コメの放射能汚染問題(その1)2011/09/27 21:50

重ね合わせた土壌汚染マップ
 福島県二本松市産の新米予備検査で国の暫定規制値と同じ1キロ当たり500ベクレルの放射性セシウムが検出された問題について考えてみます。
「何かの間違いではないか」と稲作農家の間に動揺が広がったと伝えられています。丹誠込めてコメ作りをしてきた農家の気持ちは痛いほど分かります。しかし、このような汚染が起こることは当然予想されていました。
 コメをめぐる問題には多くの謎があります。
 県の4月の調査でこの農地近くの土壌から1キロ当たり4600ベクレルを超える値が検出されていました。国は5000ベクレルを超えた農地は稲の作付け制限をするとしていました。それは、コメの土壌から玄米への放射性セシウムの移行係数を0.1と算定し、暫定規制値500ベクレル以下になることを想定したからです。この予測からすれば4600ベクレル/kgの土壌から500ベクレル/kgのコメができたのは農水省の予想通りで驚くにあたりません。
 農産物の放射能汚染の元は農地の土壌汚染ですから、土壌がどれくらいの放射能で汚染されているかということが問題です。本来であれば農地の汚染実態を詳細に調べた上で、作付けの是非や除染対策などの見通しを立てるのがスジです。ところが、ここでも「風評被害」ばかりがクローズアップされ科学的調査とデータ公表が遅れました。コメが収穫される頃になって土壌汚染の実態が明らかになるようでは遅過ぎます。
 さて、この土壌汚染の実態ですが、2種類のデータが存在します。文科省のデータは「1平方メートル当たり」の濃度です。これに対して、農水省のデータは「1キログラム当たり」の濃度です。国際的には面積当たりの汚染度で表す方が普通のようです。なぜなら、そもそも放射性物質の汚染は空からの降下物によるからです。重量当たり濃度の問題点は、土壌の採取法によって数値が変わることです。農水省は深さ15cmまでの土壌1キログラムを採取としていますが、セシウムは表層や枯落葉などに多くありますので、実際より少なく測定される恐れがあります。農水省はこの方法で調べています。それぞれの役所がバラバラにやっているのにはホトホト困ります。さらに言えば食品汚染は厚労省担当です。
 さて、上の図は、文科省と農水省の2種類の土壌汚染マップを重ねてみたものです。面積当たりの汚染濃度と重量当たりの汚染濃度の換算式があれば都合いいのですが、見当たりません。この地図の重なりでおよその相関関係がわかります。×印が問題のコメの出た所です。
 結局4月時点で作付け制限が行われたのは赤枠の避難区域等のみでした。実際は区域外でも高レベルの土壌汚染が広がっています。ですから、今回のようなレベルの汚染米が出てくる可能性はかなりあります。
 次回は、サンプリングと濃度検査の問題点について考えます。

(土壌汚染マップ資料)
農地土壌の放射性物質濃度分布図の作成について
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/110830.htm
農地土壌の放射性物質濃度分布図
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110830-06.pdf

文部科学省(米国エネルギー省との共同を含む)による航空機モニタリング結果
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/monitoring_around_FukushimaNPP_MEXT_DOE_airborne_monitoring/
文部科学省及び群馬県による 航空機モニタリングの測定結果について(参考2)9/27発表の最新版
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1910/2011/09/1910_092714.pdf