原発と電気料金2011/06/15 20:12

「全原発停止なら…家庭の電気代1千円アップと試算」
この記事を読んで、あなたはどう思いますか?
 ここにきて、カネの話が浮上してきました。原発停止分を火力で補うために、石油や石炭や天然ガスなどを買わなければならないのでその分お金がかかります・・というもっともらしい話です。全国で年間3兆円以上といいます。日本の場合、燃料費は自動的に電気代に跳ね返る仕組みですから、平均で月千円アップ!という話が出てくるわけです。

 いったい電気代はどうやって決められるのでしょう。資本主義社会では商品の価格は「市場原理」によって決まることは誰でもご存知だと思います。ところが、電気は違います。電力会社は独占企業ですから、消費者に選択の自由がありません。電気代は、かかった経費に一定の利潤を足して決められます。経営者の方なら、そんな希望通りに行くうまい話はないと思うでしょう。これを「総括原価」方式といいます。しかも。利潤はレートベースという総資産に何%という報酬率をかけて決められます。つまり、設備投資などをやればやるほど利潤も高く設定でき、要するにカネを使えば使うほど儲けられる仕組みになっているのです。
 これなら、電力会社にとって原発が一番儲かります。なぜなら、原発が一番お金がかかるからです。そうして、たくさんの原発が作られてきました。その結果、日本国民は最近まで世界一高い電気代を払わされてきました。

 さて、話を最初に戻します。なぜ、原発を止めて火力にすると電気代が上がるのでしょう。それもこんなに。もし、私が電車通勤を止めてクルマ通勤に変えたとします。ガソリン代などの出費が増えますが、電車の定期代は浮きます。差し引きでガソリンの方がかかるかもしれませんが、そっくりそのまま経費増なんてことはありません。ところが、原発の場合、やめてもお金がかかり続けるので浮かせる分がありません。いったいどうしてでしょう?
 原発の燃料は決して安くありません。まず、原発の燃料は他に使えません。石油や石炭、天然ガスなら他に回せますが、原発のウランは核燃料にしかなりません。しかも、何年も前から契約し、ウラン鉱石を掘ってから精錬・転換・濃縮・加工までの長い工程があるので、すでにずっと先の分までお金がかかっています。
 さらに、発電を止めた原子力発電所は今度は電気を食います。使用済みも含め核燃料はずっと冷やし続けなければなりません。そのために常に電気を必要とします。発電所なのに!
 これが一番お金のかかる話ですが、使用済み核燃料や廃棄物の処理コストは最終的に試算不能なくらい莫大です。日本では処理問題が未解決ですから最終的にどれくらいのカネがかかるかわかりません。この部分は原発のコスト計算から意図的に外されています。
 さらに、原発のために国家予算が毎年4500億円以上投入されています。これは私たちの税金から支出されています。
 このように、原発は止めてもお金がかかり続けます。

 話がまた逸れていきそうなので、最初に戻ります。3兆円増と言いますが、火力にかかったお金は電気に変わります。むしろ、3兆円の余分な負担増というのは電気を作らないのにかかっている原発の経費と考えるべきです。一度作ってしまった原発のおかげで、電気代はいつまでも高くつくのです。

 これまで原発は目先のコストだけを追ってきました。核廃棄物に関する将来コストはあまりに大きすぎます。それと今回の事故ではっきりわかりましたが、事故に伴うコストはあまりに莫大です。そういうコストに目をつぶり、目先の損得勘定で安いの高いのと踊らされてはいけません。今回の話は、「電力不足」と同じで、「電気代値上げ」という脅しです。今、政府はありとあらゆる手で原発存続の世論を作ろうと躍起になっています。

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