ものすごい熱気に包まれた「原発・公開研」2011/03/30 00:34

公開研究会
 仕事を終えて急いで電車に乗りお茶の水の総評会館に行くと、なんだか近づくにしたがって人が多いような気がしました。自然と急ぎ足で会場に入ると、なんと広い会場が人で一杯!一番後ろに1席確保したものの前が見えず壁際立ち見に移動、ところがあとからあとから人が入って、ついに満員電車のようになってしまいました。友人二人を見つけたのですが近寄ることもできません。ロックコンサートのように最初から最後まで3時間近く立ち見のままスクリーンを見ながら声だけを聞いていました。本当にすごい熱気です。というか何か切羽詰まったような思い詰めたような雰囲気が会場に漂っていました。本当に危機感と関心の高さを物語っています。
 原子力資料情報室主催の緊急公開研究会「福島原発で今何が起きているのか」。お話は、元原子炉設計技術者の後藤政志さん。格納容器が専門。このような理論と現場を両方知っている技術者の話はとても貴重です。テレビに出てくる(御用)学者先生とは違います。後藤さんは、極めて限られた情報の中で、現在原子炉がどういう状態になっているかということを丁寧に分析し、過小でも過大でもなく冷静に語っていました。現実の怖さがひしひしと伝わってきます。テレビでいつもおなじみの圧力容器、格納容器の図はあたかも密閉されているようですが、実際は様々な配管やケーブル、ハッチやふたがそこいら中にあって、ゴムのパッキンで塞いでいるというような話を聞けば、それじゃ隙間だらけ?というような疑問が素人でも浮かんできます。実際、設計限界を超えた熱や圧力でゴムが破れているのでは指摘しています。また、原発の設計思想に、ある事故の発生確率を計算したら1万年に1回だからそんなことは起こらないとしてしまう。それは、1万のうち1発玉の入った拳銃の引き金を引く「ロシアンルーレット」、次に出るかもしれないとは考えませんか。という言葉がとても印象的でした。
 今、最悪の事態を食い止めるためにどうしたら良いか、簡単な答えはありません。国はデータも根拠も示さずただ安心しろと言っているような状態です。まず今一番必要なのは、きちんと全てのデータを公開すること。分かっていることは全部出すことです。それなくして叡智は結集できません。
 残念なのは、このような市民の動きをどこのマスコミも取り上げてくれないことです。会場で見かけたメディアは海外のクルーだけでした。私は多くの人にこの現実を知ってほしいと思います。内容は全て原子力資料情報室のビデオで見ることができます。
http://www.ustream.tv/recorded/13639359
http://www.ustream.tv/recorded/13639576
http://www.ustream.tv/recorded/13640552

 会場を出るとそこには一見いつもと何も変わらない日常が広がっていました。この原発危機以来、街の明かりが違って見えます。この東京の電気を作るために福島の原発があったのだということを忘れてはなりません。柏崎の原発だってそうです。電気の利益を受けている人たちが何のリスクをも払わず、事故が起きれば犠牲を強いられるのは遠く離れた田舎の人たちというのはどこか間違っていないでしょうか。停電におびえて原発を容認するようなことがあってはなりません。それは危険と犠牲の押しつけをいつまでも続けることですから。

海から放射能・・・その12011/03/30 20:14

 私は北関東の海なし県で育ちましたので、大きくなるまでほとんど海を見たことがありませんでした。私にとって海辺の街の大学に進んだのが海との出会いです。大学では海洋生物学を専攻し人里離れた臨海実験所に所属、毎日魚を追いかけていました。漁船にもよく乗せてもらいました。海の美しさ、広さ、深さ、大きさ、そして豊かさにふれることができました。それ以来海が大好きで、魚が大好きで、特に食べるのが大好きです。お陰でたいていの魚はおろすことができます。今はまた海なし県に戻ってしまいましたので、現在の楽しみは食べることだけです。
 今回の大津波では海の脅威をまざまざと見せつけられました。海が盛り上がり全てを飲み込んだ自然のとてつもない大きな力に驚きおののき声もでません。多くの方々が被災しましたが、漁師の皆さんのことが特に気がかりです。各地の漁港は壊滅状態で船も奪われ生活の手段をまったく奪われています。ニュースでは漁師を辞める人も増えるだろうとのことです。私は大漁の時の漁師の喜びの満ちた顔を今思い出しとても残念です。全てを飲み込む恐怖の海ですが、同時に豊かな恵みをもたらす豊穣の海でもあります。海を見て一日も早く漁に出たいという漁師の言葉にガンバレと心から応援したい。
 とても気になる悪いニュースがあります。「海から放射能!」今日の情報では福島第1原発排水口より330m付近の海水から1立方センチ当たり130ベクレルのヨウ素131を検出と発表されました。これは海水の基準値の3355倍に当たる高濃度。またぞろ海は広いから大丈夫などとバカなこと言っている専門家がいます。まさか3355倍に薄めれば基準値クリアーなどと机上の計算をしているのではと疑いたくなります。きちんとものを言うには、海に流出した放射性物質の種類と量、さらには降下物として海に入った放射性物質などできる限り把握する必要があります。海水の採取観測をもっと広範囲で行い実際のデータを集めなければなりません。さらに、潮流や海流の状況、水深や攪拌の程度などに基づいて拡散予測を出さなければなりません。そして魚介類を採取して放射能を計測しなければなりません。さらには今後は長期にわたって食物連鎖に伴う生物濃縮についても監視していかなければなりません。長々言いましたが、「大丈夫」と言う前に学者としてはやらなければならないことが山ほどあるのです。正確な情報こそ「風評被害」を防ぐ基本です。確かめたうえで「安全」と言うべきだし、分からないことは分からないというしかありません。いい加減なことを言うから「風評」がたつのです。
 やっと海に出た漁師を待っていたのが放射能では余りにも悲惨です。私たちも美味しい魚を食べ続けていたい。海については続編を書きたいと思います(生物濃縮について)。なお、上の写真は娘が撮った海にスナップ。

 水産物の放射能検査結果(千葉県) http://www.pref.chiba.lg.jp/suisan/h23touhoku/index.html
 水畜産物の放射能検査結果(神奈川県) http://www.pref.kanagawa.jp/prs/p168742.html
 これは日本近海の海流を表しています。海上保安庁・海流図 http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/2011cal/cu0/qboc2011059cu0.html

>>コメントありがとうございました。どちらも読ませていただきました。ネット情報の難しさですね。 (4/1)