瀬戸内寂聴さん「原発はね、無くさなければいけない」2012/05/07 06:56

経産省前でハンスト中の瀬戸内寂聴さんら
 5/2、作家の瀬戸内寂聴さんが経産省前の脱原発テント村を訪れ、原発再稼働反対を訴えるハンガーストライキに参加しました。90歳になるとは思えないエネルギーと生命力を感じさせます。
 つい最近まで、寂聴さんは東京新聞で「この道」という連載を書いていました。関東大震災で大杉栄とともに虐殺された伊藤野枝や、大逆事件で幸徳秋水とともに処刑された管野スガのことなども書かれています。「青鞜」の女たち、軍国主義に向かう時代に自由を求めて生きた女たち、彼女らの生き方に寂聴さん自身の人生を重ねて描かれています。「美は乱調にあり」「遠い声」などの作品を思い出しながら興味深く読みました。寂聴さんは、心の自然と魂の自由を徹底的に追求してきた人だと思います。だから、人間を縛り付ける権力や支配に対して異議を唱え続けてきました。
 今回は当日の寂聴さんの発言内容を一部ですがご紹介します。私を含めて若い世代に勇気とエネルギーを与える力強い言葉だと思います。

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誰かに任せておいてどうしてなくなるんですか?
それはもう、自分たちでなくそうと努力しなければなくなりません。だって、なくしたくない人たちもいるんだから、その利益のためにね。
だから私たちは悪いと思ったらですね、それはやっぱりね、自分たちで闘って不必要なものはなくさないといけないです。

体なんていたわっていたらこんなことできませんよ。

日本は原爆を2度受けてて、私が生きてきた90年でね、こんな悪い時代はなかった、って言っているの。戦争中の方がね、まだ、ましでしたよね。

恐ろしい国ですよ。滅びつつありますよ。これから生きていくね、若い人とかね、子どもたち、生まれてくる子はどうするんですか?と、どうやってそれをね、平気で恐ろしい国に渡せるんですか?だから、それはとてもね、今悪い状態ですね。
それをどうして政治家が感じないのかがね、本当に鈍いと思いますね。だって今の政府が再稼働をしようとしているんでしょ?
ドジョウはそんなことしませんよ。本当のドジョウは。

もう、政府がけしからんと思っています。国民が原発事故がどれだけ怖いかまだ自覚していない。再稼働しようとしている政府も悪いが、その人たちを選んだのは我々国民。我々にも責任がある。
(テレビ朝日モーニングバードより)


原発はね、無くさなければいけないと思ってるの。安全な世の中にしたいって、それで体張ってるって訳。(TBSニュースバードより)


戦争で、広島がやられて長崎がやられている訳でしょ。その日本がですね、唯々諾々と原発を使っているということは非常に恥ずかしいことだと思います。
そして、これは絶対に無くさなければいけないですね。反対すべきだと思います。
(NHKニュースより)


私は、前の戦争を経験しています。
その時は、非常に素直な人間だったから、情報を全部信じてた。だから、勝った勝ったって、提灯行列したり、そういうことしてたんですね。日本が負けるなんて夢にも思わなかったの。
でも、見事に負けたでしょ。その時、私は北京で終戦を迎えましたから、自分は殺されると思いましたよ。
本当に大本営発表を信じていた自分の愚かさが、戦後つくづく嫌になってね、それまでは私は人の言うことを良く聞いてきたけど、これからは自分で触って体で感じたものでないと信じまいと思ったんですよ。
世の中に出ているニュースっていうものはね、決して真実でないと今私は思っているんですよ。だからね、何でも疑ってかかりなさいってことを若い人に言いたい。

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瀬戸内寂聴さんの経産省前での訴え(0:00〜5:00:テレビ朝日モーニングバード5/3、5:00〜6:00:TBSニュースバード5/2、6:00〜7:12)youtubeより
http://www.youtube.com/watch?v=hek_SEye5r4&feature=related

瀬戸内寂聴さんらもハンスト~経産省前脱原発テント(途中0:49〜1:54の部分、冒頭は鎌田慧氏、後半は澤地久枝氏)youtubeより
http://www.youtube.com/watch?v=a7fZIoDo3GY

脱原発 寂聴さんらもハンスト 経産省前(東京新聞5/2夕刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012050202000252.html

