社説を読み比べる~再稼働問題〜2012/03/25 09:12

 3/23(金)、原子力安全委員会が大飯原発ストレステスト1次評価を「妥当・了承」としたことを受けて、原発再稼働へ向けたステップが最終段階を迎えています。そこで、各新聞メディアがどういう態度を取っているのか、その主張を比べてみました。
 大新聞は24、25日一斉に社説や主張などオピニオン欄で再稼働問題を取り上げました。それぞれあえて一言で言うなら、読売、産経は「早く再稼働しろ」、日経は「再稼働は必要」、毎日は「現段階では無理」、朝日は「限定的再稼働」(今のところ沈黙なので2/27の記事より)、さらに、地方紙で東京新聞は「再稼働の根拠なし」。このように大きく割れています。

各社主張の要点

読売新聞3/24「「原発検査」了承 政治が決断し再稼働を目指せ」
 読売の立場ははっきりしています。グズグズしてないでさっさと再稼働せよ!ということ。安全委員会が"合格"を出して、技術的検討は終わった!とまで言っています。まるで、安全委員会の検証結果を読まずに、用意してあった社説記事をさっさと載せたようです。さすが読売。

産經新聞3/24「大飯原発 再稼働へ首相が動く番だ」
 あまりにも酷い、これが大新聞の文章でしょうか、夕刊紙か週刊誌のような内容に驚き呆れます。「次は国家再生のための政治決断である」「現在の困難な状況は、菅直人前首相による場当たり的なストレステストの導入に起因している」・・・ストレステスト自体を否定、とにかく動かせ!それが「国家再生」とまで言い切る脳天気ぶりに呆れます。

日本経済新聞3/24
「耐性調査踏まえ原発再稼働へ判断を」
 基本的には再稼働せよという立場ですが、日経らしく「電力安定供給」「エネルギー安全保障」のために必要という論調です。

毎日新聞3/25 「原発再稼働 前のめりは不信を招く 」
 政府の姿勢を「前のめり」と批判、事故の検証も終わっていない段階では時期尚早と、このまま再稼働することのに反対の立場をとっています。

東京新聞3/22「原発の再稼働 安全の根拠はどこに」
 東京新聞は安全委員会の前日に社説を掲載しました。つまり委員会が何を言おうと、すでに前提がおかしいという認識に立っています。産経とは逆の立場でストレステストを批判しています。もし再稼働の可否を審査するなら、事故調査報告を待ち、新たな規制機関が、明白な科学的根拠に基づき判断するまで待て!と主張しています。東京新聞びいきで言う訳ではありませんが、もっとも論理的で筋の通った格調高い文章だと思います。読売産経と比べて上品すぎますが。

朝日新聞2/27「原発の再稼働 需給見通しの精査が先だ」
 朝日新聞にはわかりにくい面があります。一見、再稼働に反対しているようなポーズで「本当に必要な数だけしか動かさない」への転換を提案したりしています。ポーズを取りながら主張はあいまいという朝日新聞は曲者です。このタイミングで再稼働問題でオピニオンを掲載してないのは朝日だけです。今日(3/25)の社説は「核テロ防止―原発事故も教訓に」でした。ソウルでの核サミットに合わせたのでしょうが、核にからめて核心から注意をそらす作戦かと疑ってしまいます。


◆各社の記事をご覧下さい。
「原発検査」了承 政治が決断し再稼働を目指せ(読売新聞3/24)

大飯原発 再稼働へ首相が動く番だ(産經新聞3/24)

耐性調査踏まえ原発再稼働へ判断を (日本経済新聞3/24)

原発再稼働 前のめりは不信を招く(毎日新聞3/25)

原発の再稼働 需給見通しの精査が先だ(朝日新聞2/27)

原発の再稼働 安全の根拠はどこに(東京新聞3/22)


(追記)3/27、朝日新聞が再稼働問題で社説を掲載しました。
「原発再稼働―なぜ、結論を急ぐのか」
タイトル通り、再稼働の結論はまだ早い、ということ。今すぐ再稼働することには反対ですが、ここでも「まず電力需給を精査」との主張を繰り返しています。電力危機に絡めるところに危うさを感じます。

