放射線医学総合研究所・・・原発推進と表裏一体2011/08/29 21:15

放医研
 昨夜、NHKのETV特集で「ネットワークでつくる放射能汚染地図−3」を見ました。この番組は必見です。もしYouTubeなどで見るチャンスがあればあらためて紹介したいと思います。福島県の住民の被曝実態調査の取り組み、除染の試みなど、在野の科学者による取り組みを通して、暗に国の対応を批判しています。

 この中のワンシーンですが、私がとても気になったことがあります。放射能医学総合研究所(放医研)が出てきました。放医研による住民の内部被曝調査を受けた人の話です。30km圏外にありながら高濃度の放射能汚染のため避難区域となった飯舘村の住民二人が、千葉市の放医研まで出向いてホールボディカウンターによる内部被曝検査を受けたのです。
 「怖いけれど、まず事実を知りたい」と覚悟して検査を受けた二人でしたが、検査後、ただ「大丈夫です」と言われただけで、数字やデータ、大丈夫という根拠など、何も示してもらえなかったといます。はるばる福島から千葉までやってきて検査を受けたのに検査データは本人に開示されませんでした。「俺たちモルモットか」というつぶやきに私はショックを受けました。
 これはICRP勧告の適用ガイダンスICRP-111を無視しています。ICRP-111は「すべてのデータ、パラメータ、想定条件及び値は明快に提示され、重要な情報はすべて関係者に提供されること」、「影響を受けた人々には、被曝レベル及び潜在的リスクに関する正確かつ適切な情報を提供すべき」としています。20ミリシーベルト問題ではICRPを根拠にしていた国ですが、ご都合主義でここは無視しています。本人開示すらしない、これも情報隠しです。
 放医研が行っている調査は、いったい何のためにやっているのでしょう。放医研は放射線研究及び防護のプロ集団です。彼らは3.11以来今日までいったい何をやってきたのでしょう。どうみても、住民の立場に立って、その不安に答え、どうすべきか判断するための手助けをするという役割は果たしていないようです。
 むしろ、X線や航空機を引き合いに出して放射線不安解消宣伝に一役買ってきたり、低レベル放射線被曝を「ただちに影響ない」と「疑似安全宣言」を出したり、お上の御用専門家機関としての役割を遺憾なく発揮してきました。
 今回の調査目的は、国が今後の影響を一般国民より先に見通して、落としどころを踏まえた事前対策を立てておくための、データ集めなのです。したがって、データは開示されないのです。
 これまでも国はデータを隠したり後出しを繰り返しています。文科省はSPEEDIのデータや米軍の測定などから飯舘村周辺の高濃度汚染を早くから把握していました。住民が何も知らないうちから、モニタリングカーを走らせていました。ある程度の被害予測を立て、さらに発表後のリアクションまで想定した上で、ようやく、少しずつ公表します。ことの済んでしまった後で。

 1956年の「原子力基本法」成立で始まった日本の「原子力」。その翌年、放医研は、科学技術庁発足ととともに科技庁所管の研究所として設立されました。科技庁初代長官は原子力の父と言われる正力松太郎です。放医研は「原子力の平和利用」を推進する機関の一つとして生まれたのです。したがって「原発推進」は放医研の宿命のようなものです。
 今回の原発事故にともなう被曝対策で、放医研が住民の命を守ろうとしているのか、それとも国や原発を守ろうとしているのか、今回の対応でそれが見えてきます。

ICRP-111(日本アイソトープ協会による日本語訳)
http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15092,76,html

放射線医学総合研究所におけるホールボディカウンタの測定方法について
http://www.nirs.go.jp/information/info.php?i21

コメント

_ どんぐりおばさん ― 2011/08/30 09:28

この番組見逃しました。ありがとうございます。
放医研は、ヒロシマの原爆後のABCC,放影研を連想しました。

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