再びセシウム降下物が増えているのはなぜ? ― 2012/01/07 18:19
上のグラフは、福島市の9月以降の放射性セシウムの降下量の変化を表しています。文科省が毎日24時間定時降下物の放射能量を測定して公表したデータから描いています。文科省は、1/6に年末年始のデータをまとめて発表しましたが、ここに驚くほど大きな値がでていてびっくりしました。
1月2日午前9時からの24時間で地表に降下してきたセシウム134と137合計で、1平方メートリ当たり432ベクレルが記録されました。これだけの降下量が記録されたのは、事故直後の3月中を除いて何度もありません。だいたい、4、5月頃に降っていた量に匹敵します。ただし、降下物は積算されていきますから、毎日降下量の多かった当時と単純に比較することはできませんが。それにしても、1月2日の値は突出しています。それまでの4ヶ月間の1日平均が18ベクレルですから、一気に20倍以上になったことが分かります。
1月1日の午後2時半にかなり大きな地震がありました。あまりにもぴったりのタイミングなので、多くの人がこの地震とセシウム降下量の急上昇の関係を疑いました。この地震では関東から福島にかけての広い範囲で震度4を記録しています。震源が非常に深く(370km)規模が大きい(M7.0)地震でした。しかし、東電からも国からも、特に地震による大きなトラブルや事故の発生に関するコメントはありません。
ただ、4号機では使用済み核燃料プールに隣接するスキマサージタンクの水位が急低下するというトラブルが発生しています。東電は地震の揺れで水が燃料プール側に溢れたと言っています。スキマサージタンクは燃料プールの冷却水を受け流してフィルターや熱交換器に送る装置です。以前から4号機が一番危ない状況にあると言われています。4つの原子炉の中で唯一初めから燃料が原子炉の外に出ています。建屋の水素爆発によって最上階の使用済み核燃料プールが極めて不安定な状態になっています。建物を支える柱や壁が崩れています。大きな地震でも起これば、大量の核燃料が入ったプールが崩壊するという最悪のシナリオがあります。傾いたり亀裂が入ったりして冷却水が抜けるだけでも大変なことになります。大量の使用済み燃料棒が空焚きになって自らの崩壊熱で融けて、再び膨大な放射能放出が起こって、手がつけられない状態になったら完全にアウトです。
話を戻しますが、地震にともなう何らかの異変で、セシウムが大量に放出されるようなことが起こったのかどうかということはわかりません。原発周辺の モニタリング値にも変化がみられません。また、1日から2日にかけての 風向き(SPEEDIデータ)もチェックしましたが、福島市方向はほぼ風上に位置しています。雨や雪も降っていません。データが正しくて、東電がウソをついていなければですが、その日、原発から新たな放射能が放出されて、それが福島に流れてきて、降った、と言うのは少し難しいかもしれません。
観測を行っている福島県原子力センター福島支所は福島市方木田にあります。文科省の航空機広域モニタリングによると、この付近は放射性セシウム合計で1平方メートル当たり10万〜30万ベクレルの表面汚染になっています。大半は事故直後の3月中に降下したものです。9月以降の降下量は積算で2千〜3千ベクレルになりますが、福島では汚染レベルが非常に高いため、これだけさらに降り積もってもすでにある汚染量に対して1%ほどにすぎません。数百ベクレルや数千ベクレルという数値が小さく見えてしまうことが怖いです。過去の大気圏内核実験で日本に降ったセシウム降下物の月間最大記録は、1963年6月の一ヶ月間に東京都で約550 ベクレル/平方メートル(セシウム137)でしたから、異常なレベルだと言うことがすぐにわかります。
このところ、少し気になる変化が見られます。9月以降の月平均の1日当たりの降下量(放射性セシウム合計)を計算すると、9月は19ベクレル、10月は10ベクレル、11月は12ベクレル、12月中は32ベクレルでした。12月中旬頃から降下量が増えています。収束宣言とは裏腹に原発からの放出量が増えている可能性もあります。
原発からの放射能放出が最大の問題ですが、もうひとつ忘れてならないのは、すでに地表を汚染している膨大な放射性物質の挙動です。再浮上、拡散、再降下という新たな問題も考えなければならないでしょう。すでに汚染されている地表の埃などが強風で舞い上がって、再び降下してくるという可能性です。早川由紀夫教授は冬の季節風で舞い上がった埃にセシウムが付いていると言っています。降下物に含まれる砂塵や埃を分析すれば分かると思いますが、そのようなデータはないのでしょうか。除染したのにいつの間にか線量が元に戻ってしまったという話はよく聞きます。放射性物質は水や風によってたえず移動しているのです。
結局、セシウム降下量の急上昇の原因はわかりませんが、今でも日常的にセシウムが舞っている状況には変わりがないのだということに改めて気づかされます。そして、今でも私たちの上に降り注いでいるのです。事故収束などほど遠い現実です。
(追記)12月から新たな窒素注入を始めていることが関係あるかもしれません。今回、東電は圧力容器にも窒素注入を行うとしています。7月に窒素注入を行った後で、降下物の量が激増した日(7/18-20)がありました。圧力容器、格納容器ともに破損している状況では、注入にともない内部汚染ガスが漏出してくるのは必然です。この関係について現在調査中です。(1/8)
(追記)小出裕章氏が”たね蒔きジャーナル(1/10)”で「2日のセシウム線量急上昇の理由」について解説していました。新たな放出の他に、風に巻き上げられて空気中に出てくる可能性もあるとして、「(放射性降下物の量は)かなり大きく変動すると思っておかなければいけない」と言っていました。 http://hiroakikoide.wordpress.com/2012/01/11/tanemaki-jan10/
