がらがらの東電記者会見2012/02/04 23:50

ある日の東電記者会見
 東電の記者会見を見てびっくり!・・・広い会場にパラパラと数人の記者がいるだけでした。4号機の水漏れ問題に関してどうしても腑に落ちないので、東電の記者会見(2/2定例記者会見)そのものを初めてネットで見てみました。東電は自らの ホームページで定例記者会見の動画を公開しています。配布資料もダウンロードできます。はっきり言って、新聞やテレビで見聞きしている東電の原発情報のほとんどはここから出ているのですから、単に情報を知るだけなら、初めからここを見れば良いわけです。
 2/2の午前と午後の会見を見ました。まず驚いたのは、記者がいないことです。そう言えばだいぶ前から、東電会見に記者が集まらなくなったと聞いていました。事故から時間が経ち関心が低くなってきたとか、東電が些末な情報を事細かに発表するのにうんざりしたとか、会見前に発表内容がメール配信されるとか、いろいろな事が言われていますが、会見現場に記者がいないでいったいどうやって記事を書いているのでしょう。
 人員に余裕があるであろう大手マスコミすら集まっていないように思われます。質問を聞いていると、むしろニコニコ動画とかネットやフリー系の記者の方が多いのではと思います。パラパラの会見場では東電も精神的にずいぶん楽というものです。
 それでも会見を聞いていると面白いやり取りがあります。例えば 「回答する記者団」の佐藤記者がこんな事を聞きました。水漏れした配管を指して「手で抜けるんですか?」なんて、彼は東電が作為的に配管を外して水漏れを偽装しているのではないかと疑っているのです。もっと別のところで水が漏れているかもしれないと疑っているのです。これに対して「ナットを緩めれば抜けます」なんて東電は受け流しましたが、なぜ、今になって突然こんな末端の配管が都合よく外れるんだという疑念があるのですね。
 記者会見は、記者と東電の公開勝負の場です。東電は情報は公開してますというスタンスで淡々と流していきます。「東電発表によると・・・」「東電はこう言った」という記事なら誰にでも書けます。会見に出なくたってネットを見るだけで書けます。しかし、これでは東電の思うつぼ、単なる東電の広報にしかなりません。東電の隠蔽やウソを見抜くのが記者に期待されている役目なのです。そこでは質問が大事です。会見に出て質問しなければ不戦敗と同じです。公の場で質問して答えを迫る事ができる唯一の現場が会見なのですから、記者は会見に命をかけてほしいと思います。
 会見場に現れないマスコミ記者は初めから勝負を放棄しているように見えます。会見にも出ずにニュースを流しているマスコミはずるいと思います。東電の窓口、松本原子力立地本部長代理はなかなか強者です。記者側も相当気合いを入れてかからないと良いようにあしらわれてしまいます。会見を見る限り、なかなか難しいと思いました。ネット系やフリーの記者たちは人手が圧倒的に足りません。大手は手を抜いています。こんな状況では、この勝負かなりキツイですね。
 ネット革命はあらたな状況を作り出しました。私のような一般人が東電の記者会見を一部始終そっくりそのまま見れるのですから。その気になればマスコミを介さない一次情報に接する事ができるのです。こんなことは20世紀までは無理でした。だからこそ、メディアは情報の中継伝達だけやっていたのではもはや存在理由がなくなりつつあります。出て来ない情報、隠れた情報を掘り出して、一次情報を得ることこそその役割だと思います。さらに、出回っている情報を徹底的に検証してウソを暴くという一次情報の検証という大事な役割があります。これはなかなか一般人にはできない事です。ネット革命後の今こそプロとしてのジャーナリストの仕事をしてほしいと思います。