柏崎刈羽原発の再稼働を許すな2012/05/09 20:31

米山SAから見た柏崎刈羽原発
 何の変哲もない風景写真ですが、海の向こうに見えるのは「世界最大の原発」東京電力柏崎刈羽原子力発電所(略称KK)、右手前から1,2,3,4,7,6,5号機の7つの原子炉が並び、総出力821万キロワットは世界最大。こんな写真がコンパクトデジカメのズームで簡単に撮れます。撮影場所は北陸自動車道米山サービスエリア(上り線)で、原発からはおよそ14kmのところです。連休中に立ち寄った時に撮影しました。こんな目と鼻の先に巨大な原発が存在しているのです。人口9万人の柏崎市中心部からは7kmしか離れていません。高速道路は、もっとも近いところで、原発まで3kmのところを通っています。ただ、そこからは松林に覆われた丘陵が遮っていて煙突や鉄塔以外は見えません。2系統の送電線が高速の上を跨いでいます。ここを伝わってはるばる関東に電気を送っていたのかと思うと複雑です。
 現在すべての原発が停止中です。これだけの大規模な発電所ですが、2007年7月の中越沖地震以後の5年間に運転されたのは、全発電能力の2割弱です。地震後2年半近く全機停止していましたが、運転再開反対の声を押し切って、7、6、1、5号機の順で次々に運転が再開され(7号機だけが2回運転)ましたが、現在はすべて定期点検で止まっています。そして、2、3、4号機は未だに地震で停止したまま運転されていません。ですから、現在は発電量ゼロどころか冷却のため莫大な電力を消費する「世界最大の無用の長物(危険物)」と化しています。
 東電の家庭用電気料金10.28%値上げが問題になっています。これは東電の「総合特別事業計画」に含まれているものです。値上げ自体の不当性については改めて考えたいと思いますが、この「事業計画」には絶対に見過ごせないことがあります。それは、東電が「柏崎刈羽原発を2013年4月に再稼働する」と明言していることです。再稼働を前提とした事業計画をこの時点で出してきて、しかも国がそれを認可するようなことになれば、これまた本末転倒です。事故を起こした会社が事故の後始末もできていないうちにもう再稼働を口に出すなど呆れます。今後、東電は実質国有化によって救済されそうな流れです。つまり、国と東電が名実共に一体化したら、いったい誰が東電の再稼働を判断するのでしょう。事業計画の認可はそのまま「再稼働ありき」の流れをつくるものです。
 これに対して、地元の新潟県の泉田知事は原発の再稼働には一貫して反対しています。福島原発事故の検証なくして再稼働の検討すらあり得ないと言っています。柏崎市の会田市長も同じ態度です。「東電は事故のけじめをきちんとつけてからモノを言え」という強い態度が感じられます。中越沖地震以来、東電に対してはかなりの怒りと不信感を持っていましたから、この対応はうなずけます。
 さらに、住民の動きもあります。再稼働の是非を問う住民投票を実施するための直接請求運動が始まりました。新潟県民の4万人以上の署名を目指しています。原発地元住民自らの声を反映させる動きで非常に注目されます。新潟ではかつて東北電力の巻原発建設計画を巻町の住民投票によって中止させたという歴史もあります。
 このように、柏崎刈羽原発の再稼働をめぐっては、カネの問題から再稼働させたい東電(と国)と、原発事故の恐怖を他人事とは思えない地元自治体(住民)との隔たりは大きいようです。もう一つのカギを握るのは、東電の電気を使っている私たち関東圏の住民です。実は最大の当事者でありながら、まるで他人事のように思っている人が多いのではないでしょうか。東京では近々「原発都民投票条例」が議会にかけられます。この行方にも注目しています。とにかく、みんなが自分の問題として考えることが必要です。
 最後に一言、「東電よ、原発再稼働なんて言い出す前に、原発事故の後始末をきちんとしろ」。

新潟県知事、再稼働前提なら「新社長と会わぬ」 柏崎原発巡り (日経5/9)

関西電力大飯原発の再稼働問題について(泉田知事定例記者会見4/19)

柏崎刈羽原発:再稼働是非、住民投票で 署名集めへ市民団体 /新潟(毎日新聞4/30)

住民投票で巻原発を阻止した住民運動

32万筆 署名有効 「原発都民投票」条例制定請求へ(東京新聞4/24)

