広野火力発電所・・・福島原発の隣の火力、8月には全復旧2011/07/13 22:06

津波が押し寄せる広野火力発電所(読売新聞)
  4月21日のブログで取り上げた東京電力「広野火力発電所」ですが、8月には全面復旧しそうです。1号から5号機までを有する380万キロワットの大型火力の復活です。
 広野火力発電所は、福島県広野町、福島第一原発から21キロメートル南にあります。現在は緊急時避難準備区域内に入っています。地震の時は大津波が押し寄せ、壊滅的な被害を受けました。被災直後は復旧のメド立たずと言われていましたが、夏の需要期を前に立ち上がることができました。東電の発表は プレスリリースに一言載せるだけ、火力については本当に控えめです。まるで、こっそり動かしているようにも見えます。
  6/15、予定を2週間前倒しで5号機が運転再開しました。5号機は最新型の石炭火力で60万キロワットの出力があります。不思議なことに、海に突き出した埋め立て地に建っていて、最も海に近いのに最初に復旧しました。最新の石炭火力は、石炭を微粉末にして燃焼効率を上げ自動運転とできる限りのクリーン化を実現しています。石炭はコストが安く資源が豊富で調達先も世界中に分布しているので、アメリカなどでは2000年以降たくさん作られています。
  7/11、2号機(60万キロワット)が運転再開しました。この火力は従来の重油+原油による火力です。これで、120万キロワットになりました。
 次は、4号機(100万キロワット)が再開するのではないかと予想されます。7月中に220万キロワットを再開とアナウンスされていますので。残り、1号機(60万キロワット)、3号機(100万キロワット)は、8月に再開されるはずです。これで、合計380万キロワットが復旧します。さらに、現在6号機が増設工事中です。これができれば、総出力470万キロワット、かつての福島第1と同じ規模の巨大発電所となります。

 つくづく、原発との違いを考えてしまいます。同じように、巨大地震に遭遇し、緊急停止、その後、福島原発は13メートル、広野火力は10メートルの大津波を受け、多くの施設が破壊されました。しかし、その後の展開は、余りにも違います。原発は、メルトダウン、水素爆発、放射能を大量にまき散らし、周辺を人の住めない土地にして、いまだに収束のメドすら立っていません。もちろん復旧どころではなく、最終的な廃炉から廃棄物処理まで、どれだけの時間がかかるか分かりません。数十年か数百年か・・・・・それに対して、火力の方は、機械が壊れて、止まって、それで終わりです。それ以上悪くなることはありません。地震と津波が去ったら、人々が入って片付けをし、修理を始め、機械を直せばまた使えます。周辺に何か迷惑をかけたでしょうか。
 火力も原発も、湯沸かし蒸気力発電です。たかがお湯を沸かすのに原子力使うことのバカバカしさに気がつきませんか。CO2を出すとか、コストが高いとか、いろいろ言われた火力ですが、隣の福島原発の破局的状況を見れば、どっちが良いかの答えは明らかです。放射能をまき散らすことと、植物の光合成原料でもあるCO2を吐き出すこと、どっち選びますか?原発はハイリスク・ハイコストであることが証明されてしまいました。福島県浜通に並んだ二つの発電所、「福島第一原子力」と「広野火力」を並べてよく考えて欲しいと思います。

 なお、同じ浜通、福島第1原発の北には、東北電力の 「原町火力発電所」があります。南相馬市にあり、広野と同様、緊急時避難準備区域に入っています。この発電所は、1、2号機で、石炭+木質バイオマスを燃料に合計200万キロワットの出力があります。広野同様、大津波で甚大な被害を受けました。特に石炭陸揚げ施設や専用運搬船など相当な被害を受けているようです。この発電所は、今どうなっているのか確認できませんでした。まったく復旧のメドが立っていないようです。供給力1300万キロワット弱の東北電力にとっては大事な火力発電なのに、状況がまったく分かりません。原発事故の影響で復旧の見通しが立たないと言われていましたが、広野との違いがよく分かりません。とにかく、ここについては情報がほとんどありません。

