの話に思えます。言葉遣いとか表現法とかの話はさておいて、事実はどうかということを考えれば、庭山議員の言っていることは間違っていません。桐生市は国が指定する「汚染状況重点調査地域」という放射能汚染の高い地域です。残念ながら、環境から取込まれたセシウムによる内部被曝をゼロにすることはできません。血液にも含まれると考えるのが当然です。問題は、きちんとした検査が行われていないことです。安全確認もなしに庭山議員の発言をデマと言う方が根拠がありません。さらに、もともと輸血用血液にはガンマ線を照射して使われるのだから、庭山議員の言うことはおかしい情報も流されましたが、これも放射線が外から当たる外部被曝と、放射性物質が体内に入る内部被曝の違いを無視した話です。
汚染地域で作られた作物は、多かれ少なかれ放射性物質を取込みます。原発事故で放出されたセシウムなどの放射性物質をまったく含まない農産物はありません。国の規制値以下なら安全というわけではありません。仕方がないとか我慢して食べるとか、そういうレベルのものです。特に学校給食など子どもたちに食べさせるものを限りなく放射能ゼロにすることは大人の努力義務です。残念ながら、3.11以前の目で見れば、今そこで採れる農産物は「毒物」です。それをまったく「安全」と言って無条件で流通させることは罪なことです。まして、500ベクレル超えの食品を拡散する行為は「犯罪」と言われても仕方ありません。
いずれにしても、放射能汚染の危険性を訴える庭山議員の言動を虚偽や人権侵害と決めつけて、あろうことか懲罰除名にまでしてしまうことの方が、よほどの暴挙です。
桐生市議会では、17人が連名で懲罰動議を提出しました。本人と議長を除けば20人ですから、17人というのは圧倒的多数です。18日に特別委員会を通過し、20日の本会議では18人が賛成して可決、庭山議員は失職しました。
国会議員では法的拘束力のない辞職勧告決議しかできないのですが、地方議会の議員は違います。地方自治法135条に懲罰の定めがあり、最高は「除名」と規定されています。3/2以上の出席でそのうち4/3以上の同意で「除名」できると定められています。
全国で最近10年間で5件7人が除名になっていますが、2件2人は知事審決で取消、3件4人は選挙で再選され、ほとんどは議員を続けています。2010年、鹿児島県阿久根市で当時の竹原市長派が議場を封鎖してろう城した件で2人の議員が除名になっています。なお、この2人は補欠選挙に立候補して無投票再選しました。09年、長崎県平戸市で浦議が市議会一般質問で市長選候補者の私生活を取り上げ個人攻撃したとして除名処分。直後の選挙で再選されて現在も市議です。08年、福岡県糸田町で西議長が公務怠慢などを理由に除名処分となりましたが、県知事が取消し審決で復職しています。同年、佐賀県上峰町中山議員が副議長不信任案審議での不適切発言を理由に除名処分、これも県知事が取消し審決で復職しました。02年には横浜市議会で日の丸掲揚に反対して議長席を占拠し立てこもった2市議が除名されました。これは高裁まで争って除名が確定しましたが、うち1人は議員に再選されています。
このように過去の例に照らせば、いずれも議会内の言動が除名理由になっています。今回のようなまったく議会外のツイッターというネット上の発言を理由にするのは初めてのことです。しかも、知事審決の例を見ると単なる発言内容だけで除名にするのは行き過ぎというのが法的判断です。庭山議員の場合も、県知事に取消を申し立てれば認められて当然の事案だと思われます。しかし、そう簡単に行くとは限りません。というのは、瓦礫受け入れ処理問題でも県知事と対立しているからです。また、選挙で再選されるパターンが多いのですが、桐生市の場合、補欠選挙は実施されない公算が強いので、次の選挙まで3年待たなければなりません。
民主主義政治制度の根幹は議会にあります。本来、選挙で選ばれた議員を辞めさせられるのは市民だけではないでしょうか。たった18人の同僚議員が同意すれば辞めさせられるということがどうにも腑に落ちません。これでは「多数の横暴」を食い止めることができません。もしクラスの問題児をみんなの投票で追放できるとしたらおかしくありませんか。たとえ孤立無援の異端児であっても排除は許されないことです。今回のことで地方議会はムラの寄り合いの延長上にあると再確認しました。除名は議会ムラの秩序を乱す異端者を排除する「村八分」制度になっています。「懲罰だっ!」地方議会でよく聞くヤジです。大体は、少数派に対する恫喝です。