 さて、本論の「4号機燃料プール冷却水漏れ」問題は、現在調べているところです。次回報告します。

4号機スキマーサージタンクの謎2012/02/06 23:01

スキマーサージタンクの水位変化
 スキマーサージタンク(skimmer surge tank)、“水面からすくうように水を集めているタンク”とでも呼んだらよいのでしょうか、4号機使用済み核燃料プール(SFP)に付属する施設です。燃料プールの水位が気になって調べているのですが、はっきりいってよく分かりません。
 上のグラフは昨年8月から今までのスキマーサージタンクの水位変化を表しています。燃料プールの水温変化も重ねてあります。現在の仮設循環冷却システムが稼働した後の変化を表しています。水位はかなり激しく変動している事がわかります。後で説明しますが、この水位はプールの水位を表していません。水温は循環冷却が稼働した直後に80℃以上から一気に40℃台まで下がった後、さらに少しずつ低下し、最近は20〜30℃に冷えています。
 水位の見方ですが、スキマーサージタンクは燃料プールのオーバーフローを受けている構造なので、溢れ水の流入が冷却ラインに流出するタンク排水より多ければ水位は上昇し、排水の方が溢れ水より多ければ水位は低下します。グラフが跳ね上がっているところは、おそらく東電が追加給水をしたと考えられます。そのまま循環をくりかえすと、蒸発により失われる水があるので、だんだん溢れ水が減少してきて、その分水位が下がってきます。少なくとも水位上昇があるときはプールは満水です。
 つまり、スキマーサージタンクの水位は、プール水位とは違います。水位そのものよりその「減り方」が重要なのです。蒸発量が増えたり何らかの理由で水が失われると水位の減り方が大きくなります。グラフではその右下がりの傾きが水の減り方を表しています。参考のためグラフ上に点線を載せてみました。その傾きに注目してください。傾きが急なほど減り方が大きい。つまり水が失われている事を示しています。
 先月1/30以降(右の矢印)水位が急降下している様子が分かります。 東電は2/1の会見で、スキマーサージタンク水位の急降下は原子炉からの水漏れが原因とみられると発表しました。原子炉から?なぜ?、実は、4号機の原子炉と燃料プールはひとつながりになっています。したがって、原子炉から水が抜ければプールの水も一緒になって減ってしまうのです。
 いったいどこから冷却水が漏れていたかというと、原子炉から遠く離れた建屋1階の隅っこにある 末端の配管からじょろじょろと水が漏れていたというのです。直径1センチにも満たないパイプですが、原子炉圧力容器内のジェットポンプにつながっています。これはポンプの流量測定に関するテストラインと呼ばれる細長い配管です。この末端の バルブの継ぎ目がすぽっと外れています。そこから水が漏れたというのです。当初6リットルと言っていたのが8.5トンに修正したことが問題になっていましたが、もちろん本質は別にあります。このような修正発表は東電の得意な目くらまし作戦かもしれません。
 4号機は定期点検中であったため、原子炉圧力容器の上蓋が外されて炉心燃料が隣の燃料プールに移されていました。蓋の開いた原子炉はウェルといわれる原子炉上部プールの中に沈んだような状態になっています。原子炉ウェルと燃料プールの間にはゲートがあって、燃料移動時以外は閉じています。 東電の資料によると、ゲートは燃料プール側の水圧によって閉じる構造になっています。
 事故後、燃料プールが冷却できなくなって水が蒸発し水位が低下して燃料が露出する寸前に、このゲートが開いて原子炉ウェル側から水が流入し間一髪メルトダウンを免れたという、 東電はそうなる構造できすぎた話がありますが、 と言っています。この辺りの真相は今もって釈然としません。
 東電は今回の冷却水漏れを発見するきっかけがスキマーサージタンクの急激な水位低下であると言っています。ところが、水位変化のグラフを見ると今回と同じような急降下は何度もあります。最近では 1/1ですが、このときは地震によってプールゲートが開いて燃料プールの水が原子炉ウェルの方に流れたためと東電は発表しています。ここでもゲートがでてきました。それ以後ゲートは開いたままで、燃料プールと原子炉ウェルは「つーつー」となって水位は同じになっていると東電は言っています。
 グラフでは水位の急減は他にも起きているように見えますが、それらの原因は何なのでしょう。冷却水漏れがたびたび起こっているのではないかと疑いたくなります。東電が行っている追加給水の量が分かれば差し引き失われた水の量が分かります。蒸発量は計算で見積もる事ができますから、もし水漏れがあればその量が算出できます。東電は計算結果ではなく根拠となるデータをすべて公表すべきです。そして複数の外部専門家による評価計算を行うべきだと思います。

