2号機温度上昇~まやかしの「冷温停止状態」2012/02/07 20:52

2号機温度上昇
 2号機の原子炉内部の温度が上昇しています。政府が「冷温停止状態」の目安にしている原子炉圧力容器底部の温度が、1週間で20℃も上がりました。2/7朝には72℃まで達しています。もし80℃(誤差20℃として100℃相当)を超えれば、政府が勝手に決めた「冷温停止状態」が自壊します。少なくとも政府自らが拠り所とする温度条件が崩れ去ります。
 いったいどうして温度上昇が起こったのでしょう。東電は「注水の流れに変化が生じ、うまく燃料に当たっていない」と言っています。どういうことでしょう。ものは言いようです。注水の流れが変わったのではなくて、燃料の位置が変わったために、うまく当たらなくなった・・・というのが本当のところでしょう。
 2号機の燃料はメルトダウンしてその多くが圧力容器底部に溜まっています(一部はメルトスルーして格納容器床に落ちています)が、まだ炉心部分にも一部の燃料が引っ掛かって残っていると見られています(東電想定)。それらに水をかけてかろうじて冷やし続けています。
 現在炉内の冷却は側面からの給水配管と非常用炉心スプレーの2系統で行っていますが、東電は1/26にスプレー系給水配管の交換作業で6時間炉心スプレーの給水をストップしました。ここからは推測ですが・・・その時、水がかからなくなった部分ができて、そこの燃料が発熱し再び融けて動いてしまった。あるいは発熱で割れたり崩れたりして動いてしまった。再び注水してもそこにはうまく当たらない。底部の温度計近くにこの燃料が動いて近づいた。そのため温度が上昇した。・・・おそらく、これが想定される炉内状況です。
 今回は、万一の「臨界」を防ぐためのホウ酸水も注入されています。燃料が融けて形が変わった時に瞬間的に臨界量に達して核分裂連鎖反応が起こる危険があるからです。とても、安定にはほど遠いのが現実です。
 「冷温停止状態」という言葉からは「冷えて固まっている」というようなイメージを人々に与えます。それは人をダマすための言葉です。ところが実態は未だに「融けて流れる」状態なのです。「燃料の位置が変わった(=融けた)」などと言えないものだから「水の流れが変わった」などとおかしなことを言っているのです。
 藤村官房長官は「70℃を超えたのは3つある温度計のうち1つだけだから問題なし」などと寝ぼけたことを言っています。しかもマスコミはそれを無批判に流しています。圧力容器底部にある3つの温度計は互いに数メートル離れています。水に接しているか燃料に接しているかも分かりません。内部の温度分布はおそらく相当なバラつきがあるはずで、実際は70℃よりもっと高い点も存在しているはずです。温度のサンプリングのようなものですから、鵜呑みにしてはいけません。確実に言えるのは実際より高い数値が出ることだけはないということです。
 さらに付け加えれば、圧力容器の下にある制御棒ケーシング上部の温度計が1/12から100℃を超えています。機器故障と言っていましたが、今では高温安定しています。この原因も解明されていません。溶融燃料がケーシングを伝わって流れ落ちているのかもしれません。直接的接触のため温度計が激しく上下したのかもしれません。
 人々をあざむく「冷温停止状態」なる言葉を撤回し、いまだにどうにもならない不安定な状態であることを素直に認めるべきです。「冷温停止状態」を宣伝しているマスコミも同罪です。きちんと正しく報道してください。

福島第1原発事故 2号機、一時70度超 冷却水配管交換が原因か(毎日新聞2/7)
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20120207ddm002040074000c.html

2号機 温度に関するパラメータ(東電資料2/6)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/images/12020612_temp_data_2u-j.pdf

福島第1原発2号機温度計の一つが100度超え 計器不良か(産経ニュース1/14)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120113/dst12011314440010-n1.htm

(追記)NHKかぶんブログの解説(2/7)
http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/600/108553.html

小出裕章/たねまきジャーナル(2/6)
http://hiroakikoide.wordpress.com/2012/02/07/tanemaki-2012feb6/