水素はどうなっているのか?〜窒素注入停止トラブル2012/04/04 19:20

ガス管理システム
 今日、福島第一原発で1〜3号機原子炉に窒素ガスを注入しているポンプが、2時間40分にわたって停止し、窒素ガスを送り込めなくなるというトラブルが発生しました。政府の「冷温停止状態」宣言にもかかわらず、原子炉では未だに危険な水素ガスの発生が続いているということです。
 今回のトラブルの原因を東電は、強風によって砂塵が舞い上がりフィルターが詰まったためと発表しました。現場が注入量ゼロに気づいたのは停止から1時間も後でしたが、水素が危険濃度に達するまで30〜50時間余裕があるから大丈夫などと言っています。  問題点は二つあります。一つは未だに水素ガスが発生しているということ。もう一つは原子炉からのガス漏れはどうなっているのかということです。
 まず、水素ガスの発生ですが、その原因は一体なんでしょう。事故初期には高温のジルコニウムが水を分解して大量の水素ガスを発生させました。今でもこの反応が起こるとすれば、酸化していないジルコニウムがあって900℃以上の高温状態になっていることになります。もう一つの発生原因としては、強力な放射線による水の分解反応があります。特にアルファ線や中性子線は強く作用します。これによって今でも水素ガスが発生し続けていると考えられます。去年秋に格納容器につながる配管で高濃度の水素ガスが見つかった時には、ガス管理システムの稼働によってたまたま流れが変わったためとか言っていました。その後、新たな水素ガス発生については何も言っていなかったと記憶しています(水素ガス検出値データについては現在確認中)。どうも、水素発生については東電もウヤムヤにして、マスコミも注目していなかったような気がします。温度の方に目が向いていました。
 もうひとつ、ガス漏れについてですが、水がダダ漏れしているのと同様ガスもスカスカに漏れています。水よりもっと出易いはずですし、漏れてもまったくわかりません。そもそも窒素ガスを入れるのは水素濃度を下げるためですが、要するに窒素で薄めて出しているということです。東電データによると、窒素ガス注入量は1号機で毎時23立方メートルでした(4/4、5am)。これはかなりの量です。1号機の原子炉格納容器の内部空間の容積が7400立方メートルですから、2週間も入れ続ければ格納容器の容積と同じ量になります。これだけ入れ続けても内部の圧力ははとんど大気圧と変わりません(1066hPa4/3、標準大気圧が1013hPa)。つまり、入れた量と同じだけ抜けています。東電は「ガス管理システム」なるものを作って格納容器からガスを積極的に排気していますので、理屈の上では、窒素注入→ガス管理システム→大気放出、となっている訳です。曲がりなりにも「循環」と言っている水と違って、まったくワンスルーです。放射性物質の99%回収と言っていますが、残りの1%でも膨大な量です。東電は、これらのガスの最終的に大気への放出量を公表していないようです(未確認)。あるいは把握していないのかもしれません。
 実は、窒素ガス注入は「ガス管理システム」とセットになっています。穴だらけの原子炉から放射性ガスが四方八方漏れ出ることを最小限にするため、一発大きな「穴」から放射性ガスを吸い出そうというのが「ガス管理システム」です。吸い出しと釣り合う形で窒素注入が必要になります。今まで、水の流ればかりが注目されてきましたが、ガスの流れも重要です。炉内で異常事態が起これば、まずまっ先に「ガス管理システム」を破って気体が放出されます(ベント)。
 「収束」などとんでもありません。危険な水素は発生しているし、ガスも漏れ漏れ状態の原子炉、いったいどこが「冷温停止」しているのでしょう。

(水素ガス濃度、ガス管理システムに関するパラメータは今探しています)

福島第1原発:強風でフィルター詰まる 窒素注入装置停止(毎日新聞4/4)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20120405k0000m040060000c.html

ガス管理システム(東電)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_111027_01-j.pdf