ナマズとセシウム2012/05/16 21:52

吉川市の中川のナマズから放射能
 埼玉県の東の端に吉川というところがあります。もうだいぶ前のことですが、私はその町に暮らしていたことがあります。中川と江戸川に挟まれた水の豊かな田園地帯でした。さして名物のない町ですが、「ナマズ」が有名です。駅前に巨大な金色のナマズのモニュメントを造るくらい気合が入っています。街中には川魚料理を出す老舗の料理屋が並び、美味しいナマズ料理が食べられます。この吉川のナマズにとってショッキングな出来事が起こりました。
 埼玉県が4/1に同市中川の新川橋下流で採集した天然ナマズ2匹から体重1kg当たり130ベクレルの放射性セシウムが検出されたのです。県は中川の天然ナマズを食べないようにお触れを出しました。もっとも、食用のナマズはすべて養殖モノで、こっちの方はセシウムが検出されていませんから、料理屋で食べるナマズは大丈夫です。さて、いったいどうして天然ナマズからセシウムなのか?今回は、この問題について考えてみたいと思います。
 中川は今では排水河川のような川になっています。北は利根川、南は荒川という2大河にはさまれた関東平野のど真ん中をくねくね流れ低地の水を集めて、最後は葛飾あたりを通って東京湾に注ぎます。江戸時代初めころまでは利根川と荒川の本流が流れていたところです。埼玉県東部平野では、利根川から農業用水を引いて水田を作り、排水が中川に流れ込むようになっています。さらに、平野部に降った雨は最終的に中川に流れ込みます。ですから、原発事故で関東平野に降り積もった放射性物質がこのような河川に相当流れ込んでいると考えられます。さらに利根川を通じて群馬県の山岳地帯からも放射性物質が流れてきているでしょう。
 セシウムはイオンとなって水に溶ける物質ですが、粘土質粒子があるとそれに吸着しやすい性質があります。したがって、雨水で流される場合も粘土質粒子と一緒に流されていくと考えられます。このような微粒子は流れが緩やかになると川底に沈殿していきます。さらに、海に近くなり標高差が小さくなると満ち潮の時に海水が逆流してくる「塩水楔」という現象も起こります。中川でも吉川付近までその影響が及んでいます。薄い濁りとして水中に拡散している粘土質微粒子は、海水に触れると微粒子同士がくっ付き合うという「凝集」現象を起こし、いっきに沈殿が進みます。このようなことから、下流から河口にかけての川底にはセシウムが溜まる傾向があります。この現象はNHK特集でも紹介されました。
 ナマズという魚は、川底に住んでいます。最大60cmにも達し、日本の淡水では大型魚類です。手当たり次第に何でも食べるといってもいいほどの大食漢です。主に、ドジョウや小魚、カエルやエビや昆虫などを食べています。淡水中の食物連鎖においては頂点に位置します。食物連鎖の段階が上がるほどセシウムの濃度は生物濃縮によって高くなる傾向があります。今後、ドジョウなどを採集して放射能検査をすればセシウムの流れがより明確になるでしょう。ドジョウは泥を食べて中から小動物を濾しとって餌にしています。泥は吐き出すのですが、このような食性から川底の汚染を取り込みやすいのです。泥→底生小動物→ドジョウ→ナマズ・・・と生態系の中をセシウムが流れていきます。最後が排泄物や死骸となって環境に戻って、また生物に取り込まれて・・・ということを繰り返し、生態系の中をぐるぐる回ることになります。
 自然生態系の中では、魚だけでなくシカやイノシシなどの野生動物たちに放射能汚染が広がっています。それらを人間が食べないから無関係だと言えるでしょうか。今、自然に生きる生物ほど大きな影響を受けています。植物でも、山菜やタケノコ、キノコといった自然の恵みのものに汚染が顕著です。これまでもっとも喜ばれていた天然物が一番危ないという実に皮肉なことが起こっています。食べ物は、本来自然の恵みです。日本は、太古の昔から、山の幸、海の幸に恵まれた豊かな国でした。これまでも近代化の中で多くのものを失ってきましたが、今回の放射能汚染は極めつけの最悪ではないでしょうか。遠いところから食べ物を買ってきてしか安全に生きるすべがないなんて・・・!
 子どもの頃、朝から晩まで川遊びをしたことを思い出します。ナマズも採ったことがあります。ナマズは怖いという印象でした。小さな子どもたちの目当てはドジョウでした。バケツいっぱいになるほどのたくさんドジョウを採って家に持ち帰ってドジョウ汁にして食べた記憶があります。足の裏をくすぐられる感覚が今でもよみがえってきます。私たちはそんな記憶をもつ最後の世代かもしれません。さて、自らをドジョウになぞらえた野田総理、私と同世代の人間ですが、本当のドジョウを知っているのでしょうか。地盤の船橋市はいわゆるホットスポットで、市内の海老川で底土1kg当たり6400ベクレル(昨年11月)もの放射性セシウムが出ています。今や「泥をかぶる」ということは「放射能をかぶる」と同じことです。野田総理、その覚悟がありますか。

