放射能汚染追求の市議が除名処分!〜群馬県桐生市2012/06/20 20:40

庭山由紀議員
 「放射能汚染地域に住む人の血って、ほしいですか?」とツイッターでつぶやいた議員が懲罰除名処分!という信じられない出来事が起きています。群馬県桐生市議会は、放射能汚染に関して根拠のない暴言をくり返したとして、庭山由紀議員(43)の除名を可決、庭山氏は本日(6/20)をもって議員を失職することになりました。この問題、先月末頃より地元ではだいぶ騒がれていましたが、全国的にはほとんど話題になっていませんでした。私も隣町に住んでいながら詳しいことを知らないでいました。あわてて桐生の友人知人にも話を聞いたりしました。私の疑問は、庭山氏の言動が議員除名にあたるのかということ、それに、そもそも選挙で選ばれた議員を議会の多数決でクビにできるのかということです。しかし、世間の関心は庭山氏の「人格問題」にすり替わっているのが残念です。

 群馬県桐生市の庭山由紀市議(無所属)は昨年の選挙で2279票(5位)を獲得して当選、現在2期目の途中です。1期目から、議員たちの既得権にメスを入れ、市議会内部の馴れ合い体質を鋭く追及、歯に衣着せぬ発言と思い切った行動で注目される存在でした。これまでも時には他の議員のスキャンダルを暴くなどで物議をかもしてきました。特定の地区や団体の代表というスタイルではなく、まったくの草の根市民支持で、特に女性層の支持が強いと言われています。ちなみに桐生市議会には女性議員は2人しかいません(定数22)。当然、多くの同僚市議らからは、非常に目障りな存在であったことは事実です。
 市議2期目は、くしくも3.11以後の状況下で、必然的に「放射能汚染」問題に取り組むことになりました。議会では毎回この問題を取り上げ、学校給食用の食材の放射能検査、高濃度セシウム汚染汚泥の野積み問題、最近では岩手県宮古市の瓦礫受入れ焼却の中止を訴えていました。桐生市内で行われた脱原発デモでは先頭に立ってほとんど絶叫、瓦礫の試験焼却の時には搬入トラックの前に横たわり、まさに体を張った抗議行動を行っていましました。
 はっきり言って、今回の除名騒動は桐生市議会にとっては「厄介払い」の意味合いが強いもので、その口実に今回の「放射能暴言」が利用されたと私は思います。地域限定の問題発言ではクビを取れなかった議会が、全国的に注目される放射能発言を逆手に取って待ってましたとばかりクビに動いたものでしょう。
 桐生市は国が定める除染の必要な地域として、放射性物質汚染対処特措法に基づく「汚染状況重点調査地域」の指定を受けています(平均毎時0.23マイクロシーベルト以上の地域を含む)。文科省の地表のセシウム濃度地図や群馬大学の早川由紀夫教授の放射能汚染マップを見てもわかるように、桐生市北部一帯は、関東地方ではもっとも高いレベルの放射能汚染を受けた地域です。例えば、文科省の航空機モニタリング調査では、市北部の黒保根地区、梅田地区などの山間部では、セシウム134と137の合計で1平方メートル当たり10万から30万ベクレル(昨年11月時点)の放射能汚染があります。桐生市が実測したデータでも、最大で1時間当たりの空間線量が0.61マイクロシーベルトありました(庭山氏は測定算出法に疑問を呈している)。

 さて、前置きが長くなりましたが、その庭山議員の言動が問題視され、ついに議員をクビにするという大騒動に発展したのです。まず、何が問題とされたのか、確認してみましょう。 除名を求める懲罰動議に書かれている「暴言」とは
1.「献血の車が止まっているけど、放射能汚染地域に住む人の血って、ほしいですか?」(ツイッター5/25)
2.「今、上毛新聞の記者から電話あり。去年500ベクレルを越えたほうれん草とかきなをタダで流通させた新田みどり農協の橋場氏が私の毒物発言に議会に抗議するが、どう思うかと言う取材電話があった。毒物流通させた犯罪者橋場が何を言う?謝罪を求めるだあ?あんたが謝罪しろ!」(ツイッター5/28)
3.「毒物を作る農家の皆さんの苦労なんて理解できません」(ツイッター昨年12/12・この記事は直接確認できませんでした)