「脱原発へ」歴史的大転換!・・・菅首相7.13会見2011/07/14 06:11

菅首相記者会見7/13
 日本の首相が「脱原発」を表明しました。多くの国民が「脱原発」を望んでいます。これで、日本が変わらなかったら本当におかしなことです。
 相変わらず、マスコミは菅批判のスタンスで、これを伝えています。すぐに出てきた批判が、電力問題。菅首相は、この夏の電力供給にメドが立ち自信を持ったからこそ、この時期に表明したと思います。それと、またぞろ手続き論。政財界の菅下ろしを煽っているのはマスコミ自身です。日本の将来を考えた、根本的な議論がどこにもありません。
 首相のやるべきことは、大きな方向をしっかり示すことです。菅首相は歴史的な政策の大転換を示しました。後は、「国民の支持」というものがなによりの大きな力です。もしかしたら、今の菅首相には、それしか残っていないかもしれません。おそらく、近々世論調査があります。そこで、菅首相の支持率をいっきに上げなければいけません。いや当然上がるはずです。そうならなければ日本はおかしい。菅支持デモなどやる必要があるかもしれません。もしやれば反原発運動始まって以来のことになります。


菅首相会見1 冒頭
菅首相会見2 質疑応答
菅首相会見3 質疑応答

埼玉県内学校の放射線マップ作成しました2011/07/15 21:44

埼玉県内学校の放射線マップ
埼玉県内学校の放射線マップ・・・制作:”原発危機を考える” byトムティットトット

 埼玉県もようやく県内の学校の放射線量を測り始めました。 (読売新聞) 7/14までに116カ所の測定結果が公表 (埼玉県HP)されましたので、地図上にプロットしてみました。Googleマップの使い方がまだよく分からなくて、見にくい所はご容赦下さい。マップ下の「大きなマップで見る」をクリックした方が見やすいかもしれません。ぜひご覧ください。

埼玉県内学校の放射線マップ・・・制作:”原発危機を考える” byトムティットトット

 県東部の三郷市、吉川市付近がホットスポットになっていることが分かります。これは、我孫子、柏、松戸、流山、野田方面のホットスポットとつながっています。最大は、三郷市立幸房小学校の校庭1m高で毎時0.33マイクロシーベルトでした。次に高かったのが、吉川市立三輪野江小学校の0.229でした。
 紫色のポイントは、0.1マイクロシーベルト未満のところです。埼玉県の大部分はこのレベルになっていました。この値は3.11以前のさいたま市の平常値と大きく変わらないレベルと考えられます。(さいたま市の過去の平常値:0.031~0.060μSv/h、ただし地上18mなので、地上1mでは約2倍の0.06〜0.12μSv/hと考えて)
 青色のポイントは0.1〜0.2マイクロシーベルト未満の所です。ここまでなら、年間で1ミリシーベルト以下の被曝量と考えられます。つまり、これまでの一般公衆の年間被曝限度に相当します。(積算値の推定は文科省の試算式による・・・野田市の例)なお、武田邦彦教授は0.11までが安全量と言っています。
 三郷市と吉川市に見られた水色と緑色のポイントは、0.2マイクロシーベルト以上の被曝放射線量となり、平常値の数倍に達するレベルとなります。今回の原発事故による放射能汚染の影響は明らかです。
 特に子どもたちへの影響をできる限り低く抑えるためには、まず県東部のホットスポットで被曝低減対策を立てるべきです。もっと詳しい汚染状況調査を行い、除染や校庭の表土入れ替えなど、できることは何でもやるべきです。それも一刻も早く。

 私は昔、吉川市に住んでいたことがあります。友だちもたくさんいます。とても人ごととは思えません。早くきれいにしてほしい。

<追記>高めの線量の出ている県東部地区については、市や町のデータも追加しました。また、ホットスポットとなっている千葉県などの隣接自治体のデータも追加しました。測定体制は自治体によって随分差があります。今後、さらにデータの追加プロットや更新をできればと思いますが、結構大変です。(7/16)

セシウム牛問題・・・食品汚染を考える2011/07/16 17:33

福島と言えば赤ベコ
 国はこれまで、「市場に流通している食品はすべて安全です」と言っていました。以前、私が農水省に電話して聞いた時も、担当者からはそう言われました。実際どれだけの人がそれを信じていたかは別にして、国と各自治体はずっとそう言っていました。
 「安全だから流通販売される」のではなく、「流通販売されているから安全」なのだと、いつのまにか論理がひっくり返っていました。原発と同じです。国が守ろうとしているのは「命や健康」よりも「経済」の方だからです。だから、最大の問題は「風評」でした。しかし、今回のことで国は自ら墓穴を掘ることになりました。
 汚染地域産の食品については、全品検査をすべきです。規制値以下でも結果を表示して販売すべきです。早急に予算と人員をそろえて全品検査体制を構築することは極めて重要です。牛の全頭検査は無理などと努力もせずに言っていますが、BSEに関しては全頭検査を行っています。結局は、それによってしか、消費者の安心を得ることはできません。すでに、学校給食への使用自粛など、買い控えは一気に広がっています。消費者としては「安全確認ができないものは安全でない」という判断するしかないからです。
 またまた、ニュースには専門家が登場して「一回や二回食べても問題なし」、「1年間毎日1キロ食べ続けても安全」とか、言っています。これは問題の本質を理解していないか、そらしています。個人レベルにおいても、内部被曝によるリスクは食べた量に比例して増えます。たとえそれがほんのわずかであっても。しかし、もっと大きな問題は、たとえ少しずつでもたくさんの人が食べることによって社会全体の公衆被曝線量が増えるということです。食べられた量だけ社会全体のリスクが増大するのです。将来、統計的に確認された時では遅過ぎます。
 放射能に関する専門知識も放射線の測定器も何も持たない農家に責任を負わすことはできません。今回の問題を、「汚染稲わら」という特殊なケースで一件落着させ、本当の犯人探しをうやむやにさせてはいけません。

