海に放射能大量放出2011/04/04 22:19

 午後7時、東電は福島原発から「低レベル」放射性廃液を海に放出開始。敷地内のタンクなどすべていっぱいになれば最後は海に捨てるしかない。恐れた通りになりました。「低レベル」といっても濃度は基準値の100倍、およそ1万1500トンで、総量で74ギガベクレルという途方もない量の放射性物質が海に捨てられます。(1ギガベクレル=10億ベクレルです)
 実は汚染水はこれまでもずっと垂れ流しされていました。ピット付近の「高レベル」汚染水は1時間あたり1000〜10000ギガベクレルの流出量でした(数値はNHKニュースより)。国も東電も、なんとか「高レベル」の放出をくい止め原発内の汚染水を回収しなければ、いずれ人間が作業できなくなり、そうなれば原子炉の崩壊を待つばかりという最悪のシナリオを恐れていることは明らかです。緊急やむを得ず「低レベル」廃液の放出という今回の発表は事態の深刻さを物語っています。このまま本来の冷却機能を回復できなければ、いずれ、貯蔵施設はいっぱいになり、「玉突き」で順繰りに「高レベル」の汚染水を放出して行くことになってしまいます。
 「薄まるから大丈夫」といつまで言い続けるつもりなのでしょう。さらに、ヨウ素131のことばかり言いますが、今後はセシウム137による汚染に注目しなければなりません。シルトフェンス(拡散防止膜)を張ってもセシウムは海水に溶けてイオンになっているので容易に通り抜けるでしょう。
 もっと前から分かっていたことなのに、今頃になって言い始める東電と国、あいかわらず情報隠しを疑いたくなります。

追記(4/5):東電は「原発から1キロメートルに生息する魚や海藻を毎日食べたとしても、増える被曝量は年間0.6ミリシーベルトで許容限度の6割。人間の健康への影響は小さい」と言っています。計算の根拠がわかりません。前提条件をどのように設定しているかわかりません。放射性物質の種類わかりません。貯蔵廃液なのでヨウ素は少ないかもしれませんが、セシウム137の生物濃縮をどのように見積もっているのかなど不明です。いつものことですが大丈夫かどうかではなく、根拠となるデータそのものを発表すべきです。もっとも、魚だけで年間0.6ミリシーベルトという数値を問題なしと言うこと自体がおかしいですが。
最新海流図
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/2011cal/cu0/qboc2011062cu0.html 追記:拡散予測に使ったのは「海洋環境放射能による長期的地球規模リスク評価モデル(ラメールLAMER)」らしいです。参考資料
http://jolisfukyu.tokai-sc.jaea.go.jp/fukyu/gihou/pdf2/n22-08.pdf
http://jolissrch-inter.tokai-sc.jaea.go.jp/pdfdata/JAEA-Data-Code-2007-024.pdf

原発なしでも電気は足りる2011/04/05 14:45

原発なしでも電気は足りる
「原始時代に戻れますか!」なんて言われると、一瞬ぐらっときませんか。「原始時代」と聞いて、いきなり荒野に放り出されたような不安を覚えます。そして「やっぱり電気がないと・・」って思います。結局、「原発も仕方ないかな・・」って消極的に受け入れる。そういう人が多いのではないでしょうか。「原始時代」は大げさですが言葉のイメージはとても強い。実はこのような脅し文句こそが最大の「風評被害」だったのです。これまで国や電力会社は、放射能の危険については「小さく小さく」、電力の不足については「大きく大きく」言ってきましたし、今でもそうです。はたして、本当に「原発がないと電気が足りない」のかどうか?突き詰めれば、「原発がないと生きていけない」のかどうか?考えてみましょう。
 1年を通じてみれば電気はあり余っています。平均すれば全発電能力の半分くらいしか使っていません。それなのに、なぜ足りないのでしょう?電気は溜めることが困難です。だから、需要に合わせて発電しなければなりません。1年中で最も電気を使うのが、真夏の平日の昼間です。猛暑の2010年度のデータはまだ発表されていませんので、2009年で見ます。 図-pdfファイル
 この年のピークは8月7日午後3時、この時全国で、約1億6000万キロワットを記録しています。これに対して供給能力(年度当初計画、設備能力ではありません)は、約2億キロワットでした。この最大電力を記録した時、原子力が約3400万キロワット分発電していました。これは計画供給力の109%です。火力と水力をあわせて約1億2300万キロワット、これは計画供給力の75%です。では、もしも水力と火力が100%計画通り供給すると、それだけで1億6500万キロワット。つまり、「真夏の最大電力も、原発なしで足りる!」
 日本では原子力をフル稼働させ(もちろん定期点検中は除く)、メインとなる火力を休ませながら電気を作っています。需給バランスの調整は火力発電所を止めたり動かしたりして行っています。発電設備容量で全体の20%の原子力が30%近い発電を行っています。2割分の発電施設しかないのに、「私たちの電気の3割は原子力です」などと宣伝しているのです。原子力がなければすぐにも困るというようなこと本来はありません。いつの間にか、ないと困るような仕組みにされているのです。
 今後は、まずはピークを下げる、そして火力の活用、さらなる節電と省エネなど、ありきたりのことですがその気になってやれば十分乗り切ることが可能です。ウルトラCは必要ありません。いずれにしても「電力危機」を煽るほど切羽詰った状況にはないのです。去年の猛暑で再び記録更新したところも多いようですが、1995年頃から最大電力は横ばい状態で、このところ景気低迷のせいもありむしろ減少傾向にあります。電力各社は、電力需要を増やそうと、オール電化システムの売り込みに力を入れてきました。最大電力が1億キロワットを越えたのは1983年、1億5千万キロワットを越えたのは1994年、そんな昔のことではありません。現在の発電システムから原発をなくしたって、決して「原始時代」に戻ることなんてありませんからご心配なく。それより「原子時代」はもうゴメンです。

