「福島第一原発 あのとき何が」原発事故の検証〜NHK特集2011/12/16 08:23

中央制御室〜NHK
 この番組は、12月18日(日) 午後9時15分~10時04分NHK総合テレビで放送されます。メルトダウンに至った巨大事故のメカニズムをNHKが独自取材をもとに徹底究明した番組であると予告されています。中央制御室のセットを用意して再現映像まで作っっています。NHKがどこまで迫っているのか注目されます。
 昨日(12/15)のブログでも取り上げた「配管損傷」の可能性をどう評価しているのかという点に、私は注目しています。最初に起こった破壊は何か?「電源喪失」が先か「冷却材喪失」が先か?津波による破壊か地震そのものによる破壊か?

シリーズ原発危機・メルトダウン~福島第一原発 あのとき何が~(NHK)
http://www.nhk.or.jp/special/onair/111218.html


<追記>(12/18)番組見ました。釈然としませんでした。
津波到達前は順調に冷温停止に向かっていたかのように描かれています。非常用復水器(IC)が自動起動した後、原子炉内圧力が急減圧して運転員が手動でICを停止したことに全く触れていません。「原因は津波による全電源喪失、あとは事故を想定していない人間側の問題」との印象を与える番組作りになっています。結局、肝心な「地震そのもので原発が壊れたかどうか」というところをスルーしています。今回のNHK特番は政府の「事故収束宣言」直後に放映されただけに注目されていました。再現映像まで作って一見リアルに見せている分インパクトが大きく余計に罪作りです。ICや水位計の問題やヒューマンファクターなど様々な問題点を浮き彫りにすることで、かえって一番肝心なところから目をそらさせることにもなります。NHKストーリーで事故がとらえられることは危険です。
メルトダウンに関しては立派な解析をしています。しかし、事故直後、御用学者を動員して「メルトダウンはない」と放送し続けた自らの反省は一言もありませんでした。

野田首相「事故収束宣言」!?!?!2011/12/17 08:04

野田首相「事故収束」宣言
 「発電所の事故自体は収束した」と、野田首相は確かに言いました。「じ・こ・し・ゅ・う・そ・く・!!!」私は自分の耳を疑いました。日本語の意味が分からなくなります。「冷温停止状態」達成を宣言するとは聞いていましたが、まさか「事故収束」まで宣言するとは。もう、あきれ果てて言う言葉がみつかりません。事故が収束しているなら「冷温停止状態」の原子炉の前で記者会見を開くべきです。冷温停止なら安全なのですから。もう大丈夫だとその原子炉を国民に見せながら宣言すべきです。原子炉の前に人が立てずして事故の収束はありません。汚染された広大な地域を元の状態に戻して初めて事故の完全収束です。「影響が残っている」ではなくて、「これから影響が出てくる」でしょう。何を血迷って、事故の最中に、というか被害は始まったばかりなのに、「収束」と言えるのか。
 野田首相の面の皮の厚さは相当なものです。まっ黒なものでもまっ白と平気で言える能力が政治家の能力なら、まさに真の政治家です。この会見を見ていると、何か現実離れした「舞台劇」か何かの「パロディ」じゃないかと、私は何度も思いました。5ヶ月前に菅首相が「脱原発」宣言をした時の記者会見を思い出して、総理大臣の交代は何だったのかを考えます。菅総理は政治の素人と言われていました。プロの「政治家」野田佳彦に国を任せて良いのでしょうか。

野田内閣総理大臣記者会見(官邸ホームページ)30分
http://www.kantei.go.jp/jp/noda/statement/201112/16kaiken.html

ツイッターデモに初参加(日記)2011/12/18 07:20

地球をもってデモ
 昨日(12/17)は久しぶりでデモに行ってきました。いわゆるTwitterデモというやつです。渋谷~青山~表参道というオシャレなコース。若い人たちに向かってデモるには絶好のロケーションです。ぬけるような青空の下、お日様をいっぱい浴びながら青山通りを歩くのはちょっぴり開放感があります。私はアースボールを頭に載せてのデモンストレーション。いつかこの広い通りをデモで埋めつくしたら・・・なんて夢見るオヤジです。
 Twitterデモは、ツイッターなどネット呼びかけによって集まった人たちのデモ。これまで主流だった労働組合や運動団体などの組織的な動きとは別に、単に「この指とまれ」式のその時その場でできる個人の集まりというのが特徴です。だから、バラバラです。揃いの旗もプラカードもありません。ハンドマイクはあっても、それぞれ勝手なこと言ってます。鳴り物入りですが、これもバラバラ。もちろんみんなの格好もパフォーマンスもイロイロです。ひとことで言えば、ユル~イ感じ。一人一人がそれぞれのスタイルで参加して自分の表現をすればいいという自由さが、このデモの特徴です。
 まわりを見渡すと若い世代が多いことに驚きます。これまで参加したデモの中で最も平均年齢が低くて、私などちょっと場違いなくらいでした。小さな子をおぶっている人を見て、25年前の自分を思い出しました。この子のために原発止めなきゃと思ってデモに参加していました。きっと同じ思いで歩いているはずです。今度こそ今度こそ原発止めないと、この子どもたちに申し訳が立たないです。
 最近は、組織化された「闘う」スタイルのデモはあまり見かけません。いわゆる組織の力が衰退したということもありますが、個人の意識の変化もあると思います。若者から見ると団体とか組織の雰囲気に近寄りがたいものを感じるようです。これからは個人が網に目のようにつながるネットワーク型の運動に可能性があると思います。
 一度こんなデモに参加してみませんか。