ポスト3.11原発危機は、日本社会の根っこに横たわる問題を様々あぶり出しています。民主主義の危機も見えてきました。
<桐生市議>失職 放射能巡り暴言、ツイッターに書き込み(毎日新聞6/20)
由紀日記(庭山氏のブログ)
群馬県桐生市の庭山由紀市議(無所属)は昨年の選挙で2279票(5位)を獲得して当選、現在2期目の途中です。1期目から、議員たちの既得権にメスを入れ、市議会内部の馴れ合い体質を鋭く追及、歯に衣着せぬ発言と思い切った行動で注目される存在でした。これまでも時には他の議員のスキャンダルを暴くなどで物議をかもしてきました。特定の地区や団体の代表というスタイルではなく、まったくの草の根市民支持で、特に女性層の支持が強いと言われています。ちなみに桐生市議会には女性議員は2人しかいません(定数22)。当然、多くの同僚市議らからは、非常に目障りな存在であったことは事実です。
市議2期目は、くしくも3.11以後の状況下で、必然的に「放射能汚染」問題に取り組むことになりました。議会では毎回この問題を取り上げ、学校給食用の食材の放射能検査、高濃度セシウム汚染汚泥の野積み問題、最近では岩手県宮古市の瓦礫受入れ焼却の中止を訴えていました。桐生市内で行われた脱原発デモでは先頭に立ってほとんど絶叫、瓦礫の試験焼却の時には搬入トラックの前に横たわり、まさに体を張った抗議行動を行っていましました。
はっきり言って、今回の除名騒動は桐生市議会にとっては「厄介払い」の意味合いが強いもので、その口実に今回の「放射能暴言」が利用されたと私は思います。地域限定の問題発言ではクビを取れなかった議会が、全国的に注目される放射能発言を逆手に取って待ってましたとばかりクビに動いたものでしょう。
桐生市は国が定める除染の必要な地域として、放射性物質汚染対処特措法に基づく「汚染状況重点調査地域」の指定を受けています(平均毎時0.23マイクロシーベルト以上の地域を含む)。文科省の地表のセシウム濃度地図や群馬大学の早川由紀夫教授の放射能汚染マップを見てもわかるように、桐生市北部一帯は、関東地方ではもっとも高いレベルの放射能汚染を受けた地域です。例えば、文科省の航空機モニタリング調査では、市北部の黒保根地区、梅田地区などの山間部では、セシウム134と137の合計で1平方メートル当たり10万から30万ベクレル(昨年11月時点)の放射能汚染があります。桐生市が実測したデータでも、最大で1時間当たりの空間線量が0.61マイクロシーベルトありました(庭山氏は測定算出法に疑問を呈している)。
さて、前置きが長くなりましたが、その庭山議員の言動が問題視され、ついに議員をクビにするという大騒動に発展したのです。まず、何が問題とされたのか、確認してみましょう。 除名を求める懲罰動議に書かれている「暴言」とは
1.「献血の車が止まっているけど、放射能汚染地域に住む人の血って、ほしいですか?」(ツイッター5/25)
2.「今、上毛新聞の記者から電話あり。去年500ベクレルを越えたほうれん草とかきなをタダで流通させた新田みどり農協の橋場氏が私の毒物発言に議会に抗議するが、どう思うかと言う取材電話があった。毒物流通させた犯罪者橋場が何を言う?謝罪を求めるだあ?あんたが謝罪しろ!」(ツイッター5/28)
3.「毒物を作る農家の皆さんの苦労なんて理解できません」(ツイッター昨年12/12・この記事は直接確認できませんでした)
懲罰動議では、これらの発言に対して「市民」や「国民」から数多くの抗議が寄せられていることを紹介しながら、庭山議員が「根拠のない暴言を繰り返し何ら反省もせず多くの人を傷つけ議会の品位を汚し公職に相応しくない」と最大級の罪状で除名を求めています。庭山議員が桐生市は放射能汚染地域であると言ったことや、桐生(黒保根)の農産物を毒物呼ばわりしたこと、生産者を犯罪者扱いしたことなどを「根拠のない暴言」と決めつけています。そして、庭山議員が善意の献血協力者や農家の人たち、復興に頑張る人たちなどを「傷つけた」と非難しています。
私から見れば、単に言葉尻を捉えて「ムカついた」というレベルの話に思えます。言葉遣いとか表現法とかの話はさておいて、事実はどうかということを考えれば、庭山議員の言っていることは間違っていません。桐生市は国が指定する「汚染状況重点調査地域」という放射能汚染の高い地域です。残念ながら、環境から取込まれたセシウムによる内部被曝をゼロにすることはできません。血液にも含まれると考えるのが当然です。問題は、きちんとした検査が行われていないことです。安全確認もなしに庭山議員の発言をデマと言う方が根拠がありません。さらに、もともと輸血用血液にはガンマ線を照射して使われるのだから、庭山議員の言うことはおかしい情報も流されましたが、これも放射線が外から当たる外部被曝と、放射性物質が体内に入る内部被曝の違いを無視した話です。