1月2日午前9時からの24時間で地表に降下してきたセシウム134と137合計で、1平方メートリ当たり432ベクレルが記録されました。これだけの降下量が記録されたのは、事故直後の3月中を除いて何度もありません。だいたい、4、5月頃に降っていた量に匹敵します。ただし、降下物は積算されていきますから、毎日降下量の多かった当時と単純に比較することはできませんが。それにしても、1月2日の値は突出しています。それまでの4ヶ月間の1日平均が18ベクレルですから、一気に20倍以上になったことが分かります。
1月1日の午後2時半にかなり大きな地震がありました。あまりにもぴったりのタイミングなので、多くの人がこの地震とセシウム降下量の急上昇の関係を疑いました。この地震では関東から福島にかけての広い範囲で震度4を記録しています。震源が非常に深く(370km)規模が大きい(M7.0)地震でした。しかし、東電からも国からも、特に地震による大きなトラブルや事故の発生に関するコメントはありません。
ただ、4号機では使用済み核燃料プールに隣接するスキマサージタンクの水位が急低下するというトラブルが発生しています。東電は地震の揺れで水が燃料プール側に溢れたと言っています。スキマサージタンクは燃料プールの冷却水を受け流してフィルターや熱交換器に送る装置です。以前から4号機が一番危ない状況にあると言われています。4つの原子炉の中で唯一初めから燃料が原子炉の外に出ています。建屋の水素爆発によって最上階の使用済み核燃料プールが極めて不安定な状態になっています。建物を支える柱や壁が崩れています。大きな地震でも起これば、大量の核燃料が入ったプールが崩壊するという最悪のシナリオがあります。傾いたり亀裂が入ったりして冷却水が抜けるだけでも大変なことになります。大量の使用済み燃料棒が空焚きになって自らの崩壊熱で融けて、再び膨大な放射能放出が起こって、手がつけられない状態になったら完全にアウトです。
話を戻しますが、地震にともなう何らかの異変で、セシウムが大量に放出されるようなことが起こったのかどうかということはわかりません。原発周辺の モニタリング値にも変化がみられません。また、1日から2日にかけての 風向き(SPEEDIデータ)もチェックしましたが、福島市方向はほぼ風上に位置しています。雨や雪も降っていません。データが正しくて、東電がウソをついていなければですが、その日、原発から新たな放射能が放出されて、それが福島に流れてきて、降った、と言うのは少し難しいかもしれません。
観測を行っている福島県原子力センター福島支所は福島市方木田にあります。文科省の航空機広域モニタリングによると、この付近は放射性セシウム合計で1平方メートル当たり10万〜30万ベクレルの表面汚染になっています。大半は事故直後の3月中に降下したものです。9月以降の降下量は積算で2千〜3千ベクレルになりますが、福島では汚染レベルが非常に高いため、これだけさらに降り積もってもすでにある汚染量に対して1%ほどにすぎません。数百ベクレルや数千ベクレルという数値が小さく見えてしまうことが怖いです。過去の大気圏内核実験で日本に降ったセシウム降下物の月間最大記録は、1963年6月の一ヶ月間に東京都で約550 ベクレル/平方メートル(セシウム137)でしたから、異常なレベルだと言うことがすぐにわかります。
このところ、少し気になる変化が見られます。9月以降の月平均の1日当たりの降下量(放射性セシウム合計)を計算すると、9月は19ベクレル、10月は10ベクレル、11月は12ベクレル、12月中は32ベクレルでした。12月中旬頃から降下量が増えています。収束宣言とは裏腹に原発からの放出量が増えている可能性もあります。
原発からの放射能放出が最大の問題ですが、もうひとつ忘れてならないのは、すでに地表を汚染している膨大な放射性物質の挙動です。再浮上、拡散、再降下という新たな問題も考えなければならないでしょう。すでに汚染されている地表の埃などが強風で舞い上がって、再び降下してくるという可能性です。早川由紀夫教授は冬の季節風で舞い上がった埃にセシウムが付いていると言っています。降下物に含まれる砂塵や埃を分析すれば分かると思いますが、そのようなデータはないのでしょうか。除染したのにいつの間にか線量が元に戻ってしまったという話はよく聞きます。放射性物質は水や風によってたえず移動しているのです。
結局、セシウム降下量の急上昇の原因はわかりませんが、今でも日常的にセシウムが舞っている状況には変わりがないのだということに改めて気づかされます。そして、今でも私たちの上に降り注いでいるのです。事故収束などほど遠い現実です。
(追記)12月から新たな窒素注入を始めていることが関係あるかもしれません。今回、東電は圧力容器にも窒素注入を行うとしています。7月に窒素注入を行った後で、降下物の量が激増した日(7/18-20)がありました。圧力容器、格納容器ともに破損している状況では、注入にともない内部汚染ガスが漏出してくるのは必然です。この関係について現在調査中です。(1/8)
(追記)小出裕章氏が”たね蒔きジャーナル(1/10)”で「2日のセシウム線量急上昇の理由」について解説していました。新たな放出の他に、風に巻き上げられて空気中に出てくる可能性もあるとして、「(放射性降下物の量は)かなり大きく変動すると思っておかなければいけない」と言っていました。 http://hiroakikoide.wordpress.com/2012/01/11/tanemaki-jan10/
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