「脱原発基本法」~国会の場に2012/09/11 19:24

 9/7、衆議院に脱原発基本法案が提出されました。国会の場に「脱原発法」が提出されるのはもちろん初めてのことです。思い起こせば、20年前、チェルノブイリ原発事故の後、故高木仁三郎さんらが中心になって「脱原発法」の制定を目指す大きな運動がありました。当時350万人の署名をもって国会請願を行いましたが、国会にかけられることもなく葬られた苦い思い出があります。脱原発法制定は高木さんの遺志を継ぐものでもあります。
 今回、作家大江健三郎さんらが呼びかけ人の市民団体「脱原発法制定全国ネットワーク」が中心になって原案を作り国会議員に働きかけて議案提出にこぎつけました。36名もの衆議院議員が名を連ねての法案提出ができたことは感慨深いものがあります。しかも、すでに賛同を表明している国会議員が67名に達しており、合わせて100名以上の国会議員がこの法案に賛成しています。下記リンクで誰だかご確認ください。
 国会の仕事は国の法律を作ること。政府の仕事はそれにしたがって国を動かすこと。であるならば、国民の代表である国会が、国民の声を聞いて脱原発を決め、政府を動かすことができるはずだし、それが本来の姿です。
 法案は基本法の名の通り国の歩むべき道筋を示したもので極めてシンプルです。条文は9条までしかありません。下記リンクでぜひご一読ください。この法案のポイントは、一つは明確に脱原発の期限を切ったことです。

 第3条(基本理念)脱原発は、遅くとも、平成32年から平成37年までのできる限り早い3月11日までに実現されなければならない。

 つまり、遅くとも12年後の2025年3月11日までには実現させるということです。これに対しては「即時廃止」を求める多くの声があります。私もそうです。即時廃止法案でないことは少々不満ですが、期限付きで原発を廃止することが明確になることは大きな前進です。今の政府や選挙前の各政党が言っている「脱原発を目指す」とか言う曖昧な話ではないのですから。
 そしてもう一つ、最新の科学的知見に基づいて定めた安全基準に適合しなければ運転を認めないとしていることです。これに照らせば、現在の原発の再稼動は相当困難なものとなります。福島原発事故の科学技術的な検証ができずに最新の知見もくそもないからです。また、各地で活断層再評価も持ち上がっています。安全基準が厳しくなった時、たかだか10年しか使わない原子炉に莫大な設備投資をすることはないでしょう。つまり、実質的に即時廃炉に向かう可能性が大きいといえます。
 法案では、この他に国の責務として、省エネ推進、再生可能エネルギー発電の普及、発送電分離等とあわせて原発立地地域の経済雇用対策を義務付けています。さらに、内閣は脱原発基本計画を作成し、それを着実に実施し、その状況を国会に報告するようにも定めています。まさに、国の向かうべき道筋を示したものとなっています。
 国会は9/8に閉会したので、この脱原発法案は衆議院で継続審議となりました。なぜこんな時期に法案提出したのかといえば、それは国会議員に態度を明らかにしてほしいからです。近々解散総選挙となったとき誰に投票するか、私は、原発政策で選ぶつもりです。すでに脱原発法に賛同を表明している衆議院議員が79人います。これは一つの重要な判断材料となるでしょう。今後、候補者一人ひとりに脱原発法への賛否を問いたださなければなりません。
 提案者及び賛成者名簿を見ると、国民の生活が第一・きずなが22人、社民党6人、減税日本が3人、新党大地が3人、無所属が2人です。賛同者名簿では、民主党・無所属クラブ39人(ここには菅直人も入っています)、国民の生活が第一・きずなが3人、たちあがれ日本1人(以上衆議院)、民主・緑風会16人、みんなの党1人、社民党・護憲連合4人、みどりの風1人、新党大地1人、無所属1人となっています。もともとの人数が多いせいもありますが、民主党と元民主党議員が大半を占めています。こうなってくると民主党とは一体何だったのかと思わざるを得ません。さらに、あの議員の名前はなぜ無いの?とか自分の選挙区では一体誰が?など、悩みは尽きません。

脱原発基本法案
提案理由
提出者名簿
賛同者名簿
以上、福島瑞穂氏のブログより参照しました。

脱原発基本法案を提出 全国ネットが作成(東京新聞9/7)