汚染地域で作られた作物は、多かれ少なかれ放射性物質を取込みます。原発事故で放出されたセシウムなどの放射性物質をまったく含まない農産物はありません。国の規制値以下なら安全というわけではありません。仕方がないとか我慢して食べるとか、そういうレベルのものです。特に学校給食など子どもたちに食べさせるものを限りなく放射能ゼロにすることは大人の努力義務です。残念ながら、3.11以前の目で見れば、今そこで採れる農産物は「毒物」です。それをまったく「安全」と言って無条件で流通させることは罪なことです。まして、500ベクレル超えの食品を拡散する行為は「犯罪」と言われても仕方ありません。
いずれにしても、放射能汚染の危険性を訴える庭山議員の言動を虚偽や人権侵害と決めつけて、あろうことか懲罰除名にまでしてしまうことの方が、よほどの暴挙です。
桐生市議会では、17人が連名で懲罰動議を提出しました。本人と議長を除けば20人ですから、17人というのは圧倒的多数です。18日に特別委員会を通過し、20日の本会議では18人が賛成して可決、庭山議員は失職しました。
国会議員では法的拘束力のない辞職勧告決議しかできないのですが、地方議会の議員は違います。地方自治法135条に懲罰の定めがあり、最高は「除名」と規定されています。3/2以上の出席でそのうち4/3以上の同意で「除名」できると定められています。
全国で最近10年間で5件7人が除名になっていますが、2件2人は知事審決で取消、3件4人は選挙で再選され、ほとんどは議員を続けています。2010年、鹿児島県阿久根市で当時の竹原市長派が議場を封鎖してろう城した件で2人の議員が除名になっています。なお、この2人は補欠選挙に立候補して無投票再選しました。09年、長崎県平戸市で浦議が市議会一般質問で市長選候補者の私生活を取り上げ個人攻撃したとして除名処分。直後の選挙で再選されて現在も市議です。08年、福岡県糸田町で西議長が公務怠慢などを理由に除名処分となりましたが、県知事が取消し審決で復職しています。同年、佐賀県上峰町中山議員が副議長不信任案審議での不適切発言を理由に除名処分、これも県知事が取消し審決で復職しました。02年には横浜市議会で日の丸掲揚に反対して議長席を占拠し立てこもった2市議が除名されました。これは高裁まで争って除名が確定しましたが、うち1人は議員に再選されています。
このように過去の例に照らせば、いずれも議会内の言動が除名理由になっています。今回のようなまったく議会外のツイッターというネット上の発言を理由にするのは初めてのことです。しかも、知事審決の例を見ると単なる発言内容だけで除名にするのは行き過ぎというのが法的判断です。庭山議員の場合も、県知事に取消を申し立てれば認められて当然の事案だと思われます。しかし、そう簡単に行くとは限りません。というのは、瓦礫受け入れ処理問題でも県知事と対立しているからです。また、選挙で再選されるパターンが多いのですが、桐生市の場合、補欠選挙は実施されない公算が強いので、次の選挙まで3年待たなければなりません。
民主主義政治制度の根幹は議会にあります。本来、選挙で選ばれた議員を辞めさせられるのは市民だけではないでしょうか。たった18人の同僚議員が同意すれば辞めさせられるということがどうにも腑に落ちません。これでは「多数の横暴」を食い止めることができません。もしクラスの問題児をみんなの投票で追放できるとしたらおかしくありませんか。たとえ孤立無援の異端児であっても排除は許されないことです。今回のことで地方議会はムラの寄り合いの延長上にあると再確認しました。除名は議会ムラの秩序を乱す異端者を排除する「村八分」制度になっています。「懲罰だっ!」地方議会でよく聞くヤジです。大体は、少数派に対する恫喝です。
ポスト3.11原発危機は、日本社会の根っこに横たわる問題を様々あぶり出しています。民主主義の危機も見えてきました。
<桐生市議>失職 放射能巡り暴言、ツイッターに書き込み(毎日新聞6/20)
由紀日記(庭山氏のブログ)
6/20国会・都議会・市議会~民主主義の危機(日記) ― 2012/06/21 06:06
ドサクサマギレ、ヒラキナオリ、スルー・・・日本の政治が、危機に対して、ではなく、危機に乗じて!、動いているんじゃないかと思う今日この頃。6/20、この日はそんな事を考えさせるいろいろな出来事がありました。