デモの動画がアップロードされています。
http://www.youtube.com/watch?v=OqNP_XmkZdQ

事故調査・検証委員会中間報告を読む2011/12/28 20:18

 12/25、事故調査・検証委員会の 中間報告が公表されました。12/2に出された東電自身による事故報告書とはさすがに大違いです。報告書はネット上に公開されています。かなりの分量ですが、これは実際に読むことをお進めします。非常に読み応えがあります。先日放送されたNHKスペシャルの再現映像なども思い出しながら、読まれると良いと思います。
 東電や国の対応がどうだったか、という点に関してはこれまでで一番踏み込んだ検証報告だと思います。事故対策、事故対応いずれをとっても「ヒューマンエラー」の側面を大きく捉えています。例えば、事故対策の面では、事前に15m超の津波の予測データがありながら「想定外」は許されないと指摘、過酷事故時の非常冷却法などの対応訓練がまったくされていないことなど、「甘すぎる対策」を批判しています。また、事故後の対応をめぐっては、1号機の非常用復水器(IC)操作に関する決定的な不手際、代替注水手段がないのに3号機の高圧注水系(HPCI)を途中で止めたことなど、「極めて不適切」「極めて遺憾」として批判しています。さらに、現場運転員、発電所幹部、東電、国(官邸、保安院、原子力安全委員会)の間で情報伝達、情報共有、状況認識、判断、連携、それらすべてに問題があると、厳しく批判しています。
 報告書を読んでいくと、まさに次から次ぎへとミスやエラーが連鎖的に起こっていく状況が浮かび上がってきます。スリーマイル島原発事故の時もそうでした。非常事態の混乱状態の中で、正確な状況把握あるいは的確な状況認識、事態の進展に対する適切な想像力、そしてその時点の最善の処置、そのいずれもが極めて困難であることも良くわかります。現場対応に関する調査検証結果を読んで思うことは、普通の人間が原子炉を操っている以上、これだけのことをすべてノーミスでやることなんておそらく「不可能」かもしれないということです。映画の主人公のようにはいかないのです。しかし、原発に「ミス」は許されないのです。職責を果たせなかった結果に対する責任は重大です。
 報告書における国(特に官邸)の対応に関しては、まだ問題提起のレベルだと思います。SPEEDIを公表しなかった経緯についてなどについても、引き続き調査するとしています。事故直後のモニタリングの問題点も指摘していますが、この辺りは今に続く情報隠しの問題にも関係しています。また、枝野官房長官(当時)の「直ちに人体に影響を及ぼすものではない」とのコメントについても「不適切」と批判しています。報告書を読んでいてもどかしく思うのは、事故後の対応に「責任逃れ」が感じられることです。というか、そもそも責任の所在がはっきりしていません。今後、当時の政府首脳部を含めた関係者の事情聴取が必要です。
 このように、かなり踏み込まれた報告書ではあると思いますが、重大な視点が欠けています。原発自体の設計に関わる技術的工学的な問題点についてです。ここは踏み込みが足りないというか、ほとんど触れていません。地震そのものによる1号機配管破断の可能性についても、フェイルセーフの作動状況や運転員の会話記録などの状況証拠のみで、それを否定しています。建屋内の放射線レベル急上昇の原因も検証されていません。この調査委員会のメンバー構成からも設計上の問題検証は無理なことかもしれません。あるいは、意識的に避けているのかもしれません。この点については、おそらく今後もこれ以上追求されないかもしれません。なぜなら、原発の設計自体に問題があれば、日本中の原発がすべて止まってしまうからです。
 ただ、この報告書で事故調査・検証委員会は、重大な原発事故を招いた責任が東京電力および国にあることをはっきり言っています。それだけでも、かなりの価値はあります。広瀬隆らが東電や国を刑事告訴していますが、刑事責任を問う際の証拠にもなるでしょう。事故調査・検証委員会は初めから刑事責任追及はしないとしています。しかし、これだけ社会全体に大損害を与えた事故を引き起こした責任はどこかでかならず追求されなければなりません。そこがいまだにうやむやになっていることは大問題です。
 来年夏には最終報告が出る予定ですので、検証結果に注目したいと思います。事故後、政府が行った数々の対応についても検証を進めるとしています。避難区域の設定や様々な規制値の設定など現在進行中の問題に関しても、どのような検証をするのか注目です。

