甲状腺検査〜福島県の子ども36万人2011/10/11 00:01

ヨウ素131汚染マップ
 正直、いまさら・・・と思います。子どもの甲状腺検査、もちろんやるべきです。でも、半年前のあの時に、やらなければならなかったことがあったはずです。本当に悔しくて残念でなりません。
 事故直後に大量放出されたヨウ素131、子どもの体内に取込まれると小さな甲状腺に集まります。ヨウ素は短い半減期の間に甲状腺の狭い範囲を集中的に被曝させます。放射線の影響は分子レベルのものです。今頃調べてもヨウ素131は消えていて、遺伝子DNAの傷だけが残っているのです。DNAの傷なんて調べることはできません。DNAが放射線によって傷つけられた場合、将来のがん発生の可能性があります。がん発生の確率は被曝量に比例します。チェルノブイリでは数年後より甲状腺がんが発生し始め、10年後にピークとなり、20年後に元に戻りました。公式統計でも4000人以上のがん発生が認められています。もともと子どもの甲状腺がんは通常では非常に珍しいがんなのです。
 チェルノブイリのときはまだよく分かっていませんでした。しかし、チェルノブイリを経験した我々は、今回の事故直後に速やかに実行すべきことがありました。放射能拡散予測にもとづく速やかで実効性のある避難と安定ヨウ素剤の服用です。最悪の事態を予測して行動すべきであるのに、事故の過小評価によってどちらも実行されませんでした。情報を握っている国と東電の罪は極めて重いものがあります。
 さらに、ヨウ素131が検出できるうちに、速やかな内部被曝検査を行うべきでした。3月中、いわき市で35ミリシーベルト相当の内部被曝か見つかった4歳児もいました。それなのに、国も自治体も動きませんでした。あのころ調べれば、被曝量がはっきりして、将来のリスク予想ができました。
 今やっている検査は、超音波エコーで甲状腺の肥大、組織の変化などを見るだけです。1人5分の簡単なものです。継続的に検査すれば、将来病変を早期発見できるというだけのものです。テレビに出たお母さんの言葉「モルモットみたい」が印象的です。

 事故直後は大量のヨウ素131が放出されました。放射能の量としてはセシウムの比ではありません。当時は東京でさえ1平方メートル当たり数万ベクレルのヨウ素が降ってきました。セシウム濃度で東京の100倍近い福島県内の汚染地帯では、当然ヨウ素も100倍近く降下したはずです。1平方メートル当たり数百万ベクレルという途方も無い放射能が降り掛かった可能性があります。
 文科省が9/21にヨウ素131の土壌汚染マップを公表しています。6月14日時点の濃度と断ってあります。ヨウ素131の半減期から逆算すれば事故直後に最大どれくらいのヨウ素131が存在していたかを推定することができます。例えば、6/14時点で福島市周辺では1平方メートル当たり最大1000ベクレル近く残っていました。すると放出からおよそ90日(およそ8日×11)なので計算すると、
 1000÷0.5^11=2000000 (0.5の11乗は0.0005)
なんと、1平方メートル当たり200万ベクレル存在していたこと推定できます。先ほどの荒っぽい推定通りです。現在ではさらに130日経っていますから(0.5の16乗をかけると)ほとんど消えています。今では痕跡を調べることも困難です。
 当時、大量のヨウ素131が降下する中で多くの子どもたちがそれを知らずに過ごしました。当時の行動状況、飲食内容などによって内部被曝量は違ってきます。いまさら出てきた汚染マップと、いまさら始めた健康調査、やることが遅過ぎます。

文部科学省による放射線量等分布マップ (ヨウ素131の土壌濃度マップ)の作成について(9/21)
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_FukushimaNPP/0002/5600_0921.pdf