その一つ、東京都議会で原発都民投票条例案が否決されました。以前ブログの書きましたが、32万人もの署名による直接請求をかくもあっさり切り捨てた「議会」っていったい何なのでしょう。上の写真は騒然とする傍聴席に向かって「威嚇」する石原都知事です。都民の願いは「私たちの意見を聞いて欲しい」という至極まっとうなものです。代表民主制が行き詰まって、直接民主制も否定されれば、行き着くところは専制ファシズムという危機感を抱かざるを得ません。
また、国会では原子力規制委員会設置法が可決されました。あろうことか、消費税を巡るドサクサに紛れて「原子力基本法」を書き換え、原子力の「軍事利用」への道を開きました。原子力基本法は原子力の憲法、これまで原子力の研究や利用を「平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に」とした基本法第二条に「我が国の安全保障に資することを目的として」という項目を追加していたのです。自民党の修正要求で入り込んだものですが、何の議論もなしにスルーされました。我が国の安全保障のためと言うのは、詰まるところ北朝鮮やイランの主張と同じ論理です。これと合わせたように宇宙航空開機構法も改正され「平和目的」限定条項を削除、宇宙開発を「安全保障」のために行えるようにしました。これで将来的に長距離核ミサイルを持つ事も夢ではないということです。こんな大事なことが裏でコソコソ決められていました。次の参議院ではしっかり審議してストップをかけることを期待しますが、消費税の話に隠されそうです。
そして、地元では桐生市の議員除名問題、これについては昨日のブログに書きました。
6/20だけで、これだけのことが起こっています。もはや、議会制度は機能不全に陥っているように思います。民意をくみ上げるシステムになっていません。国民不在、市民不在で勝手にやっているようにしか見えません。
原発都民投票 本会議で否決(東京新聞6/21)
東京都議会6/20本会議中継録画(52分~56分にかけて採決、傍聴人に対して退場の命令)
「原子力の憲法」こっそり変更(東京新聞6/21)
改正宇宙機構法が成立 平和目的限定を削除(東京新聞6/21)
その一つ、東京都議会で原発都民投票条例案が否決されました。以前ブログの書きましたが、32万人もの署名による直接請求をかくもあっさり切り捨てた「議会」っていったい何なのでしょう。上の写真は騒然とする傍聴席に向かって「威嚇」する石原都知事です。都民の願いは「私たちの意見を聞いて欲しい」という至極まっとうなものです。代表民主制が行き詰まって、直接民主制も否定されれば、行き着くところは専制ファシズムという危機感を抱かざるを得ません。
また、国会では原子力規制委員会設置法が可決されました。あろうことか、消費税を巡るドサクサに紛れて「原子力基本法」を書き換え、原子力の「軍事利用」への道を開きました。原子力基本法は原子力の憲法、これまで原子力の研究や利用を「平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に」とした基本法第二条に「我が国の安全保障に資することを目的として」という項目を追加していたのです。自民党の修正要求で入り込んだものですが、何の議論もなしにスルーされました。我が国の安全保障のためと言うのは、詰まるところ北朝鮮やイランの主張と同じ論理です。これと合わせたように宇宙航空開機構法も改正され「平和目的」限定条項を削除、宇宙開発を「安全保障」のために行えるようにしました。これで将来的に長距離核ミサイルを持つ事も夢ではないということです。こんな大事なことが裏でコソコソ決められていました。次の参議院ではしっかり審議してストップをかけることを期待しますが、消費税の話に隠されそうです。
そして、地元では桐生市の議員除名問題、これについては昨日のブログに書きました。
6/20だけで、これだけのことが起こっています。もはや、議会制度は機能不全に陥っているように思います。民意をくみ上げるシステムになっていません。国民不在、市民不在で勝手にやっているようにしか見えません。
原発都民投票 本会議で否決(東京新聞6/21)
東京都議会6/20本会議中継録画(52分~56分にかけて採決、傍聴人に対して退場の命令)
「原子力の憲法」こっそり変更(東京新聞6/21)
改正宇宙機構法が成立 平和目的限定を削除(東京新聞6/21)
官邸前を埋め尽くした20万人の声(日記) ― 2012/06/30 08:00