大阪市「原発住民投票条例」否決!〜橋下市長と「脱原発」2012/03/29 19:35

橋下徹大阪市長
 3/27大阪市議会で、市民の直接請求による「原発住民投票条例案」が、議会多数によってあっさり否決されました。橋下大阪市長は「脱原発」と叫んでいますが、この条例案には「反対」意見を付けていました。議会では大阪維新の会、公明、自民、みらい(民主)がそろって反対、賛成は共産だけでした。今回は橋下徹と原発について考えてみたいと思います。
 もし、橋下市長が民意によって行動する政治家で、ましてや「脱原発」という考えを持っているなら、なぜ、原発の是非を問う住民投票に反対するのでしょう。橋下市長は住民投票に反対する理由を4つあげました。①投票しても関電に対する拘束力がない、②市長選挙ですでに民意が示されている、③単に原発の是非を問うだけに多額の費用がかかる、④株主提案によって関電に脱原発依存を求める。だから、住民投票は必要ないと言っています。
 これに対する反論です。
①このような形式論はかつて裁判所がよく使いました。原告適格とか。さすが弁護士だと思います。それでは、大阪都構想などはどうなんだと言いたくなります。大阪市に地方自治法を改正する権限はないのですから。それに、住民投票による民意が示されれば、企業だってそれを無視できるはずがありません。ましてや、電力会社の社会的責任は重いのですから。
②原発問題は市長選挙の争点にはなっていません。平松前市長も脱原発の立場でした。これまで大阪市民には原発に関する民意を問われた覚えも示した覚えもないはずです。選挙で勝つ=自分が民意、という錯覚か思い上がり以外の何ものでもありません。まさに、おごりです。
③「5億円もかかる」というわかりやすい話が流布しています。いかにもマスコミ受けしそうな話です。コスト論が得意の橋下市長らしい話です。では、20億円もかけて御堂筋をイルミネーションでキラキラさせて電気をたくさん使ったのはいったいどこの誰でしょう。あまり、品のない話で恐縮です。この話、民主主義のコストを否定するようで納得がいきません。
④大阪市は関西電力の8.9%を所有する筆頭株主です。今年の株主総会で「全原発廃止」へ向けた株主提案を行うと言っています。これはかなりの話題になるでしょうが、株主総会で実際に可決される可能性は極めて低いでしょう。「脱原発」のために自ら頑張るのは良いことですが、だから、住民投票はいらないという理由にはなりません。
 私は、今回のことで、彼の「脱原発」を疑います。橋下流のやり方で行けば、得意のアジテーションで「脱原発」世論を誘導し、トドメの住民投票で一気に多数を取って完璧に勝つこともできるはずです。株主総会などよりよっぽど勝つ可能性が高いことです。しかし、あえて株主総会という「負ける」勝負に挑むところに彼の計算があります。「関電=悪」そしてそれと闘う「オレ=ヒーロー」という、わかりやすいパフォーマンスを見せたいのではないでしょうか。彼は派手な喧嘩パフォーマンスで喝采をあび支持を拡大してきた政治家です。彼の真の目的は「脱原発」ではなく「権力」のような気がしてなりません。
 橋下氏は世の不平不満をぬえのように吸収し、人々が自分に何かを期待してくれるように仕向けています。例えは悪いかもしれませんが、ヒトラーもそうして独裁者になりました。私は、橋下徹氏の政治姿勢に危うさを感じています。それと同時に、彼を支持する大勢の人々にも危うさを感じます。橋下が何かを変えてくれると漠然と期待しています。そして、とにかく強い指導者を求めています。ある意味これは民主主義の危機です。
 先日の講演会で聞いた小出裕章氏の言葉を思い出しました。「そもそも誰かに何かを期待する、誰かに指導してもらう、誰かをカリスマにしてしまう、そういう考え方が間違っています。」「そう思ったらそう思った人がやってください。これは自分が得意だ。これなら自分にできる。そういうことを、一人一人が、やってください。」私たちは、いいかげん、人任せの政治から抜け出さないと、世の中は何一つ変わらないのではないかと思います。そのための、一つの取り組みとして、原発住民投票とか国民投票があるのです。
 みんなで決めよう「原発国民投票」運動には、私も賛同しています。今こそ、原発について、一人一人が、よく考え、判断して、意思表示する時です。さあ、次は東京都です。34万署名に石原都知事は、都議会はどう答えるか。5/10に本請求され6月議会にかけられます。

参考リンク
・以下で、大阪市会本会議の録画が見られます。橋下市長の説明が10分、請求者5人の意見陳述が20分位です。市民の意見陳述も良かったです。
「関西電力管内の原子力発電所の稼働に関する大阪市民投票条例の制定について」市長説明と請求者意見陳述
http://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu260/live/session.html

・ここから条例案が見られます。
みんなで決めよう大阪市「原発」市民投票ホームページ
http://kokumintohyo.com/osaka/

・新聞記事「大阪市の原発住民投票条例案否決 維新・自公など反対」(朝日新聞大阪版3/28)
http://kokumintohyo.com/osaka/wp-content/uploads/2012/03/20120328news.pdf