 今回の事故で東京電力は供給計画が大幅に狂い混乱しています。しかし、電気が足りないのではありません。知恵が足りないのです。混乱の中、安易に計画停電を実施しましたが、これには電力不足をアピールして、原発の延命を図るという側面も隠されているのではないかと思ってしまいます。関東がこの夏をどう乗り切るか、みんなで「知恵」を絞りましょう。すでに、ピーク抑制のアイデアはいろいろ出始めています。

7日の放射能拡散予測・・・念のために注意2011/04/05 18:43

4/6〜8の放射能拡散予測
 政府がいつまでも拡散予測SPEEDIを公表しないので、外国のお世話になっています。前にも紹介したドイツ気象局の放射能拡散予測を見ていたら、どうも、この7日から8日にかけて風向きが怪しそうです。一度南下した後、西に流れて、広く西日本まで広がる予想です。念のために注意が肝心です。といっても、外出自粛とかマスクくらいですが。なお、この予測は、おおもとの放射能放出量が分からないので、あくまで濃度の違いを色分けして描いたものです。時間は世界標準時なので日本はプラス9時間です。
http://www.dwd.de/wundk/spezial/Sonderbericht_loop.gif

 ところで、SPEEDIとは別に気象庁が拡散予測を計算して毎日IAEAに報告しています。IAEAには見せて国民には見せない。こんなことってありますか。もっとも、文科省のSPEEDIは誰にも見せない(一度だけちらりと見せましたが)。意図的に隠し続けているとしか思えません。

気象庁が拡散予測を公開2011/04/06 06:38

気象庁の拡散予測(毎日新聞)
 日本の気象庁が放射性物質拡散予測をようやく公開しました。これまでIAEAに提出していたものです。
http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/kokusai_eer.html
http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/eer_list.html
http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/EER/eer23.pdf

福島原発事故はレベル7?2011/04/06 19:22

3/22〜23 放射性降下物予測図(気象庁)
福島原発事故は「レベル7」
 気象庁が発表した放射性物質拡散予測データからいろいろなことがわかります。気象庁は、ある一定時間に原発からヨウ素131が1ベクレル放出されたと仮定して、その時の気象条件をもとにシミュレーションを行っています。この中で地上への降下物量(雨や塵で地上に降った放射能)の予測データに着目して、実際に放出された放射能の量を逆算してみました。
 図中のマイナス12というラインは、原発で1ベクレル放出された時、72時間の降下物量が10のマイナス12乗ベクレル、すなわち1兆分の1ベクレルになる予想ラインということです。したがって、求められた数値は一種の拡散希釈係数のようなものと考えられます。さて、予測値とは別に実際の計測値が公表されています。文科省のHPで定時降下物測定値がみられます。つまり、降下物の実測データにこの拡散係数を逆にして掛け算すれば、元の放出量をおおまかに見積もることができます。荒っぽい方法ですがやってみました。計算の嫌いな方は飛ばしても結構です。
 3月20日から23日にかけて関東地方では冷たい雨が降りました。この時の降下物の量は東京でも72時間トータルで1平方メートル当たり7万ベクレルに達しています。茨城が20万超、宇都宮、さいたま、千葉で2~5万、神奈川で2千ベクレルでした。多いところと少ないところで桁が2桁違っています。さて、予測値のほうはどうかというと、これらのエリアはマイナス12乗ラインの内側ですので、おそらく1平方メートル当たり10のマイナス11~マイナス12ベクレルと考えてよいでしょう。したがって、それぞれの実測値に10の11乗から12乗を掛ければもとの放出量のおおまかな推測ができます。(11乗は1000億倍、12乗は1兆倍)
 例えば東京の観測値から逆算すると、7×10の15乗~16乗ベクレル。0が16個もつく大きな数なのでテラという単位を使います。1テラは10の12乗すなわち1兆という大きさです。すると7千~7万テラベクレル。桁だけに注目してください。数千~数万テラベクレルという放射能量です。最大の茨城からでは数万~数十万テラベクレル、最小の神奈川からでも数百~数千テラベクレルということになります。あまりにも大きな数字なので、別の期間でも計算してみました。降下物の少なかった4月2日~5日でも、数百~数千テラベクレルになりました。すべてテラベクレルのオーダーだということです。
 この結果が何を示すかといえば、福島原発事故はおそらく「レベル7」だということです。事故以来福島原発から放出された放射能量はおそらく数万テラベクレルを超えていると考えられます。これは、原発事故の国際評価尺度:レベル7=「放射性物質の重大な外部放出(ヨウ素131等価で数万テラベクレル相当の放射性物質の外部放出)」に相当します。あのチェルノブイリ原発事故と同じです。政府はいまだにレベル5としていますが、フランス原子力安全局はレベル6、様々な研究機関がレベル7の可能性もあると言っています。

 まったくの素人の強引な単純計算です。なにか大きな間違いがあったら教えてください。すでにこれだけ広範囲に放射能がばら撒かれ、今も海や大気に漏れ続けています。なんとかこれ以上の放出を止めなければなりません。
資料データ
http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/EER/eer17.pdf
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/03/28/1303977_20_21.pdf
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/03/28/1303977_21_22.pdf
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/03/23/1303977_22_23.pdf