「再稼働反対!」国会議事堂横から首相官邸前につながる広い道路がみるみる人に埋め尽くされていきます。とにかく、人、人、人・・・幟旗を押し立てる人、プラカードを持つ人、子どもの手を引く人、肩車する人、お年寄、若者カップル、仕事帰りのサラリーマン・・・遠くから見たらきっと何かのお祭りにも見えるかもしれません。こんなデモは初めてです。こんな「道路埋め尽くし型」のデモは40年以上前の学生運動以来見たことがありません。しかも、動員とかでなく、個人個人が集まってきてこれだけの数に膨れ上がり、自然にみんなが声を合わせて「再稼働反対!」と叫んでいる、そんな不思議なデモでした。ほとんどの参加者には主催者が誰とかいう認識はないと思います。一見「烏合の衆」のようですが、だれかに指図されたり、だれかに導かれたりする行動ではなく、みんな自分の意志で行動していると、強く思いました。明らかに新しいスタイルのデモです。
この日の参加者は主催者側の発表で「20万人!」、現場の私にはとても想像がつきませんが、自分の目の前を見ただけでも「万単位」であることは容易に分かります。日本の首相官邸前を「20万人」もの人々が埋め尽くす抗議デモなどまさに前代未聞のこと。さすがに今回はマスコミ各社もヘリを飛ばして取材したようです。頭上には何機ものヘリが飛び交っていました。昨夜のニュースは見ていませんがどうだったのでしょう。今朝の東京新聞ではもちろん一面トップでした。朝日も毎日もさすがに今回は一面で伝えています。ところが、読売ではまったく一言も載っていません(栃木版)。いくらなんでもひど過ぎます。これでは、チベットのデモを伝えない中国国営新華社通信と同じではありませんか。あまりにも偏ったメディア姿勢には驚きます。読売は原子力ムラの広報部、そんな新聞が読者数日本一とは本当に情けないことです。今回のデモ、おそらく海外では大きく報道されていることでしょう。日本で中国やアラブのデモ大衆行動を見聞きするように。
「大きな音だね」・・・そのとき官邸にいた野田首相は報道陣の問いかけにこうコメントしたと言います。野田首相にとっては「声」ではなくて「音」なのですね。人々の「声」として耳に入っていないのです。彼にとって、それは単なる「騒音」でしかないのでしょう。こんな首相に国を託していることは悲劇です。
再稼働に向けて動き出している大飯原発は、明日(7/1)原子炉起動が予定されています。原子炉が動き出せば、日々毎日再びセシウムやプルトニウムを・・・膨大な死の灰を生み出し続けることになります。原発は、瞬間で使ってしまう電気とひきかえに、何十万年も消えない死の灰を作るということを忘れずに。今からでも遅くない、原発を動かすな!すべて廃炉しろ!・・命が大事だから。
この日の参加者は主催者側の発表で「20万人!」、現場の私にはとても想像がつきませんが、自分の目の前を見ただけでも「万単位」であることは容易に分かります。日本の首相官邸前を「20万人」もの人々が埋め尽くす抗議デモなどまさに前代未聞のこと。さすがに今回はマスコミ各社もヘリを飛ばして取材したようです。頭上には何機ものヘリが飛び交っていました。昨夜のニュースは見ていませんがどうだったのでしょう。今朝の東京新聞ではもちろん一面トップでした。朝日も毎日もさすがに今回は一面で伝えています。ところが、読売ではまったく一言も載っていません(栃木版)。いくらなんでもひど過ぎます。これでは、チベットのデモを伝えない中国国営新華社通信と同じではありませんか。あまりにも偏ったメディア姿勢には驚きます。読売は原子力ムラの広報部、そんな新聞が読者数日本一とは本当に情けないことです。今回のデモ、おそらく海外では大きく報道されていることでしょう。日本で中国やアラブのデモ大衆行動を見聞きするように。
「大きな音だね」・・・そのとき官邸にいた野田首相は報道陣の問いかけにこうコメントしたと言います。野田首相にとっては「声」ではなくて「音」なのですね。人々の「声」として耳に入っていないのです。彼にとって、それは単なる「騒音」でしかないのでしょう。こんな首相に国を託していることは悲劇です。
再稼働に向けて動き出している大飯原発は、明日(7/1)原子炉起動が予定されています。原子炉が動き出せば、日々毎日再びセシウムやプルトニウムを・・・膨大な死の灰を生み出し続けることになります。原発は、瞬間で使ってしまう電気とひきかえに、何十万年も消えない死の灰を作るということを忘れずに。今からでも遅くない、原発を動かすな!すべて廃炉しろ!・・命が大事だから。
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