大間原発〜プルトニウムとの因縁2012/09/29 12:48

大間原発建設状況(電源開発より)
 政府は「大間原子力発電所」の建設工事を再開させる方針を発表しました。政府の言う「原発ゼロ」が「嘘八百」なのは初めから分かっていましたが、早々と原発の新設を認めるというのには驚きます。それが大間原発というのはある意味象徴的です。今回は大間原発の問題点について考えます。
 大間原子力発電所は、青森県下北半島北端の大間町に電源開発(株)が建設中の、出力138万kW改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)、現在工事の半分近くが終わっていますが、3.11以後工事はストップしたままでした。
 この原発の最大の問題は「フルMOX」燃料を使った原子炉だということです。MOX燃料というのはウランとプルトニウムを混ぜて作った燃料です。と言うよりウランの代わりにプルトニウムを使う燃料です。すでにプルサーマル計画と称して国内4カ所の原発で使われました(現在はすべて停止中)。これらは通常のウラン燃料集合体の一部をMOX燃料集合体に置き換えて炉心に装荷したもので、MOXは全体の25〜40%程度です。大間原発ではこれを100%MOXにした商業用としては世界初のフルMOX原子炉です。重さにして6.1トンのプルトニウムが使われます。初めからまさにプルトニウム満載の原子炉なのです。
 MOX燃料の危険性は数多く指摘されています。核分裂反応度の制御が難しい、原子炉の余裕度が減少する、燃料の溶融温度が低くなる、などなど。さらに、使った後も難問があります。MOX使用済み核燃料は発熱量(崩壊熱)が非常に大きく、燃料プールでの冷却に相当長い時間が必要となります。5年のところを30年というようなレベルです。それは福島原発事故のような冷却不能に陥れば、はるかに危険な状態になるということです。しかも、大量のプルトニウムが放出される恐れがあります。
 非常に放射能毒性が強く、取り扱いも難しく、しかも原爆の材料にもなるという厄介なプルトニウムをどうしてわざわざ原子力「発電」に使うのでしょう?
 そもそも大間原発の計画は、1982年原子力委員会が大間に「新型転換炉」を作る計画を決めたところから始まります。新型転換炉とはプルトニウムが本格的に利用できる上、通常の軽水炉より使用済み核燃料の中にプルトニウムがたくさんできる原子炉で、高速増殖炉のように核燃料サイクルのパーツの一つとして計画されたものです。かつて「ふげん」が実験炉として稼働していましたが現在は廃炉作業中です。大間原発、そのスタートからしてプルトニウム絡みでした。ところがこの計画、1995年に“電事連”が建設中止を申し入れて計画中止となっています。それと入れ替わりで登場したのが「フルMOX原子炉」なのです。計画中止の翌月には原子力委員会がこの新計画を決定しています。初めから交換条件でした。
 大間原発は電気を作るために必要なのではなく、プルトニウムを使うために必要なのです。だから電力消費地から遠くはなれた本州最北端に作られるのです。すでに電力は原発なしでも足りることが実証されても、なお大間原発を作る必要性はプルトニウム利用しかありません。
 日本は「核燃料サイクル」という夢のような政策をぶち上げ、45年の時間と莫大なお金をつぎ込んできました。要となる「もんじゅ」が動かず、六ヶ所の再処理工場もできていない上、福島原発事故という破局を迎えても、まだ悪夢から目が覚めないのでしょうか!今すぐプルトニウム利用政策を放棄すべきです。
 「原発ゼロ」を後退させ骨抜きにしたという主にアメリカからの「外圧」もプルトニウム問題と深くかかわっています。日米原子力協定や国際原子力パートナーシップ協定でプルトニウムの国際管理という名の下に各国の役割が割り振られています。そこでは日本は、危険で金のかかる核燃料サイクル技術の、まるで唯一の開発実験国家のようになっています。しかも、これまでの過程で抽出された日本の保有するプルトニウムは25トンにもなります。これをどう”消費”させるかも大問題だからです。
 大間原発の建設再開と運転開始は、プルトニウム利用政策の継続、ひいては再処理事業の継続を、内外に向けて高らかに宣言するものです。単なる着工した原発をどうするかという問題にはとどまらない重大な問題を孕んでいるのです。

大間原発 建設再開へ 「新増設せず」骨抜き(東京新聞9/29)