黒い雨の真実〜ICRPモデルの崩壊 ― 2012/01/21 08:24
1/20、厚労省の通称「黒い雨」検討会(「 原爆体験者等健康意識調査報告書」等に関する検討会)で 「黒い雨が降った地域の特定は困難」との報告がまとめられました。広島市が独自の調査にもとづいて黒い雨の降雨地域の認定と被曝者の救済範囲の拡大を国に求めていたものに対する国の答えがこれです。これもまた科学をタテに被曝者を切り捨てる国の姿勢を表しています。今、広島長崎の原爆被曝影響評価の再検討が叫ばれています。これまで不当に過小評価されている疑いがあるからです。「黒い雨」の調査は非常に重要です。ICRP国際基準を根底から覆すことになるからです。
66年前、原爆投下後の広島に「黒い雨」が降ったことは良く知られています。爆心地から遠く離れた、爆風や熱線、爆発時の放射線照射をまったく受けなかった地域にも広がって広範囲に降り注いでいます。黒い雨は大量の放射性降下物を含んだ雨です。フォールアウトによる放射能汚染と残留放射能による被曝、そして内部被ばくという問題は、原発事故の場合と同じです。
ところが、戦後、日米政府の原爆影響調査では、この黒い雨の存在と影響は長らく無視されてきました。旧ABCC(現放影研)が集めた被爆者のデータは、爆心からの直線距離を基本に推定した被曝量をもとに影響を評価して被曝リスクの算定を行っています。これが現在の被曝リスク評価の国際基準(ICRPモデル)のもとになっています。
疫学調査を行う時には、被曝した人たち(被曝群)と被曝していない人たち(対照群)に分けて、寿命や発病率を比較します。ABCCは被曝していない対照群を爆心から2.5キロメートルより外側の住民として調査しました。2.5キロ以遠は被曝ゼロとされているのです。最大30キロ以上遠くまで降った黒い雨による二次被曝やましてや内部被曝などの影響を受けている人たちを含む対照群と被曝群を比較しても正しいリスク評価はできません。この評価では、線量当たりのリスクが低く出る上に、低線量では統計的に証明できなくなってしまいます。
最近、リスク評価の見直しを迫る研究成果も出ています。(名古屋大学の宮尾克教授ら2008 「広島の初期放射線低線量被爆者は高い発がんリスクを示した」)それは、広島、岡山両県の住民で原爆投下時に零歳から34歳だった非被爆者約194万人と、広島での被爆者約5万8000人のデータを比較したものです。被爆者を被曝線量によって極低線量(0.005シーベルト未満)、低線量(0.005~0.1シーベルト未満)、高線量(0.1シーベルト以上)に区分して各種がん死亡率を非被曝者のものと比較した結果、極低、低線量の被曝者は非被曝者よりも固形がんで1.2から1.3倍、肝がんでは1.7から2.7倍、子宮がんは1.8から2倍高かった。というものです。
さらに昨年12月には、放影研が黒い雨のデータを隠しもっていたことが公表されました。(下記リンク)
このような研究成果を反映させるなら、現在ICRPが勧告している国際基準は大幅に見直さなければなりません。実は、このような研究はこれまでもたくさんあるのですが無視されています。戦後原爆被曝データを独占した核大国アメリカとそれに協力した日本の政府は政治的に放射線リスクを過小評価してきました。今後福島原発事故による被曝リスクを正しく評価するためには、前提条件の見直しが必要です。政治や経済に左右されない純粋に科学的なモノサシはどこにあるのでしょう。
放影研「黒い雨」データ まずは公開し解析急げ(中国新聞社説11年/12/14)旧ABCCの放影研が黒い雨データを隠していました。
(長崎放送ニュース)
広島原爆“黒い雨”にともなう放射線降下物に関する研究の現状(星正治、今中哲二他2010)
黒い雨 明らかになった新事実(1/20、21放送NHK広島)中国地方のみなので見ることができませんが、ぜひ全国放送を望みます。NHKでは1986年にも「黒い雨」を特集しています。
66年前、原爆投下後の広島に「黒い雨」が降ったことは良く知られています。爆心地から遠く離れた、爆風や熱線、爆発時の放射線照射をまったく受けなかった地域にも広がって広範囲に降り注いでいます。黒い雨は大量の放射性降下物を含んだ雨です。フォールアウトによる放射能汚染と残留放射能による被曝、そして内部被ばくという問題は、原発事故の場合と同じです。
ところが、戦後、日米政府の原爆影響調査では、この黒い雨の存在と影響は長らく無視されてきました。旧ABCC(現放影研)が集めた被爆者のデータは、爆心からの直線距離を基本に推定した被曝量をもとに影響を評価して被曝リスクの算定を行っています。これが現在の被曝リスク評価の国際基準(ICRPモデル)のもとになっています。
疫学調査を行う時には、被曝した人たち(被曝群)と被曝していない人たち(対照群)に分けて、寿命や発病率を比較します。ABCCは被曝していない対照群を爆心から2.5キロメートルより外側の住民として調査しました。2.5キロ以遠は被曝ゼロとされているのです。最大30キロ以上遠くまで降った黒い雨による二次被曝やましてや内部被曝などの影響を受けている人たちを含む対照群と被曝群を比較しても正しいリスク評価はできません。この評価では、線量当たりのリスクが低く出る上に、低線量では統計的に証明できなくなってしまいます。
最近、リスク評価の見直しを迫る研究成果も出ています。(名古屋大学の宮尾克教授ら2008 「広島の初期放射線低線量被爆者は高い発がんリスクを示した」)それは、広島、岡山両県の住民で原爆投下時に零歳から34歳だった非被爆者約194万人と、広島での被爆者約5万8000人のデータを比較したものです。被爆者を被曝線量によって極低線量(0.005シーベルト未満)、低線量(0.005~0.1シーベルト未満)、高線量(0.1シーベルト以上)に区分して各種がん死亡率を非被曝者のものと比較した結果、極低、低線量の被曝者は非被曝者よりも固形がんで1.2から1.3倍、肝がんでは1.7から2.7倍、子宮がんは1.8から2倍高かった。というものです。
さらに昨年12月には、放影研が黒い雨のデータを隠しもっていたことが公表されました。(下記リンク)
このような研究成果を反映させるなら、現在ICRPが勧告している国際基準は大幅に見直さなければなりません。実は、このような研究はこれまでもたくさんあるのですが無視されています。戦後原爆被曝データを独占した核大国アメリカとそれに協力した日本の政府は政治的に放射線リスクを過小評価してきました。今後福島原発事故による被曝リスクを正しく評価するためには、前提条件の見直しが必要です。政治や経済に左右されない純粋に科学的なモノサシはどこにあるのでしょう。
放影研「黒い雨」データ まずは公開し解析急げ(中国新聞社説11年/12/14)旧ABCCの放影研が黒い雨データを隠していました。
(長崎放送ニュース)
広島原爆“黒い雨”にともなう放射線降下物に関する研究の現状(星正治、今中哲二他2010)
黒い雨 明らかになった新事実(1/20、21放送NHK広島)中国地方のみなので見ることができませんが、ぜひ全国放送を望みます。NHKでは1986年にも「黒い雨」を特集しています。
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