コメの放射能検査(その2)〜ザル検査で早々安全宣言!?2011/10/13 21:21

 福島のコメ「安全宣言」と各マスコミは報じています。今年福島県内で作付け収穫した全ての米の出荷が解禁となりました。これで日本全国の新米が一切の規制なく流通することになります。私たちが毎日食べるコメ、はたして本当に安全が確認されたのでしょうか。
 放射性セシウムが暫定規制値500べクレル以下ならば安全というのが国の立場です。事故後に正規の手続きも踏まずバタバタと決めた暫定規制値ですが、500ベクレルで大丈夫という根拠がいったいどこにあるのでしょうか。私は、この数字、周到にシミュレーションしてこの日を予測した上での、国の数値設定だったと思っています。あらかじめ今年のコメを流通させられる程度の規制値にしておくということです。目の前の、経済的、財政的影響を最低限に押さえたいというのが国の本音であって、将来の国民の健康被害を防ぐという姿勢が見えてきません。
 コメは日本人の主食です。私などほぼ毎日3食コメを食べています。日本人にとっては特別な食べ物であるコメの基準が、肉やその他の食べ物と同じ基準で良いのでしょうか。チェルノブイリ原発事故で汚染されたベラルーシでさえ、主食のパンは40ベクレル、小麦など穀物は60ベクレルが基準なのです。子どもへの影響を考えれば500ベクレル以下を野放しで流通させることは大きな問題です。低レベルでも毎日たくさん食べ続ければ積算されて大きな体内被曝となります。少なくとも、暫定規制値以下であっても、検出値をはっきり表示して販売すべきです。
 ところがここにもうひとつの大きな問題があります。検出限界値の設定です。各地の検査結果には「ND」が並んでいます。これは「検出限界以下」ということで、セシウムがゼロという意味ではありません。検査方法ごとに設定されている限界値以下のセシウム濃度だったということです。福島県は明確な数値を公表していません。5~10べクレルと言っていますから、セシウム134と137合計で最大20べクレル以下の汚染は無視されることになります。栃木県などもっとひどくて合計で最大40べクレル以下はNDとして無視されます。実はこれが農水省の示したマニュアルなのです。ベラルーシの規制値と栃木県の検出限界値が同じとは情けなくて涙がでます。そもそも暫定規制値が高過ぎますから、20や40が低レベルに見えてくるのです。このレベルの数値もはっきり表示してほしいのですが、すべて「ND」となってしまいます。これでは、消費者として判断する材料がありません。
 もうひとつの問題は検査方法です。自治体ごとに違いはありますが、基本は市町村単位のサンプリング調査で、検査結果が規制値以下ならば、市町村単位で合格となります。福島県では旧市町村ごとに2カ所のサンプル調査で、具体的な調査地点は公表されていません。ということは、実際に出回る米の大部分は実検査を受けていないということです。たった2サンプルで○○地区のコメを一括りで「安全宣言」しています。これではホットスポット的な高濃度汚染を見逃すおそれがあります。水田管理が進んでいる日本では、田んぼ1枚の栽培条件は同一とみて、田んぼ一枚ごとのサンプリング検査をすべきです。
 こんな状態で市場に出てきたのでは、私たち自身が食べるか否か、あるいは子どもに食べさせるべきか否か、判断することができません。このままでは、私たちは放射能汚染地図を見て、福島県をはじめ関東地方のコメを選ぶか否か判断することになってしまいます。本当に汚染されていないコメも、少しだけ汚染されているコメも、かなり汚染されているコメも、今のままでは見分けがつかないからです。はっきりしているのは、「このコメの産地のサンプリングでは500ベクレルを超えるコメが見つからなかった」ということしか分からないのです。これでは、生産者と国や自治体が最も心配している「風評被害」がかならず起こります。せめて、コメくらい精密検査をしてください。できないわけではないのです。国に、やる気がない、というか、あえてやらないという態度を感じます。
 少なくともコメに関しては、検査密度と検査精度を最大限上げて調査し、正確な数値を表示して販売することを義務づけるべきです。