 このように問題の多い報告書ですが、中には文学的な表現も見られます。これは誰の作文なのでしょう。柳田邦男あたりでしょうか。報告書の最後の部分、「想定外」という言葉を批判した一節から一部を引用し紹介します。

> 原子力発電は本質的にエネルギー密度が高く、一たび失敗や事故が起こると、かつて人間が経験したことがないような大災害に発展し得る危険性がある。しかし、そのことを口にすることは難しく、関係者は、人間が制御できない可能性がある技術であることを、国民に明らかにせずに物事を考えようとした。それが端的に表れているのが「原子力は安全である。」という言葉である。一旦原子力は安全であると言ったときから、原子力の危険な部分についてどのような危険があり、事態がどのように進行するか、またそれにどのような対処をすればよいか、などについて考えるのが難しくなる。「想定外」ということが起こった背景に、このような事情があったことは否定できない。<

東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会:中間報告
http://icanps.go.jp/post-1.html

福島原子力事故調査中間報告書(東京電力)
http://www.tepco.co.jp/cc/press/11120203-j.html

3号機も津波前に壊れていた?!2011/12/29 17:29

東電の高圧注水系機能検査用資料より
 東京電力はすべてを「津波」のせいにしようとしています。事故調査・検証委員会はすべてを「人」のせいにしようとしているようです。しかし、「原発」という巨大システム自体に問題は潜んでないのでしょうか。
 3号機の非常用冷却システムの問題がここにきてクローズアップされています。3号機については、東電がメルトダウンを認めた翌日 5/25の朝日新聞が「冷却配管、地震で破損か 福島第一原発3号機、耐震性に問題」と報じていました。つまり、非常用冷却システムである高圧注水系(HPCI)が作動したあと原子炉内の圧力が急減したのは、HPCI系の配管のどこかが破断していて冷却水が抜けたためではないかというものです。1号機の非常用復水器(IC)と同様、地震によって重要機器が破損していたのではないかという疑いです。
 問題は何かと言うことを整理しておきましょう。3号機は地震で自動停止したのち20分ほどでまず原子炉隔離時冷却系(RCIC)を起動しました。これは高温の原子炉で発生した蒸気の利用してタービンを回しポンプを駆動させて原子炉に水を送り込むシステムです。起動後20分でこのシステムは自動停止。原子炉水位が上がったためです。この後、津波で電源喪失したため、再びRCICを起動して原子炉の冷却を行っていました。ところが、3/12のお昼前にRCICがトラブルで停止し使えなくなりました。その1時間後、原子炉水位低下のため高圧注水系(HPCI)が自動起動しました。すると、その後6時間ほどで原子炉内圧力が75気圧から10気圧まで急激に下がりました。そして、3/13深夜3時前、運転員が手動でHPCIを止めたのです。結局、この時点ですべての冷却手段を喪失して原子炉の空焚きへと向かったのです。
 当初は、HPCIは自動で止まったのち起動できなかったと言っていました。しかし、運転員が手動で止めたことがわかって、今度はなぜ止めたのかということが問題になっていました。状況から、原子炉の急減圧は冷却水漏れではないかと疑った運転員がHPCIを止めたのではないかという疑惑が浮上していました。
 東電は12/22に改めて 事故報告書(初動対応に付いて)を公表しました。その中で東電は、HPCIを止めたのは運転員が「機器の損傷を恐れて停止した」ためと言っています。
 12/25に公表された 事故調査・検証委員会の中間報告でも、ほぼ東電の状況説明をそのまま受け入れた上で、代替冷却手段が確保されない状況で運転員がHPCIを止めたのは、決定的な操作判断ミスで、しかも吉田所長等の指示なしで独断でやったと批判しています。しかし、圧力急減の原因と配管破断の可能性については何ら検証していません。配管破断に関しては、当時HPCI室へ行った作業員が蒸気漏れ等を目視していないとの証言だけで、破断はなかったと結論づけています。結局、責任をその運転員一人になすり付けているようにも見えます。
 1号機の非常用復水器(IC)の問題には多くのページを割いているのに比べて、3号機のHPCI問題に関してはあまりにもあっさり「破断なし」と結論づけているところが、かえって不思議です。小出裕章氏は ”たね蒔きジャーナル”で、「高圧注水系の配管が破断したために作業員が注水をやめたのではないか」という疑いを述べています。
 HPCI室は建屋の下の階、サプレッションプール(圧力抑制室)の脇にあります。放射能レベルが高くてもはや実地検証することは不可能でしょう。配管を調べることもせずに、簡単に破断はなかったと結論づけるところにかえって疑念をいだかざるを得ません。考えてみれば被曝問題と同じです。証明できないことは存在しないのです。破断が証明できないから破断はなかったと言いたいようです。
 原発自体の技術的問題をきっちり検証することなしに事故原因の究明はあり得ません。他の原発への波及を恐れて技術的問題を意図的に避けているようにも見えます。調べないということも隠蔽と同じです。
 地震で壊れる原発が日本に存在していいはずがありません!しっかり確認して下さい。確認できないなら、原発を動かしてはいけません。