天然ナマズで基準超放射性セシウム(NHK5/11)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120511/k10015067171000.html

ナマズの放射性物質調査の結果について(埼玉県5/11)
http://www.pref.saitama.lg.jp/news/page/news120511-14.html

東京湾のセシウム、7カ月で1.7倍 流れ込み続く(朝日新聞5/10)
http://www.asahi.com/national/update/0509/OSK201205090186.html

東日本大震災の被災地における放射性物質関連の環境モニタリング調査について(環境省HP)河川の調査は環境省らしい
http://www.env.go.jp/jishin/rmp.html#monitoring

日食、ホルムアルデヒド、レバ刺し、まとめてつぶやき(日記)2012/05/21 19:58

木もれ日もリングに
 やはり生で見る日食は感動します。今朝は学校の屋上で金環日食観察会を行いました。金環食中は周りの景色がくすんで見えるような感じがしました。実際かなり光が弱くなっているようです。明らかに気温も下がり肌寒さを感じるほどです。その時、うすく雲が掛かって、なんとそのまま肉眼でもリング状の太陽を見ることができ、本当の生で金環食を見ることができ本当に幸運でした。
 今日の本番が近づくにつれ、さかんにマスコミに取り上げられてきましたが、気になることがありました。”世紀の天体ショー”と盛り上げつつ、必ず”ご注意”をしつこいくらい流していました。「太陽を見ることは危険です」「日食グラスでも長く見つめない」などなど、番組によっては注意事項の方が長いくらいでした。これでは、危ないことをしているようで気分が萎えます。昨年3月、放射性物質が降っている時に、マスコミはどんな注意をしてくれました?

 3日前、利根川水系から取水する浄水場から基準値を超えるホルムアルデヒドが検出され、千葉県や埼玉県の一部34万世帯で水道が止まりました。一時的にパニック状態で、あっという間にコンビニやスーパーから水が消えました。ホルムアルデヒド混入の原因は未だにわかっていません。今後、流出源が特定されれば水質汚濁防止法で捜査摘発されることになるでしょう。
 気になるのは、「この程度の濃度なら健康に影響ない」「日本の基準は厳しい」「飲み続けたときの発がん性は確認されていない」とのコメントが一部マスコミで流れたことです。どこかで聞いたことのある台詞です。原発事故の後、金町浄水場で水1kgあたり210ベクレルの放射性ヨウ素を検出した時にも、繰り返されたコメントでした。しかも、あの時は210ベクレルのヨウ素が入っていても水道を止めることはありませんでした。(幼児向け飲用制限は100ベクレル/kg)汚染源が分かっているのに、未だに摘発されていません。

 7月から牛レバ刺が”禁止”されます(提供禁止)。病原性大腸菌による食中毒の危険があるからということです。法律で禁止するとは、ずいぶん思い切ったことをやってくれます。国の指導によっても安全性を保証できないから結局禁止となったわけです。お上というのは随分と責任感が強いのですね。じゃあ、内部被曝はどうなんだろう。

 最近の出来事から思うことは、原発や放射能の問題とはえらく違うなということです。国やマスコミの言うことやることがずいぶん違います。どこかおかしい!

