渡瀬遊水池「ヨシ焼き」問題2〜放射能の減らない遊水池の特徴2013/03/02 12:38

栃木県河川水質モニタリング結果より作成
 川はセシウムを運んでいます。セシウムは汚染レベルの高い上流部から下流へと常に運ばれてきます。セシウムは水に溶けるというより土に結合していますので、土砂とともに流れ下ります。したがって、増水して濁流が流れるようなときに大量に流れ下ると考えられます。上流部では浸食作用により土砂とともにセシウムが運び出されて徐々に減っていきますが、下流域では堆積作用によって土砂とともにセシウムが蓄積され増えていくというようなことが起こります。渡良瀬遊水池はまさにこのような場所なのです。広大なヨシ原は増水時に水浸しになるような所です。そこではセシウムを運んできた細かい土砂が沈殿して堆積します。
 上のグラフは、河川土壌に含まれる放射性セシウムの濃度変化を示すグラフです。ちょうど渡良瀬川が遊水池に入る所にある新開橋の下、左右河川敷と川底の土1キログラム当たりに含まれるセシウム134と137合計量の変化を表しています。データは栃木県による水質モニタリング調査結果から採っています。原発事故から2年近く経っても結局「減らない」ということがお分かりでしょうか。減ったと思ったら増えて、また減ったと思たら増えて、というようなことを繰り返しています。
 これは増水と関係あります。例えば、2012年6月28日に右岸河川敷で3900ベクレルに急増しています。実はその直前の6月20日に台風4号による増水があり、水位計の記録によると普段より6メートルも水位が上昇しました。もちろん河川敷は水没しています。水が引いた直後は大量の土砂がヘドロのように堆積していた可能性があります。おそらくそのためにセシウム濃度が上がっていると考えられます。
 ちなみに水位の記録を見ると、このような増水(4メートル以上)は年間に数回しかありません。2012年はこれと5/4の2回だけ、2011年は4回だけで、9月には台風で8メートルも増水したことがあります。もしも、このグラフを原発事故以前から描いたら「最初ゼロ、原発事故で上昇、さらに夏場の増水で急増して、一旦下がる」というカーブになったことでしょう。このグラフはそこから始まっています。
 最近の右岸440、左岸245ベクレルという濃度は福島県内などに比べれば桁違いに小さいのですが、この辺りとしてはかなり高いと言えます。遊水池のある栃木県南部のセシウム汚染レベルは地表1平方メートル当たり1万ベクレル程度(文科省の航空機モニタリング調査)、土壌1キログラム当たりで100ベクレル程度(栃木県の農地土壌調査2011年4月)とみられます。これが初期のフォールアウトによる汚染だったと考えられます。したがって、2年を経過しても初期汚染より数倍も高い状態が続いていることが分かります。つまり汚染は増えたままという状態なのです。
 上流の足尾山地や赤城山一帯には、地表1平方メートル当たり10万〜30万ベクレルもの汚染地帯が広がっています。大雨のたびにセシウムを含んだ大量の土砂が運ばれてくるため、今後も増えることはあっても減ることは難しいのではと予想されます。
 今から100年前、足尾銅山の鉱毒を沈殿させるために、ここに遊水池が作られました。今まさに同じことが起こっているような気がしてなりません。

環境省による放射性物質モニタリング調査結果(公共用水域・地下水)(栃木県)

農地土壌の放射性物質濃度の調査結果(栃木県)

国土交通省・水文水質データベースより藤岡観測所

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