参考:セシウム137を食べた時の内部被曝量の計算法
 食べた食品に含まれるセシウム137の量を Cベクレルとしたとき、内部被曝量(単位:マイクロシーベルト)は
   C×1.36÷100

世論誘導するマスコミ・・・読売と原子力の因縁2011/07/17 06:10

 歴史的な「脱原発」表明以来、菅首相に対する批判攻撃が一段と過激化しています。読売新聞などでも、原発事故問題はどこかに吹っ飛んで、もっぱら菅&脱原発批判を全面展開しています。ここまで言うかという内容が新聞報道として扱われています。
 新聞やマスメディアは社会に与える影響が極めて大きく、公共性が強いために、特に公平性と客観性が強く求められています。具体的には、1、事実を歪曲しない、2、報道する者の意見を含まない、3、意見が分かれる事柄は一方の意見に偏らず報道する、という3原則があります。はたして今のマスコミ報道がこの原則に則っていると言えるでしょうか?
 特に3の問題、これから日本では原子力発電をどうしていったらよいか?という点に関して、マスコミはどのような態度で行動しなければならないのかということです。読売の報道は、明らかに「原発存続」の立場です。一方的に片方の意見で作られています。読売がやっていることは、メディアを使った「世論操作」あるいは「世論誘導」そのものです。
 かつて読売新聞社主であった正力松太郎と原子力の因縁は有名な話です。戦後の日本に「平和利用」の名の下に原子力導入した立役者の一人で、原子力委員会初代委員長、科学技術庁初代長官をつとめ「原子力の父」とまで言われています。アメリカ政府は日本のマスコミの大物を使うことによって日本人の核感情を作り替えようとしました。もう一人の立役者は中曽根康弘元首相です。
 そうして始まった日本の原子力ですから、読売とは深い因縁があります。読売は、これまでも、首尾一貫して原子力推進のため世論作りに走ってきました。その罪は大変重いものがあります。そして今、再び開き直ったように、原発擁護のキャンペーンを始めました。「原発なしではやっていけない!」「自然エネルギーなど夢!」という意見広告のような記事がニュースと一緒に並んでいます。
 さて、近々、世論調査が行われるはずです。「脱原発」を明言した菅首相の支持率がどれだけ上がるかが、最大のポイントです。原発を進めたい人、手放したくない人たちにとっては、ここで支持率が上がってもらっては困るのです。菅をやめさせたい人たちも同じです。だから、ここでなりふり構わず菅批判を集中的に展開しているのです。

 最後に一言。私たち国民は騙されてはいけません。菅さんの指導力がどうの統率力がどうの実行力がどうのという問題は、政界運営レベルの話です。菅さんが「脱原発」したいと言いました。日本の将来選ぶべき道をどう選択するかという問題は、最終的には国民の選択であり責任です。最近の世論調査では、7割以上の国民が「脱原発」を望んでいます。それが素直に現れれば、菅首相は圧倒的指示を得て良いはずです。そして、もしも解散総選挙になれば、それが原発是か否を選択する選挙にならなければいけません。ちょっと先走りすぎました。
 さらに一言、50数年前の原子力導入の時に、国民がそれを選択した覚えはないでしょう。それだけではありません、当時の政界にしても、ほとんど寝耳に水の導入劇だったのです。中曽根など一部の政治家が「夢のような話」と言われながら、こんな大事な選択を行っていたのです。いまさら、菅の選択を批判するな、と言いたいです。

<参考>例えば 7/16の読売新聞社説と、 7/14の社説、・・・もっとも社説は社の意見だから、これも許されるのか。こういう方針で紙面を作っているということをお忘れなく、ということです。