東電資料(1/23)4号機使用済み燃料貯蔵プール スキマーサージタンク水位低下現象について

(追記)今度は2号機の温度が上昇中!内部の状況がつかめないまま強引に出した「冷温停止」宣言。早くもほころびが!次回はこの問題について

2号機温度上昇~まやかしの「冷温停止状態」2012/02/07 20:52

2号機温度上昇
 2号機の原子炉内部の温度が上昇しています。政府が「冷温停止状態」の目安にしている原子炉圧力容器底部の温度が、1週間で20℃も上がりました。2/7朝には72℃まで達しています。もし80℃(誤差20℃として100℃相当)を超えれば、政府が勝手に決めた「冷温停止状態」が自壊します。少なくとも政府自らが拠り所とする温度条件が崩れ去ります。
 いったいどうして温度上昇が起こったのでしょう。東電は「注水の流れに変化が生じ、うまく燃料に当たっていない」と言っています。どういうことでしょう。ものは言いようです。注水の流れが変わったのではなくて、燃料の位置が変わったために、うまく当たらなくなった・・・というのが本当のところでしょう。
 2号機の燃料はメルトダウンしてその多くが圧力容器底部に溜まっています(一部はメルトスルーして格納容器床に落ちています)が、まだ炉心部分にも一部の燃料が引っ掛かって残っていると見られています(東電想定)。それらに水をかけてかろうじて冷やし続けています。
 現在炉内の冷却は側面からの給水配管と非常用炉心スプレーの2系統で行っていますが、東電は1/26にスプレー系給水配管の交換作業で6時間炉心スプレーの給水をストップしました。ここからは推測ですが・・・その時、水がかからなくなった部分ができて、そこの燃料が発熱し再び融けて動いてしまった。あるいは発熱で割れたり崩れたりして動いてしまった。再び注水してもそこにはうまく当たらない。底部の温度計近くにこの燃料が動いて近づいた。そのため温度が上昇した。・・・おそらく、これが想定される炉内状況です。
 今回は、万一の「臨界」を防ぐためのホウ酸水も注入されています。燃料が融けて形が変わった時に瞬間的に臨界量に達して核分裂連鎖反応が起こる危険があるからです。とても、安定にはほど遠いのが現実です。
 「冷温停止状態」という言葉からは「冷えて固まっている」というようなイメージを人々に与えます。それは人をダマすための言葉です。ところが実態は未だに「融けて流れる」状態なのです。「燃料の位置が変わった(=融けた)」などと言えないものだから「水の流れが変わった」などとおかしなことを言っているのです。
 藤村官房長官は「70℃を超えたのは3つある温度計のうち1つだけだから問題なし」などと寝ぼけたことを言っています。しかもマスコミはそれを無批判に流しています。圧力容器底部にある3つの温度計は互いに数メートル離れています。水に接しているか燃料に接しているかも分かりません。内部の温度分布はおそらく相当なバラつきがあるはずで、実際は70℃よりもっと高い点も存在しているはずです。温度のサンプリングのようなものですから、鵜呑みにしてはいけません。確実に言えるのは実際より高い数値が出ることだけはないということです。
 さらに付け加えれば、圧力容器の下にある制御棒ケーシング上部の温度計が1/12から100℃を超えています。機器故障と言っていましたが、今では高温安定しています。この原因も解明されていません。溶融燃料がケーシングを伝わって流れ落ちているのかもしれません。直接的接触のため温度計が激しく上下したのかもしれません。
 人々をあざむく「冷温停止状態」なる言葉を撤回し、いまだにどうにもならない不安定な状態であることを素直に認めるべきです。「冷温停止状態」を宣伝しているマスコミも同罪です。きちんと正しく報道してください。

