「34学会会長声明」に見る「御用学者」の影2011/05/05 23:35

 今、この原発危機の中で、科学者の果たすべき一番の使命は何でしょう?

 去る4月27日付けで、日本物理学会を初めとする34学会の会長連名で、今回の震災ならびに原発事故に関連して「声明」が出されました。私は、このことを研究者である友人から聞き、早速声明文を送ってもらい読ませていただきました。(声明文PDFファイル)

《要旨》
日本の科学の歩みを止めない
〜学会は学生・若手と共に希望ある日本の未来を築く〜
1. 学生・若手研究者が勉学・研究の歩みを止めず未来に希望を持つための徹底的支援を行います
2. 被災した大学施設、研究施設、大型科学研究施設の早期復旧復興および教育研究体制の 確立支援を行います
3. 国内および国際的な原発災害風評被害を無くすため海外学会とも協力して正確な情報 を発信します

 私は、この「声明」に深い失望と激しい怒りを禁じえません。一見もっともらしいことを言っていますが、要するに、若手研究者たちには「原発に悪いこと言ったら、支援しないよ」と脅かし、国に対しては「原発イメージ回復に協力するから、よろしく」と暗に言っているにすぎません。今、科学者たちが英知を結集してやらなければならないことは、まず、福島第1原発の放射能を止めることでしょう!研究の歩みを止めることを心配する前に、放射能を止める心配をしてほしい。もしかして、「原子力」の歩みが止まることを心配しているのかと勘ぐりたくもなります。(原子力関連学会もずらり名を連ねています)とくに「原発災害風評被害を無くすため・・・」の一節は、本当に情けない。まるで、騒ぎを鎮める火消し役を買って出ているようです。「風評被害」ではなくて、現実の「放射能被害」を無くすために頑張るのが、科学者本来の役目でしょう。私たちは、英知をもった科学者に期待しているのです。

 今、科学者が果たすべき最大の使命は、福島原発の放射能を完全に封じ込め、汚染された環境を元に戻すために、その英知を結集させることです。

 本当にがっかりです。この緊急時にこんな声明を出すようでは、「御用学者」と蔑まれても文句は言えません。

浜岡原発停止へ、さらに廃炉へ2011/05/07 06:47

浜岡原発(中電HPより)
 「お父さん、浜岡原発止まったね!」、「えっ、事故ったか?」私は一瞬青くなったのですが、菅首相が原発止めると聞いて、ああやっと明るい兆しも見えてきたと、少しだけうれしくなりました。最近、あまりテレビを見ていませんので、娘から電話をもらうまで夕べのことは知りませんでした。

 浜岡原発は、今「最も危険な原発」と指摘されていました。理由は言うまでもありません。「地震と津波」です。原発は、御前崎の近く、東海の砂浜に建っています。目の前には砂丘が広がっています。海岸には防潮堤や防波堤は元々ありません。福島原発事故を目の当たりにして、いくらなんでもそれはないだろうというのが、普通の人の見方です。もし、「今、東海地震が起きたら」と考えれば、夜も眠れなくて当たり前です。
 今回の、菅首相の判断は評価します。

 しかし、2年程度の停止期間中に安全対策を施すと言っているのが気になります。安全対策を免罪符に永続的運転に持って行くことは決して許してはなりません。もうこれ以上余計なことにお金をかけず、そのまま廃炉にしてしまうのがベストです。
(追記)運転を停止しても、核燃料を原発プール内で冷却し続けなければならないので、やはり地震津波対策は必要です。結局、原発を廃炉するにしても、使用済み核燃料や放射性廃棄物の最終処理まで考えれば、膨大な時間とコストがかかります。これまで、原発の発電コストからこういう費用を除外して、原発が安いなどというデマが作られています。しかも、事故を起こした時のリスクを考えたら、お金がいくらあっても足りないのが原発です。何とお金のかかることか!

とりあえず、浜岡原発に関するリンクをいくつか紹介します。
中部電力のホームページ(東電より格段に見やすい)
浜岡原発を考える静岡ネットワーク
浜岡原発、巨大地震対策虹のネットワーク
浜岡原発訴訟原告団(浜岡原発とめよう裁判の会)
声明 浜岡原発運転差し止め訴訟不当判決に抗議する(原子力資料情報室)
もし浜岡原発がレベル7になったら(友人提供)

「20ミリシーベルト撤回を!」署名呼びかけと、政府交渉の報告2011/05/08 22:57

 4/25ブログで紹介した「20ミリシーベルト撤回を!」緊急声明のその後について、呼びかけ人の満田さんよりメールを頂きましたので紹介します。
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 FoE Japanの満田です。20ミリシーベルト撤回に向けては、1,074団体および53,193人の連名を頂き、大変ありがとうございました。みなさまの声を後ろ盾にした政府交渉では、政府のさまざまな矛盾が浮き彫りになってきています。グリーン・アクション、グリーンピース・ジャパン、原子力資料情報室、フクロウの会、美浜の会、国際環境NGO FoE Japanでは、撤回に向け、さらに要請行動を強めていくべく、下記のように、署名活動、第2弾を開始いたしました。今回は、子どもたちの被ばく最小化にむけた要請も入れ、県内の取り組みも応援したいと思っています。
 私たちの声により、20ミリ、撤回させましょう!
 引き続き、皆様のご協力がいただければ幸いです。

