3号機も津波前に壊れていた?!2011/12/29 17:29

東電の高圧注水系機能検査用資料より
 東京電力はすべてを「津波」のせいにしようとしています。事故調査・検証委員会はすべてを「人」のせいにしようとしているようです。しかし、「原発」という巨大システム自体に問題は潜んでないのでしょうか。
 3号機の非常用冷却システムの問題がここにきてクローズアップされています。3号機については、東電がメルトダウンを認めた翌日 5/25の朝日新聞が「冷却配管、地震で破損か 福島第一原発3号機、耐震性に問題」と報じていました。つまり、非常用冷却システムである高圧注水系(HPCI)が作動したあと原子炉内の圧力が急減したのは、HPCI系の配管のどこかが破断していて冷却水が抜けたためではないかというものです。1号機の非常用復水器(IC)と同様、地震によって重要機器が破損していたのではないかという疑いです。
 問題は何かと言うことを整理しておきましょう。3号機は地震で自動停止したのち20分ほどでまず原子炉隔離時冷却系(RCIC)を起動しました。これは高温の原子炉で発生した蒸気の利用してタービンを回しポンプを駆動させて原子炉に水を送り込むシステムです。起動後20分でこのシステムは自動停止。原子炉水位が上がったためです。この後、津波で電源喪失したため、再びRCICを起動して原子炉の冷却を行っていました。ところが、3/12のお昼前にRCICがトラブルで停止し使えなくなりました。その1時間後、原子炉水位低下のため高圧注水系(HPCI)が自動起動しました。すると、その後6時間ほどで原子炉内圧力が75気圧から10気圧まで急激に下がりました。そして、3/13深夜3時前、運転員が手動でHPCIを止めたのです。結局、この時点ですべての冷却手段を喪失して原子炉の空焚きへと向かったのです。
 当初は、HPCIは自動で止まったのち起動できなかったと言っていました。しかし、運転員が手動で止めたことがわかって、今度はなぜ止めたのかということが問題になっていました。状況から、原子炉の急減圧は冷却水漏れではないかと疑った運転員がHPCIを止めたのではないかという疑惑が浮上していました。
 東電は12/22に改めて 事故報告書(初動対応に付いて)を公表しました。その中で東電は、HPCIを止めたのは運転員が「機器の損傷を恐れて停止した」ためと言っています。
 12/25に公表された 事故調査・検証委員会の中間報告でも、ほぼ東電の状況説明をそのまま受け入れた上で、代替冷却手段が確保されない状況で運転員がHPCIを止めたのは、決定的な操作判断ミスで、しかも吉田所長等の指示なしで独断でやったと批判しています。しかし、圧力急減の原因と配管破断の可能性については何ら検証していません。配管破断に関しては、当時HPCI室へ行った作業員が蒸気漏れ等を目視していないとの証言だけで、破断はなかったと結論づけています。結局、責任をその運転員一人になすり付けているようにも見えます。
 1号機の非常用復水器(IC)の問題には多くのページを割いているのに比べて、3号機のHPCI問題に関してはあまりにもあっさり「破断なし」と結論づけているところが、かえって不思議です。小出裕章氏は ”たね蒔きジャーナル”で、「高圧注水系の配管が破断したために作業員が注水をやめたのではないか」という疑いを述べています。
 HPCI室は建屋の下の階、サプレッションプール(圧力抑制室)の脇にあります。放射能レベルが高くてもはや実地検証することは不可能でしょう。配管を調べることもせずに、簡単に破断はなかったと結論づけるところにかえって疑念をいだかざるを得ません。考えてみれば被曝問題と同じです。証明できないことは存在しないのです。破断が証明できないから破断はなかったと言いたいようです。
 原発自体の技術的問題をきっちり検証することなしに事故原因の究明はあり得ません。他の原発への波及を恐れて技術的問題を意図的に避けているようにも見えます。調べないということも隠蔽と同じです。
 地震で壊れる原発が日本に存在していいはずがありません!しっかり確認して下さい。確認できないなら、原発を動かしてはいけません。

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