福島第1原発事故 2号機、一時70度超 冷却水配管交換が原因か(毎日新聞2/7)
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20120207ddm002040074000c.html

2号機 温度に関するパラメータ(東電資料2/6)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/images/12020612_temp_data_2u-j.pdf

福島第1原発2号機温度計の一つが100度超え 計器不良か(産経ニュース1/14)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120113/dst12011314440010-n1.htm

(追記)NHKかぶんブログの解説(2/7)
http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/600/108553.html

小出裕章/たねまきジャーナル(2/6)
http://hiroakikoide.wordpress.com/2012/02/07/tanemaki-2012feb6/

2号機温度さらに上昇、80℃目前!2012/02/12 15:10

2号機の温度と注水量の変化
 2号機圧力容器内の温度がさらに上昇し、12日正午には79℃を超えました。上のグラフは、原子炉圧力容器底部の温度変化(赤線)と原子炉への注水量(青線)を表しています。
 今日の記者会見で、東電はついに「温度計の故障」説を持ち出してきました。「ちゃんと働いているような故障モードがあるのかどうか検討中」などと訳の分からないことまで言っています。驚きです。
 温度というのは「発生する熱」と「失われる熱」のバランスによって決まります。メルトダウンした核燃料が崩壊熱を出し続けています。その燃料を水で冷却しています。つまり、水が燃料の熱を奪っています。そのきわどいバランスによって温度が決まります。
 東電は7日には温度が70℃まで上昇したため、注水量を大幅に増やしました。発熱量が同じならば、冷却を増やしたわけですから温度は下がって当然です。10日にかけていったんわずかに下がりました。ところが、注水量が同じなのに今度は温度が上がってきました。かなり急激に上がっています。12日正午には79.1℃まで上がって、80℃目前になっています。80℃が目安になっているのは「冷温停止状態」見極めの条件だからです。
 東電はなんとしても80℃を超させないように、この際汚染水の増加に目をつむって、がんがん注水しています。東電は現在毎時15トンも入れています。もし原子炉に穴が開いていなければ4日で満タンになるほどの量ですが、ダダ漏れなので格納容器へ、さらに建屋地下へと漏れていき汚染水となって溜まっていきます。汚染水のさらなる増加というジレンマがあるにもかかわらず、とにかく水を入れるしか方法がないのです。原子炉建屋内溜まり水の水位も6日以降わずかに上昇しています(+94mm)。
 東電は記者会見の中で、問題の温度計の「トラブル」の可能性にも言及しました。80℃超えを目前に「故障」説をほのめかすのは、どうもあやしい動きです。まさか、80℃超えたとたんに「故障」するなんてことは無いと思いますが・・・。また、この温度計だけが高くなっても「全体としては安定」として「冷温停止状態」の判断には「ただちに影響ない」とまで言っています。
 高い温度を示している温度計が故障というならば、低い温度を出している方の2つの温度計が故障している可能性はないのでしょうか。もし、正しいデータが採れないのであれば、原子炉内の状態がまったく分からないということです。にもかかわらず「冷温停止状態」とよく言えるものです。もはや、状況が言葉を決めるのではなく、言葉が状況を決めています。

2号機 温度計の1つ上昇傾向続く(NHK2/12 12:12)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120212/t10015962191000.html

東電2/12午前の定例記者会見
http://www.tepco.co.jp/tepconews/library/movie-01j.html

<<追記>>ついに80℃を超えました。現在毎時17トン注水中。原子炉が1日で満タンになるほどの量(NHKニュース) 毎日新聞(2/12、18:05) http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120213k0000m040002000c.html