 さらに多くの声を届けて、「20ミリシーベルト」を撤回させましょう。詳細は、このサイトをご覧ください。
子ども「20ミリシーベルト」基準の即時撤回および被ばく量の最小化のための措置を求める緊急要請
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以下、私が紹介する参考リンクです。
・「子どもたちを放射能から守れ政府交渉」OurPlanet-TV
「原子力安全委員会は20ミリシーベルトを認めていない」というミステリー、いったい誰が決めたのか?。
 ・江川紹子ジャーナル「『適切でない』と申し上げた」~”子どもにも20mSv/年”問題と放射線防護学の基礎
これも原子力安全委員会のミステリーです。
・20ミリシーベルトに抗議して辞任、小佐古参与が涙の辞意表明
小佐古敏荘はICRPの第4委員会(勧告担当)のメンバーでもあるというところがミステリーです。

このように、「20ミリシーベルト問題」は謎だらけ。

浜岡だけではない!次は伊方!2011/05/09 19:17

伊方原子力発電所(四国電力HPより)
 浜岡原発の全面停止を要請した菅首相には拍手を送ります。しかし、マスコミを含め周りから責められたあげく、たいした検討もせず他の原発は大丈夫と言ってしまいました。菅さん、ここは思い切って日本中のすべての原発をいったん止めて、徹底的な安全点検を行うくらいのことを断固やれば、福島の不手際も多少挽回できるのに・・・こういう中途半端なところが本当に残念です。

 さて、危ない原発は浜岡だけではありません。今回、浜岡を停止させる理屈から言えば、四国電力の伊方原子力発電所も危険極まりない原発です。その理由は、
1、今後30年以内で60%という発生確率で想定される南海地震の震源域に近い。今回の巨大地震のように、東海・東南海・南海が連動してM9クラスの超巨大地震の発生もありえる。
2、もともと、中央構造線という巨大活断層の真上に建っている。
3、設計時の地震・津波想定が非常に甘い。(最大2.6mの想定)
4、1号機は34年、2号機は29年経ち老朽化している(寿命は40年)。
5、3号機はプルサーマルでMOX燃料(プルトニウム混合)を使っている。

 地震が危険というなら、日本中の原発を止めましょう。危険度順では、次に止めるのは「伊方」です。

<関連リンク>
・伊方原発訴訟を忘れるな
このブログに紹介されている愛媛新聞の切り抜きは必見です。
・巨大断層近くなのに耐震ユルユル設計の四電「伊方原発」、南海地震で暴発の恐怖 My News Japan

<TV番組紹介>
・伊方原発の対岸の山口県上関町の原発建設計画をめぐるドキュメンタリーです。
 BS朝日、5月13日(金)25:30〜26:00(5月14日午前1:30〜2:00)
「奇跡の海」に原発計画…揺れる島人たちの思い。〜福島原発事故受けどうなる…上関原発建設〜

やはりメルトダウンしていた!2011/05/12 20:20

福島第1原発1号機の図面
 今日、驚くべき発表がありました。東電によると「1号機の炉心は、ほとんど空焚きになって、燃料の大部分は溶融し、一部は格納容器に漏れ出た」ということです。 (時事通信)これは、まさしく「メルトダウン」!、世界中を震撼させるニュースです。今頃になって、なぜ分かったと言うと「水位計を調整したら、水がなかったことが判明」したからだということです。一方、東電や国は温度計データから、冷却はできているとみて、原子炉は安定していると言っています。これだけ計器の異常が頻発しているのに、温度計は信じるのですね。 4/11に1号機の放射線量増加について書きましたが、この時も計器の故障ということで、結局それ以後現在まで1号機の 放射線量のデータが表示されていません。はっきり言って、今この瞬間も原子炉がどうなっているのか、まったく分かりません。(3号機では、 温度が上昇し続けています。)
 すでに1万トン以上の水を入れているのに、水がないとは、水はどこに?圧力容器はすでに穴だらけで水がたまらない。格納容器にもほとんど水がたまっていないようです。とすると、かなりが建屋内に漏れ出していることは結果からみて明らか。さらにその水はどこに行ったのか?水は低いところに流れて行き、低いところに溜まり、放っておけば最後は海に流出するしかありません。
 今日、枝野長官が謝りました。(産経)高濃度汚染水が、また海に流出していました。(これは3号機らしい)後から分かったと言っていますが、状況からして、注水を続ければ海に流出することは予想していたはずです。これまでの放射能拡散予測だって事前に予測しながら、国民には黙っていて、後から発表するということを繰り返しているので、信用できません。
 さらに、タイミングを合わせたように、フランスのアレバ社のニュースも入ってきました。 日テレニュースアレバは世界最大の原子力企業です。六ヶ所の再処理工場もアレバも技術を導入しています。サルコジ大統領直々にアレバの社長を伴って日本に飛んできたのは、汚染水処理プラントの売り込みだったのかもしれません。 (余談ですが、アレバの福島原発事故解説チャートはとても分かりやすい)

 毎日、ニュースが多すぎて、とても整理できません。しかし、物事には流れのようなものがあります。私たちにはよく分かりませんが、国や東電は相当「先」のことまで考えて、いろいろなことをやっているし、言っているのだと思います。いったい、どういう「先」を考えているのか、そこを明らかにしてほしい。