 懲罰動議では、これらの発言に対して「市民」や「国民」から数多くの抗議が寄せられていることを紹介しながら、庭山議員が「根拠のない暴言を繰り返し何ら反省もせず多くの人を傷つけ議会の品位を汚し公職に相応しくない」と最大級の罪状で除名を求めています。庭山議員が桐生市は放射能汚染地域であると言ったことや、桐生(黒保根)の農産物を毒物呼ばわりしたこと、生産者を犯罪者扱いしたことなどを「根拠のない暴言」と決めつけています。そして、庭山議員が善意の献血協力者や農家の人たち、復興に頑張る人たちなどを「傷つけた」と非難しています。
 私から見れば、単に言葉尻を捉えて「ムカついた」というレベルの話に思えます。言葉遣いとか表現法とかの話はさておいて、事実はどうかということを考えれば、庭山議員の言っていることは間違っていません。桐生市は国が指定する「汚染状況重点調査地域」という放射能汚染の高い地域です。残念ながら、環境から取込まれたセシウムによる内部被曝をゼロにすることはできません。血液にも含まれると考えるのが当然です。問題は、きちんとした検査が行われていないことです。安全確認もなしに庭山議員の発言をデマと言う方が根拠がありません。さらに、もともと輸血用血液にはガンマ線を照射して使われるのだから、庭山議員の言うことはおかしい情報も流されましたが、これも放射線が外から当たる外部被曝と、放射性物質が体内に入る内部被曝の違いを無視した話です。
 汚染地域で作られた作物は、多かれ少なかれ放射性物質を取込みます。原発事故で放出されたセシウムなどの放射性物質をまったく含まない農産物はありません。国の規制値以下なら安全というわけではありません。仕方がないとか我慢して食べるとか、そういうレベルのものです。特に学校給食など子どもたちに食べさせるものを限りなく放射能ゼロにすることは大人の努力義務です。残念ながら、3.11以前の目で見れば、今そこで採れる農産物は「毒物」です。それをまったく「安全」と言って無条件で流通させることは罪なことです。まして、500ベクレル超えの食品を拡散する行為は「犯罪」と言われても仕方ありません。
 いずれにしても、放射能汚染の危険性を訴える庭山議員の言動を虚偽や人権侵害と決めつけて、あろうことか懲罰除名にまでしてしまうことの方が、よほどの暴挙です。
 桐生市議会では、17人が連名で懲罰動議を提出しました。本人と議長を除けば20人ですから、17人というのは圧倒的多数です。18日に特別委員会を通過し、20日の本会議では18人が賛成して可決、庭山議員は失職しました。
 国会議員では法的拘束力のない辞職勧告決議しかできないのですが、地方議会の議員は違います。地方自治法135条に懲罰の定めがあり、最高は「除名」と規定されています。3/2以上の出席でそのうち4/3以上の同意で「除名」できると定められています。
 全国で最近10年間で5件7人が除名になっていますが、2件2人は知事審決で取消、3件4人は選挙で再選され、ほとんどは議員を続けています。2010年、鹿児島県阿久根市で当時の竹原市長派が議場を封鎖してろう城した件で2人の議員が除名になっています。なお、この2人は補欠選挙に立候補して無投票再選しました。09年、長崎県平戸市で浦議が市議会一般質問で市長選候補者の私生活を取り上げ個人攻撃したとして除名処分。直後の選挙で再選されて現在も市議です。08年、福岡県糸田町で西議長が公務怠慢などを理由に除名処分となりましたが、県知事が取消し審決で復職しています。同年、佐賀県上峰町中山議員が副議長不信任案審議での不適切発言を理由に除名処分、これも県知事が取消し審決で復職しました。02年には横浜市議会で日の丸掲揚に反対して議長席を占拠し立てこもった2市議が除名されました。これは高裁まで争って除名が確定しましたが、うち1人は議員に再選されています。
 このように過去の例に照らせば、いずれも議会内の言動が除名理由になっています。今回のようなまったく議会外のツイッターというネット上の発言を理由にするのは初めてのことです。しかも、知事審決の例を見ると単なる発言内容だけで除名にするのは行き過ぎというのが法的判断です。庭山議員の場合も、県知事に取消を申し立てれば認められて当然の事案だと思われます。しかし、そう簡単に行くとは限りません。というのは、瓦礫受け入れ処理問題でも県知事と対立しているからです。また、選挙で再選されるパターンが多いのですが、桐生市の場合、補欠選挙は実施されない公算が強いので、次の選挙まで3年待たなければなりません。
 民主主義政治制度の根幹は議会にあります。本来、選挙で選ばれた議員を辞めさせられるのは市民だけではないでしょうか。たった18人の同僚議員が同意すれば辞めさせられるということがどうにも腑に落ちません。これでは「多数の横暴」を食い止めることができません。もしクラスの問題児をみんなの投票で追放できるとしたらおかしくありませんか。たとえ孤立無援の異端児であっても排除は許されないことです。今回のことで地方議会はムラの寄り合いの延長上にあると再確認しました。除名は議会ムラの秩序を乱す異端者を排除する「村八分」制度になっています。「懲罰だっ!」地方議会でよく聞くヤジです。大体は、少数派に対する恫喝です。
 ポスト3.11原発危機は、日本社会の根っこに横たわる問題を様々あぶり出しています。民主主義の危機も見えてきました。

<桐生市議>失職 放射能巡り暴言、ツイッターに書き込み(毎日新聞6/20)

由紀日記(庭山氏のブログ)