文科省副読本「放射線について考えてみよう」批判2011/10/15 07:04

文科省副読本(毎日新聞より)
 文科省が「放射線教育」という名目で新しい副読本を作成し公表しました。今月以降全国の学校に見本が配布されます。これまで、文科省は原発推進を強調した副読本をつくっていましたが、今回、原発の記述をほぼ一掃して(福島原発事故の記述もなし)、「放射線」に特化した内容になっています。文科省HPに掲載されていますので、早速チェックしてみました。
 「放射線はありふれた身近なもの(自然放射線)」、「放射線は生活に役に立っている(放射線利用)」の2点が強調されています。その反面、放射線のリスクについてわずかな記述のみで、あいかわらず「一度に100ミリシーベルト以下の放射線を人体が受けた場合、放射線だけを原因としてがんなどの病気になったという明確な証拠はありません。」とリスクを過小評価する記述が続いています。さらに、教師向け解説書では「身近に受ける放射線があることを伝え、放射線に対して児童が不安を抱かないように配慮する」、「がんなどの病気になる原因は、色々ある・・・」などと、まるで不安の打ち消しが教師の役目のようです。小学生向け副読本の教師向け解説の中に書かれている放射線の影響評価の中に、一番肝心な「子どものへの影響」についても一言も触れられていません。
 もし、福島の子どもや親や教師の身になってこの副読本を読んだとしたら、いったいどう思うでしょうか。知りたいことが書かれているとは思えませんし、具体的に何かの役に立つとはとても思えません。自然放射線や放射線利用については大きく見せ、体への影響や事故のリスクについては小さく見せる姿勢が、この期に及んでも貫かれています。以前も ブログで触れましたが、文科省は、教育を行う旧文部省と原子力の元締めである旧科学技術庁が合体したものです。教育と原発推進が一体化した役所ですから、私は文科省の「放射線教育」にはまったく期待していませんし、その通り実施されたら子どもたちの「洗脳」になりかねないと思っています。

小学校児童用副読本「放射線について考えてみよう」(文科省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/10/__icsFiles/afieldfile/2011/10/14/1311072_01.pdf
その他副読本および教師向け解説書(文科省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/detail/1311072.htm

文科省副読本 原発記述ほぼ一掃(東京新聞10/15)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011101490135706.html

コメント

_ hanabati ― 2011/10/16 15:41

小学校副読本を読んでみました。放射線の人体に及ぼす影響には全く触れていなくて、有用性を強調しており、しかも私たちは日常から浴びていているという内容にはびっくりしました。スイセンまで持ち出して放射線は様々なものから出ていますなんて。これって皇民化教育を行っていた戦前と変っていません。

_ 日本の未来を憂うるサムライ ― 2012/03/18 20:04

私もこれを読んて実に大きなショックを受けました。政府は口では、脱原発をめざすとは言いながらも、この副読本にはそのことはなにも記してありません。この副読本には、もし日本が脱原発を目指すならば、放射能の存在についてわかりやすく説明することが求められるのに、放射能の恐ろしさになどは一言も触れていません。ましてや、現在進行中の福島原発事故の子どもたちが広範なに被ばくした事実も全く触れていません。 今の状況で、このような放射能福読本が配布されると、放射能について間違った知識や情報を与えていくものです。

http://tajimaiclc.at.webry.info/201203/article_9.html

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