文科省「放射線副読本」のお金の出所2012/05/25 10:08

文科省の作った放射線副読本
 最近、子どもがこんなものを学校からもらってきたけど「放射線副読本」って何?という話を聞くことがあります。もしかして!と驚いて良く聞いてみると、去年文科省が作った問題だらけの副読本そのものでした。私も見通しが甘かったことを悔やみます。まさか本気で全国の小中高生に配布するとまでは思っていませんでした。3.11以前にも、原子力教育に関する副読本がありましたが、少なくとも高校では教員分の何冊かしか配られていませんでした。もちろんそんなものは誰も見ていません。ところが、今回は段ボール箱で何箱もドカンと届けられています。まず思ったことは、一体いくらお金がかかってる?ってことでした。
 おそらく全国的に4月以降配布が始まっているようです。学校現場の対応ではいろいろな話を聞いています。すでに生徒に配布した学校、取り扱いでもめている学校、はっきり使わないという学校、開封もされず積んだままお蔵入りの学校などいろいろです。今のところ私の周りでは授業に使ったと言う話は聞いていません。私の学校では教員にだけ配布して残りは保管してあります。これはあくまで副読本ですから、それを各学校でどのように使うかということは、もちろん現場の判断です。
 この副読本、最大の問題はもちろんその内容です。それについては、以前、当ブログでも書いたことがありました。簡単に言えば「放射線安全神話を子どもたちに刷り込むための国策教材」です。原発事故にはまったく触れずに「大丈夫!放射線は怖くないんだよ」と子どもたちに教える教材になっています。副読本の内容に関する詳しい検証や反論は下にリンクとしてまとめましたのでぜひご活用下さい。
 もう一つの大きな問題は作った所とお金の出所です。文科省が副読本の作成を委託したのは「日本原子力文化振興財団」。3.11以前には「わくわく原子力ランド!」などという原発推進の副読本を作っていたところです。この財団、理事長は元中部電力副社長、電力OBが天下っている典型的な原子力ムラのメンバーです。昨年3/9に、従来の「原子力推進」副読本制作を2100万円で落札、ところが原発事故を受けて中身を「放射線」副読本に変え、費用も3700万円に増額してそのまま委託されました。その後、この問題では文科相も陳謝していますが、内容に問題はないとしてそのまま制作が進められました。
 全国の小中高校、幼稚園、公民館、図書館すべてに配布するのですから相当の費用がかかるでしょう。これらの施設は7万5000カ所、児童生徒数は1500万人近くになります。発送経費だけでも1億円以上かかるのではないでしょうか。これらはすべて税金から出ています。
 文科省は「放射線等に関する教育への取組を支援する事業」として8億2400万円(平成23年度)の予算を組んでいました。内訳は、都道府県交付金に3億5000万円と、学校教育の場などでの放射線等に関する教育の取組の充実を図る事業の実施による支援に4億7300万円で、この中に今回の副読本に関する経費が入っています。
 これらの予算は政府部内の政策経費項目では「原子力教育支援事業委託費」として分類されています。担当する部署は「研究開発局原子力課立地地域対策室」で、施策名は「原子力分野の研究・開発・利用の推進」となっています。なんと、原子力推進のための部署が子どもたちの副読本を作っているのです。
 もっと驚くべきことには、お金は文科省の一般会計ではありません。エネルギー対策特別会計(略してエネルギー特会)の電源開発促進勘定から出ています。あの悪名高い原発推進のための特別会計です(総額3300億円)。そもそも、そのお金は「電源開発促進税」として私たちが電気料金の中で支払っているのです(1世帯当たり月平均110円)。
 原子力ムラの利権の中に「放射線副読本」も組み込まれていました。原発推進予算を使って、原発推進行政が、原発推進団体に作らせたのですから、こんな内容になるのは当たり前です。文科省だから、子どもを守るのが役目の行政と思っては大間違いです。経産省などと同じで、原発を守るのが役目なのです。そう思ってみると、一々うなずけます。
 この副読本、見るたびに怒りが込み上げてきます。最大の被害者である子どもたちに謝るのが、まず文科省のやることべきことです。3.11以前に「5重の壁で守られている原発から放射能は漏れません」「大きな地震や津波が来ても原発は壊れません」と書いていた責任を取るべきです。懺悔して再出発すべきです。こんな副読本を子どもたちに教えることなど到底できません。

■関連リンク
放射線の副読本、電力会社関連団体に委託 文科相が陳謝

平成23年行政事業レビューシート/ 原子力教育支援事業委託費 (文部科学省)この中に副読本関係予算が入っているのではないか

放射線等に関する教育への取組を支援する事業の概要(文科省)担当部署が開発企画課に変わっている


■副読本に対する検証および批判
放射線副読本 独自に 福島大や富大で取り組み

放射線と被ばくの問題を考える ための副読本(福島大学 放射線副読本研究会)文科省副読本に対抗するもう一つの副読本

検証!「放射線副読本」(原子力教育を考える会)

文部科学省の『放射線等に関する副読本』を読む(USTREAM動画)高校教員が解説しています(約1時間)

放射線等に関する副読本(文科省)そもそもコレが文科省版です