大間原発〜プルトニウムとの因縁2012/09/29 12:48

大間原発建設状況(電源開発より)
 政府は「大間原子力発電所」の建設工事を再開させる方針を発表しました。政府の言う「原発ゼロ」が「嘘八百」なのは初めから分かっていましたが、早々と原発の新設を認めるというのには驚きます。それが大間原発というのはある意味象徴的です。今回は大間原発の問題点について考えます。
 大間原子力発電所は、青森県下北半島北端の大間町に電源開発(株)が建設中の、出力138万kW改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)、現在工事の半分近くが終わっていますが、3.11以後工事はストップしたままでした。
 この原発の最大の問題は「フルMOX」燃料を使った原子炉だということです。MOX燃料というのはウランとプルトニウムを混ぜて作った燃料です。と言うよりウランの代わりにプルトニウムを使う燃料です。すでにプルサーマル計画と称して国内4カ所の原発で使われました(現在はすべて停止中)。これらは通常のウラン燃料集合体の一部をMOX燃料集合体に置き換えて炉心に装荷したもので、MOXは全体の25〜40%程度です。大間原発ではこれを100%MOXにした商業用としては世界初のフルMOX原子炉です。重さにして6.1トンのプルトニウムが使われます。初めからまさにプルトニウム満載の原子炉なのです。
 MOX燃料の危険性は数多く指摘されています。核分裂反応度の制御が難しい、原子炉の余裕度が減少する、燃料の溶融温度が低くなる、などなど。さらに、使った後も難問があります。MOX使用済み核燃料は発熱量(崩壊熱)が非常に大きく、燃料プールでの冷却に相当長い時間が必要となります。5年のところを30年というようなレベルです。それは福島原発事故のような冷却不能に陥れば、はるかに危険な状態になるということです。しかも、大量のプルトニウムが放出される恐れがあります。
 非常に放射能毒性が強く、取り扱いも難しく、しかも原爆の材料にもなるという厄介なプルトニウムをどうしてわざわざ原子力「発電」に使うのでしょう?
 そもそも大間原発の計画は、1982年原子力委員会が大間に「新型転換炉」を作る計画を決めたところから始まります。新型転換炉とはプルトニウムが本格的に利用できる上、通常の軽水炉より使用済み核燃料の中にプルトニウムがたくさんできる原子炉で、高速増殖炉のように核燃料サイクルのパーツの一つとして計画されたものです。かつて「ふげん」が実験炉として稼働していましたが現在は廃炉作業中です。大間原発、そのスタートからしてプルトニウム絡みでした。ところがこの計画、1995年に“電事連”が建設中止を申し入れて計画中止となっています。それと入れ替わりで登場したのが「フルMOX原子炉」なのです。計画中止の翌月には原子力委員会がこの新計画を決定しています。初めから交換条件でした。
 大間原発は電気を作るために必要なのではなく、プルトニウムを使うために必要なのです。だから電力消費地から遠くはなれた本州最北端に作られるのです。すでに電力は原発なしでも足りることが実証されても、なお大間原発を作る必要性はプルトニウム利用しかありません。
 日本は「核燃料サイクル」という夢のような政策をぶち上げ、45年の時間と莫大なお金をつぎ込んできました。要となる「もんじゅ」が動かず、六ヶ所の再処理工場もできていない上、福島原発事故という破局を迎えても、まだ悪夢から目が覚めないのでしょうか!今すぐプルトニウム利用政策を放棄すべきです。
 「原発ゼロ」を後退させ骨抜きにしたという主にアメリカからの「外圧」もプルトニウム問題と深くかかわっています。日米原子力協定や国際原子力パートナーシップ協定でプルトニウムの国際管理という名の下に各国の役割が割り振られています。そこでは日本は、危険で金のかかる核燃料サイクル技術の、まるで唯一の開発実験国家のようになっています。しかも、これまでの過程で抽出された日本の保有するプルトニウムは25トンにもなります。これをどう”消費”させるかも大問題だからです。
 大間原発の建設再開と運転開始は、プルトニウム利用政策の継続、ひいては再処理事業の継続を、内外に向けて高らかに宣言するものです。単なる着工した原発をどうするかという問題にはとどまらない重大な問題を孕んでいるのです。

大間原発 建設再開へ 「新増設せず」骨抜き(東京新聞9/29)